<小言航兵衛>

日本国の耐震構造

 

 耐震設計の強度計算偽造事件がだんだん大ごとになってきた。最初は何のことか分からなかったが、最近になってこれは業界あげての大がかりな詐欺犯罪であることがはっきりしてきた。しかし政府や自治体もからむせいか、関係者の誰も警察に追われたり逮捕されたりせず、テレビの前で悠々と解説し、国会で演説するなど、とても悪事をはたらいたようには見えない。

 しかし、そんなことでいいのか。早く犯人を逮捕するなり、財産を差し押さえるなりしないと、証拠は隠滅され、資産は隠匿されてしまって、被害者の救済はますますむずかしくなる。土曜、日曜は警察も休みなのかどうか知らぬが、こんなにのんびりしていていいはずはなかろう。

 国会も慣れぬ事情聴取などは警察にまかせるべきだと思うが、どうしても自分でやりたいのならば、日を置かず時間を限らず、国民の納得がゆくまで連日連夜つづけるべきであろう。次の聴取まで日を置いて、しかも参考人などというウソでもハッタリでも怒鳴り声でも言いたい放題の聴聞では却って犯人に都合がよく、時間的な余裕を与える分だけ逮捕をむずかしくするのではないか。

 それよりも、先ずは被害者救済を考えるべきだ。犯人らを一網打尽に逮捕して、会社の全財産を確保するのは当然のことだが、自治体が被害者に劣弱マンションからの退去勧告を出したように、犯人たちにも同じ勧告を出して、自宅から退去させてはどうか。そのうえで被害者がその家に住まい、犯人らは自分たちのつくった「豪華マンション」で暮らせばいいだろう。

 テレビの中で誰かが、強度不足の建築はレストランが毒入りの食事を出すようなものと語っていたが、まさにその通りだ。われわれが外で食事をするとき、その中に毒薬やばい菌が入っているなどとは夢にも思わない。しかし、建築業界のコックたちはレシピを誤魔化して毒入りの食事をつくっていたわけで、これは人死にが出るのを承知の上の殺人罪である。

 こうした事態が起こる根本原因は、社会一般の倫理観の欠如――などと大げさな言葉を使わなくとも、良心の問題にほかならない。検査を強化すべきだとか、検査の権限を民間に渡したのが失敗のもと、もう一度国へ取り戻すべきだという元官僚もいるが、そんなことで直るわけがない。根本は直接の仕事に当たる個々人の良心もしくは心根の所在である。

 戦後60年、われわれ日本人は倫理、道徳を忘れて生きてきた。というよりも、道義意識を奪い去られ、公徳心を忘れさせられるような教育を受けてきた。その結果が今日のような恐ろしい事態を招いたのである。

「国民が誠実、正直、清廉、正義の美徳を尊び、実行しなければ、そのような国家は生存する価値を失う」とは『自助論(セルフヘルプ)』(サミュエル・スマイルズ著、中村正直訳「西国立志編」)の言葉である。これは『教育を救う保守の哲学――教育思想(イデオロギー)の禍毒から日本を守れ』(中川八洋・渡部昇一、徳間書店、2003年3月31日刊)が引用しているものだが、強度計算の詐欺犯たちはマンションを倒壊させるばかりでなく、国家をも滅亡させようとしているのだ。

 では、このような国家転覆のための教育思想を実行に移してきた元凶は誰なのか。この本は次のような人びとをあげている。

福田康夫――自国民8,500万人を殺害した「殺人鬼」中共の「倫理・道徳を捨てろ」という反道徳的な内政干渉に屈して、靖国神社の代わりに無宗教の追悼施設づくりに動いている。父親の福田赳夫も「人命は地球よりも重い」として、獄中のテロリスト6名を釈放し、600万ドルを犯人に手渡し、無法国家の基礎をつくった。親子2代とも甚だしい「敗戦病」に冒されている。

我妻栄・中川善之助・川島武宣――前の2人は主犯、後の1人は従犯として敗戦直後、GHQの権威をちらつかせながら、家族のない共産社会をめざして民法を改悪し、日本に「崩壊寸前の家族」を実現させた。特に我妻は家族解体を強行しようとして、逆にGHQからとめられたほどである。この学者たちは、共産主義者と同様、「家」の存在が個人の権利や自由を奪うと考える。しかし本当はまったく逆で、凧糸の切れた凧はしばらくは自由に空を舞うけれども、結局は墜落して壊れてしまう。家族こそは個人の権利と自由の発展のための基盤だったはずだが、今の日本人は糸の切れた凧になってしまった。

ルソー――窃盗と詐欺の常習犯だった少年時代、レイプをしようとして警察に逮捕され、悪事を働いても捕まらない社会、すなわち法律のない社会と、そこに住む「自然人」を理想として『人間不平等起源論』や『エミール』を書き、親子切断、家族解体を扇動した。実は重度の精神分裂症で、野良犬の交尾が男女関係の理想だとする「交尾のススメ」は嘔吐を催すほどのもの。まともな人なら平静に読めるものではない。このようなレイプや事実婚(同棲)は違法だとするのが正しい文明社会であって、事実婚が理想というのは野蛮人か無法者の発想である。

レーニン――ロシア革命のあと、法律によって家族制度を廃止した。その結果、ソ連では少年によるレイプと窃盗略奪が増加、もてる男による手あたり次第の妊娠、堕胎の増加、出生率の低下が起こった。これを見て、さすがのスターリンも、この法律を廃止した。

福島瑞穂――「結婚させない、産ませない」運動の旗手として『産まない選択――子どもを持たない楽しさ』、『非婚のすすめ』、『核家族から単家族へ』などの悪書を書いてプロパガンダを推進。『結婚と家族』(岩波新書)では、ソ連で「一時的であれ、事実婚主義がはっきり採用されていたとはすばらしい」と、スターリンですらとんでもないと評したレーニンの家族制度廃止法を賛美しているのは、精神状態を疑うしかない。こんな女を党主に選ぶ政党も正気の沙汰とは思えない。

法務省民事局――共産主義官僚の巣窟として「エンゼル・プラン」を作成、夫婦別姓の家族解体運動を進めている。

朝日新聞――「スウェーデンのフリーセックスに追いつけ・追い抜け」の執拗な大キャンペーンによって、発情するままに性交させるという、児童・生徒の人格を野良犬なみに動物化し、禁欲を悪とするカルト宗教の布教に尽力している。

母子衛生研究会――厚生労働省の下部団体として2002年春、全国の中学生にセックス奨励の冊子「思春期のためのラブ&ボディBOOK」を27万部も配った。これを読んだ子どもたちは、たちまちセックス・アニマルと化して勤勉や節約の徳性を失い、日本の生産力まで壊滅させるであろう。それにしても、この冊子の表題の品のなさ。

神奈川県相模原市――上の冊子と同じ内容の「性教育の手引き」を小学校に配布した。そこに書かれているのは、セックスは人間の触れ合いの一つに過ぎないとか、快楽の一つとか、おぞましいセックス・アニマル化を扇動し、子供をつくるな、家族をつくるなという洗脳である。このような教育を受けた子どもたちは、援助交際と呼ぶ売春を異常とも悲惨とも思わず、淫乱で色情狂の非行少年、非行少女のまま大人になり、人格の荒廃はもとより、社会全体の荒廃をも招くことになろう。

ジェンダーフリー論者――子どもたちから男らしさ、女らしさを抹殺して、男でもなければ女でもない人格喪失者をつくり出そうとしている。その狙いは両性具有のカタツムリで、現に千葉市の男女共同参画課は1999年、パンフレットにカタツムリの絵を描き、「人間の理想」と書いた。これで理想に達した人間は塩をふるだけでカタツムリかナメクジのように溶け、社会は腐るように崩壊してゆく。それがウーマンリブに始まり、フェミニズムを経てジェンダーフリーへと毒性を強めてきた女権カルト狂団の狙いである。

土井たか子――「護憲運動」に名を借りて、社会主義イデオロギーとしての倫理・道徳の破壊を推進してきた。1997年には、拉致問題は「北朝鮮に食糧支援をさせないことを狙い」とするでっち上げ事件だというキャンペーンを社会党あげて推進した。北朝鮮は、この「人道援助」によって100万トン以上の米を受け取り、戦争遂行能力を維持し強化できたわけで、それを推進し協力した政治家は土井たか子のほか、村山富市、田辺誠、金丸信、野中広務、河野洋平、加藤紘一、福島瑞穂、辻本清美、三木睦子らである。

 以上を要するに、(1)敗戦直後の民法改悪、(2)社会主義思想の大宣伝、(3)道徳破壊の狂人を偉大な思想家として小学校から大学まで徹底的に教え込んだこと、の3つの原因により、この60年の間に日本からは道徳の理論が一掃され、個々人の良心が失われてしまった。

 したがって、スマイルズの「自助論」が云うような誠実、正直、清廉、正義の美徳など、あろうはずもない。

 そんな気骨のない人間が鉄筋のない建物をつくるのは当然のこと。外観だけのマンションと金権だけの国家と、どちらが早く崩れ落ちるか。すっかり毒のまわった日本社会にあって、今われわれは東アジアの反日枢軸国を初めとする世界中から、好奇と軽蔑の目をもって見られている。

(小言航兵衛、2005.12.4)

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