お厄人のだぶだぶ機密費

 

 

 

 わが日本国はすっかり政治屋とお厄人に占領されてしまった。KSD疑惑といい、機密費問題といい、国民から巻き上げた税金を好きなように使って、出鱈目ばかりやっている。

 フィリピンの大統領が酒とトバクのやりたい放題と乱脈政治の結果、国民の怒りのデモで追放されたのを見て、「あの人のやり方はワイロばかりで、東南アジア的だったから」と評した学者がいたが、今や東南アジアの方がよほど健全に見える。同じ主張をするにしても、日本人は知事や市長が演説をしている前で酒を飲んでわめくぐらいが関の山になってしまった。政治が悪いから成人も悪くなるという意見が多かったが、私に言わせれば政治も成人もどちらも最悪の事態である。

 KSD疑惑で大臣を辞めた額蛾某は「これ以上、内閣と国会にご迷惑をかけたくないから」と弁解した。この男の関心は所属政党と国会運営であって、国民へ謝罪する気持ちなどないのである。そんな男に「いずれ捲土重来、総理をめざして頑張ってもらいたい」などという地元民がいたが、これもKSDの余録にあずかっていたのでなければ、わめきながら紙鉄砲を鳴らした成人と同じ行儀の悪さで、こういう連中がちやほやするから政治屋もますます堕落する。

 

 機密費なるものを考えても、官邸と外務省で合わせて71億円というのは余りに大きな金額ではないか。他人に知られちゃまずいことを、71億円分もやっているのか。そのこと自体が不思議だし、よほどしっかりした説明をして貰わぬと納得できない。

 もっとも、よく聞いて見ると首相の外国出張費も機密費だという。極秘のうちに北朝鮮にでも潜りこんで敵の様子を探って来たというのならともかく、アフリカやスイスに出かけたときは、同じ政府専用機に報道陣ものせていくくらいだから、機密でも何でもありゃあしない。そんなときのホテル代などは、堂々と領収書を貰ってくればいいはずで、どうして機密費にする必要があるのだろうか。

 誰かが「だって、ホテルの部屋でポルノ映画を見たりすると、領収書を貰えばばれてしまう」と嗤っていたが、真面目な話、一応は全ての費用について証憑類を取っておき、帰国したあとで官房副長官あたりが官邸でも外務省でも複数のスタッフと確認し合いながら、最後にどうしても外部に知られたくないものを機密費で落とせばいいのである。宿泊費や電話代などは先ず領収書で証明すべきであろう。

 そのようにすれば、不明朗な機密費の金額も少なくてすむし、自分も後ろめたい思いをしなくてすむ。ひいては不正な使途もなくなるであろう。昔の大使がテレビに出てきて「機密費は足りないくらいだ」と言っていたが、それならなぜ馬を飼ったりマンションを買ったりできるのか。だぶだぶに余っているからこそ、そういう莫迦なことがやれたのであろう。

 あるいは、外務省内の厄人同士の飲み食いに使っていたという疑惑もあるが、官官接待が禁じられたあとの抜け道がこんなところにあったとは気づかなかった。

 血圧が上がるのでここらでやめておくが、私の友人が、機密費で買った馬はアケミなんとかという名前ではなく「タックスホース」にすべきだったと言ったのは可笑しかった。

(小言航兵衛、2001.1.28)

 


(日本国、上昇せよ)

 

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