<小言航兵衛>

日本にも自爆テロ

 

 中東地域で盛んに自爆テロが起こっている。かと思ったら、それが日本にも飛び火した。野中広務である。

 まともな選挙では勝てないと思ったのか、小泉を脅しにかかって、みずから爆弾を抱いて小泉に跳びかかるというのだ。一国の首相に対する脅しだから、まさに中東のテロと変わりはない。テロ(terror)の原義は恐怖である。そのテロを怖がって、小泉がひっこむとでも思ったのだろうか。

 野中の今度の脅迫もしくは恫喝のやり方は、日頃当人が口にするような民主主義もへったくれもない。いよいよ本性をあらわしたかと思うばかりである。

 その本性とは何か。テロ――すなわち「恐怖政治」である。官房長官の当時は鈴木宗男を使い、権力の限りを尽くして、敵とみなした相手は徹底的に攻撃した。勲一等旭日大綬章を受けたときの祝賀パーティでは、500人のマスコミ関係者が集まったが、出席しないとあとが怖いからであった。具体例はNHKの島会長を追い落としたことで、これでは野中に対する批判的な報道が出るはずがない。

 加藤紘一に対しては、とことん応援しながら、突然てのひらを返したように険悪な仲になり、党除名の脅しをかけた。小沢一郎ですら野中と5時間話し合ったあと、精神的苦痛と疲労困憊の余りヘドを吐き続けた。 

 一方、思想的には、自民党にいながら、土井たか子と同じで、村山富市と話が合う。左翼的反戦思想の持ち主で、対中国弱腰外交、北朝鮮融和政策を推し進めてきた。中国要人の顔色をうかがいながら、イラク戦争ではイージス艦派遣に反対し続けた。

 北朝鮮に関しては拉致家族と会おうとせず、拉致よりも、まず北朝鮮の餓死の問題から解決すべきだとして50万トンの米を送り、朝鮮銀行には1.4兆円の国費を投入した。これまで9回も訪朝しながら拉致には言及せず、ひたすら金正日に臣下の礼をとるばかりである。

 訪中については数知れない。江沢民と誼(よしみ)を通じ、相当な顔になっている。しかしアメリカには行ったことがなく、自民党の実力者を自認しながら、アメリカの政治家には誰も知人がいないというのだから、ちょっと信じがたい。

 これらのことは『自民党橋本派の大罪』(屋山太郎著、扶桑社、2003年8月30日刊)に詳しい。

 野中広務の昨日の記者会見は、日本国家へのテロを構えて自爆するということであった。これまで恐怖政治をやってきた張本人が、最後に自爆テロをやろうというのだから、もはや万策尽きたのであろう。どうぞ勝手に死んで貰いましょう。

(小言航兵衛、2003.9.10)

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