<小言航兵衛>
ワールドカップとNHK 日本は何故ワ−ルドカップに敗退したか。もちろん弱いからだと思っていたら、そうではなくて昼間の酷暑の中でやらされたからだと新聞が書いている。それならば相手も同じではないかと思うが、1次リーグ3試合のうち2試合まで午後3時からというのは、参加32チームのうち日本を含む3チームしかなかった。そのいずれのチームも熱射病にやられたか脱水症状に襲われたか、早々に敗退したらしい。
新聞によれば、最初の2試合を酷暑の中でへとへとになるまで戦って、最後に強豪ブラジルとやったのでは勝てる筈がないという立派な理屈である。では何故そんな時間に試合をしたのか。日本との時差を考えて、日本人が応援しやすい時間に合わせるためだったという。
というのは、すなわちテレビの放送時間帯である。諸悪の根元はテレビにあるという結論に達して航兵衛も納得した。
新聞によればNHKは放送のために、恐ろしく高い権利金をサッカー連盟に払ったらしい。そのため連盟の方も、テレビの視聴率が高くなる時間に放送できるよう、日本の試合時間をわざわざ変更したのだそうである。まことにご親切なことといいたいが、実は金がものを言ったということであろう。NHKも高い権利金を払って、大騒ぎをしながら日本の負けを導いたことになる。
そもそもNHKが何の必要あって、高い金を払いながらサッカーの試合を放送するのか。何年か前のオリンピックでも、NHKの払った放送権料が無闇に高いというので世界中から非難されたことがある。
よほど金が余っているに違いない。金の使い道に困って、毎晩アメリカくんだりまで出かけていってメジャーリーグの野球中継をやってくれる。余計なことである。アメリカ大陸を西から東へ、往ったり来たり走り回って実況中継をする。あれだって放送権料は決して安くないだろう。そればかりか、中継のための職員の出張旅費や機材の運搬費など莫大な経費がかかっているに違いない。
それをハイビジョンやBS放送でやって見せる。あるときは2つのチャンネルが同時に同じ中継をする。NHKはよほど金銭感覚のない、経済観念のない連中が経営しているにちがいない。株式会社ならば、たちまち株主総会で叱られるところだろう。これでは、いくら聴取料を集めても足りないし、払う方も払いたくなくなる。
野球やサッカーの中継は民間放送にまかせるべきである。そのうえでNHKは社会的、経済的、政治的にもっと重要な問題につっこむべきだ。それらの重要事項を放り出して、運動中継と娯楽番組ばかり放送していては、国民の関心も無意識のうちにそちらの方へ引きづられ、世の中は天下泰平、何の不安もない極楽のような気分に浮かれることになってしまう。つまり全国民がバカになってしまうわけで、それが証拠に劇場政治に人気が高まるというのは、衆愚政治にほかならない。
郵政民営化を強引に押し通した小泉首相さえ、NHKの民営化を持ち出さなかったのは、政治家とNHKとの間に利害の一致点があったからで、衆愚政治の手段としてテレビ放送ほど有効なものはないからである。
ついでに言うならば、「ゆとり教育」などというのも、あれは国民を愚民化するためであることに、われわれは気づかねばならない。文部官僚たちは、国民の教育水準を上げるのではなく、愚民をつくることに熱心なのである。
NHKが毎晩ロクでもない放送をしているのは、ゆとり教育と相まって国民を愚民にして、重要問題や深刻な危機から目をそらすための目くらましにほかならない。国民が目くらましの煙に巻かれている間に、政治家や官僚や、彼らに取りついた寄生虫のような連中が税金や年金を取りくずして懐を肥やしつづけているのが実態なのだ。
時々そういう問題が明るみに出るけれども、発覚したときはあとの祭りで、なかなか取り戻すことができない。テレビの前では頭を下げるけれども、陰に回れば赤い舌を出してほくそ笑んでいるのだろう。
NHKは何のために聴取料を取るのか。まさかアメリカの野球を放送したり韓国のドラマを放送するためではあるまい。そうならばAHKとかKHKと改称すべきである。あるいは野球やドラマの放送をすれば、聴取料を納める人が増えるとでも思っているのだろうか。
それならそれで民間放送と同様に独立して、視聴率と広告料で稼ぐことを考えるべきだ。今の資本主義の日本で社会主義のような国営放送は、そもそも要らないのである。
最近はさらに北朝鮮のような独裁的社会主義に取りつかれたか、聴取料を納めない人には罰金を科すると言いだした。バカも休み休み言ってもらいたいが、本当にそうなれば、これはもう税金である。それならば聴取料などと称して別建てにしなくとも、初めから税金を投じて国営放送にすればいい。
しかるに今やっていることは、無理に聴取料を取り立てて、苦労して集めた金を湯水のように芸人や運動中継に使い、挙句はそのためにサッカーの敗因をつくったなどといわれる結果になってしまった。
NHKには、どうやら金とチャンネル数が余り過ぎているのだ。あり余る金とチャンネルを、どう使っていいのか分からないのが今の経営陣である。
以下、そうした愚かな経営陣に代わって、NHKの建て直し案を提示しておこう。
- 野球やサッカーやオリンピックの中継を禁止し、チャンネル数を減らすべきである。これら2点の施策によって経費も職員数も減らすことができる。したがって今のままでも財務内容は改善される。
- プロデューサーかディレクターか知らぬが、職員の金銭的な不祥事が頻発するのは、組織が肥大化しすぎたためである。大きくなり過ぎて隣は何をする人か、互いに関心もなくなったせいである。職員数を減らし組織を単純化して、均整の取れた健康的な組織にすべきである。
- ついでに視聴者に密着などという番組編成方針の下に、見も知らぬ芸人がやってきて、行き当たりばったりで他人の家に入り込み、愚にもつかぬ思いつきをしゃべりながら飲んだり食ったりするような、礼儀知らずの番組も禁止すべきである。あれは日本人の礼節を踏みにじる番組で、シナ人と朝鮮人を喜ばすだけにすぎない。
- さらに最近頻発する幼児殺しや親殺しを、あんなに詳しく報道する必要はない。あれで真似をする連中が増え、殺人が増えるのもNHKのせいではないかと航兵衛はにらんでいる。殺人事件は警察にまかせて、NHKは無視するか軽く伝えるようにすべきである。逆に官僚や政治家の経済的、政治的犯罪については遠慮せずに、もっと詳しく突っ込むべきである。
- 資本主義の日本で、しかもこれだけテレビが普及した日本で、今後なお聴取料を取り立てるのはもはや無理である。テレビ台数が少なかった昔は、聴取料を払うだけでステータスを示すようなものだったが、もはや時代が変わったことを知らなければならない。わが家にしてもテレビが置いてないのは風呂場と便所くらいだが、最近は風呂に入りながら見られるテレビまで売り出されている。したがってNHKが、どうしても聴取料が欲しいならば、有料スクランブル放送へ移行すべきである。
- NHKは今の国営か民営かどっちつかずのヌエのような体制を脱して、早急に民間企業として再出発すべきである。そうすればサッカーでも野球でも好きなだけ権利金を払い、好きなだけ放送すればよい。好きな人は喜んでスクランブル料金、すなわち聴取料を払ってくれるだろう。
- そして、そのうえで経済合理性に立脚した経営をするならば、サッカーの負けた責任を負わされることもなくなるにちがいない。
高額の放送権料をふんだくって、笑いが止まらぬサッカー連盟。
われわれは、こんなことのために高い聴取料を払っているわけではない。(小言航兵衛、2006.6.26)
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