<小言航兵衛>

長岡の女よ、さようなら

 

 田中真紀子が国会議員を辞めた。『「田中真紀子」研究』(立花隆著、文芸春秋、2002年8月10日刊)が出たばかりで、親父さんが「田中角栄研究」で倒れたように、父娘そろって立花にしてやられたのかと思う。

 それにしても秘書給与の渡し方がこれほど問題になるのは何故か。議員としては自分で秘書を雇ったからには、自分で給与の額を決め、自分で渡したくなるのは当然であろう。しかるに自分で渡すだけの金がない。自分の金を渡すのは惜しい。

 というので自分で自分に都合の良い法律をつくり、国から出して貰うことにした。そうすると国が金額を決め、国が渡すことになる。議員としては30万円の給与でいいと思っているところへ、国は70万円くれるという。しかも議員の手を患わすことなく直接秘書に手渡すという。あるいは秘書の銀行口座に直接振り込んでくる。

 これじゃあ自分の出る幕がないというので、いったん議員が取り上げ、もしくは議員の関係会社が取り上げて、改めて秘書に渡す。それが全く同じ金額ならよかったのかもしれぬが、金額を減らした。そのためピンハネじゃあないかということになった。

 同じようなことは、真紀子や辻本ばかりでなく、多数の議員がやっているらしい。無論ここまで問題になったからには今日現在みんな慌ててやめただろうが、昨日まではやっていたはずである。

 あれは法律上の建前だから、貰ってしまえばこっちのもの。あとは議員の裁量で分ければいいと思っていたし、そうやっていたにちがいない。ところが、その建前がいつの間にか本音に変わってしまった。建前通りにやらぬと、罪に問われるというのである。

 要するに自らの金を惜しんで、詰まらぬ罪人つくりの法律をつくったからこういうことになったのである。法律をつくったのは自分たち国会議員だから、いわばお手盛りの法律で、公設秘書とか第一、第二秘書とか、何でもいいから名目をつけて国の金を引き出そうと企んだ。そのたくらみの結果、自分でつくった法律に自分が縛られることになったのである。

 この際、議員秘書に関する法律は早く捨て去って、秘書の給与などは議員が好きなように決められるようにすべきである。国の金で肩代わりしてもらおうなどというさもしい根性では国会議員になる資格がない。昔の「井戸塀代議士」の精神を思い起こす必要がある。

 真紀子辞職の理由は、議員立法ができなくなったためだそうである。こんなのに法律をつくって貰ったのでは、またどんなお手盛り法ができるか分かったもんじゃない。辞めて貰ってよかったというべきだろう。

 その代わり、次の選挙には亭主や子どもを出すという話もあるが、もう勘弁してくれと言いたい。長岡市民もまさかそんな投票をするとは思えぬが、心して行動されるよう願っておく。

 長岡の女(ひと)よ、さようなら。

(小言航兵衛、2002.8.10)

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