<小言航兵衛>

猛毒を撒きちらす中国

 中国の毒入りギョーザ事件は、てっきり日本だけが騒いでいるのかと思いこんでいた。日本人は脆弱で神経質という中国の宣伝文句に惑わされたのである。ところが『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(宮崎正弘、徳間書店、2007年9月30日)を読むと、中国製の毒入り食品はかねてから世界中の問題になっていて、「メイド・イン・チャイナ」の商標は「毒入り」を示す危険信号と書いてある。

 発端は昨年4月、ペットフード用のインチキ蛋白質が広く中国で生産されていると報じた『ニューヨーク・タイムズ』。7月になると『ニューズウィーク』や『ビジネスウィーク』といった雑誌も、ペットフード、練り歯磨き、咳止め、毛髪製醤油、玩具、花火など、危険な中国製品について詳しく報じている。

 世界中の消費者から「中国は世界を毒殺するつもりか」という怒りと恐怖の声があがったのもその頃のことで、当時のパナマでは中国製の有毒原料を含む咳止め薬によって360人以上が死亡、アメリカでは毒入りペットフードのために4,000匹の犬猫が死んだ。最近の報道でも中国原産の血液抗凝固薬ヘパリン・バクスターのために、アメリカで1月以降死者21人、副作用400人以上が出ている。

 子供の玩具からも大量の鉛が検出され、全米で回収騒ぎが起こった。考えてみると、航兵衛の孫も1歳前後の頃は何でもかんでも口に入れた。小さなピンでもスリッパでも飛行機でも手あたりしだいに舐めたりかじったりするので、危なくて目が放せない。航空ショーで貰ってきた柔らかいスポンジ製のボーイング747も機首先端をかじり取ってしまい、今では飛行機が大口をあけて笑っているように見える。その玩具に猛毒が含まれていたかどうか。いたとすれば、恐ろしい病気にかかったかもしれない。

 子供だけではない。北京駐在の韓国大使は昨年夏、町で買ったサンドイッチが原因で腹痛を生じ、入院先の病院で毒入り輸液を注入されて呼吸障害のまま死亡した。つまり中国の毒に二重にあたったわけである。

 こうした中国発の不祥事を多くの日本人が知らなかったのは、日本のマスコミが報道しなかったからで、中国に対する要らざる配慮か遠慮でもあったのか。そうではなくて、問題に気がつかなかったとすれば、中国特派員と担当デスクはよほどのマヌケだったに相違ない。


毒入り食品

 だが、中国には商業道徳もなければ、製品を改良したり事態を改善しようという意欲も見られない。問題が起こっても他者への責任転嫁を考えるばかりであることは、先日の毒入りギョーザの毒が中国内で入った証拠は見つからなかったなどと、調査の途中で堂々と発表した一件でも明らかであろう。前日まで中国側と調査の進め方などを協議してきた日本の警察も、さすがに唖然としてあいた口がふさがらなかったらしい。

 泥棒は逃げるときには泥棒を追っかけるふりをする。食品の毒を調査するふりをして、もっともらしい実験をしたと言い、毒がギョーザの包装を透過して、中に入ったというのだ。「ウソも100回言えば真実になる」とはヒットラーの言だが、中国は3回でよいという。日本の警察も、このようなデタラメと虚偽と詭弁と不誠実な開き直りに負けてはならない。唖然とするだけでなく、直ちに反論すべきであった。

 こうした問題の根源は「ニセモノ文化である」と本書はいう。中国産アンコウと称して内実はフグの肉だったために、シカゴの住人2人がテトロドキシンに当たって中毒を起こした例もある。

 ニセモノといえば、食品もさることながら、骨董品やブランド品から偽ディズニーランド、偽DVD,偽ウィンドウズOSなど枚挙に暇がない。その根本は「人心の荒廃だ」というのが本書の説くところである。

 その結果、鉄筋の代わりにペットボトルが見つかり、6,000ヵ所の橋が構造上の強度があやしいとされ、2,000ヵ所のダムがすでに崩壊したらしい。かの三峡ダムですら2年前から2メートル前後の亀裂が見つかっている。こうした手抜き工事が蔓延している中で北京のオリンピック施設は大丈夫かという疑問も指摘されるようになった。

 ところが日本では、早くも毒入りギョーザ事件がうやむやのうちに忘れ去られようとしている。弱腰の日本政府としてはひたすら、忘れっぽい日本国民の性格がそのまま発揮されることを願っているのではないのか。結局は今まで何ら具体策を講じていないのだ。

 官房長官が遺憾の意を表明したり、警察が捜査をするだけでは毒はなくならない。日本人の食の安全を守るための具体策は、まだ全く実行されていない。スーパーなどに並んでいた中国産の食品が売れなくなったのも、国民個々人による自衛手段であって、政府は何にもしていない。

 いつぞやアメリカ産の牛肉について狂牛病が疑われたとき、日本政府の態度は強硬だった。牛ドン屋が閉店になろうとつぶれようと、何年にもわたって輸入禁止の措置をとり、全頭検査とか生後何ヵ月以内とかの条件をつけ、アメリカ大統領から日本の首相に圧力がかかっても、きっぱりとはねつけたものである。

 しかるに今回のていたらくは何たることか。アメリカにはあれだけ強いことを言いながら、相手が中国となると何がこわいのか。どこか及び腰のままで、いっこうに具体策が出てこない。アメリカの牛を排除したように、中国の野菜でも魚介類でも直ちに輸入禁止にすべきである。アメリカには全頭検査を要求しながら、中国からの輸入食料は日本側の検査官を増やしたりしている。中国の検査が信用ならぬからというのかもしれぬが、当面はやはり輸入禁止が最適、最短の措置である。これを急ぎ具体化して、日本国内の農業振興をはかるべきであろう。

 

 中国の猛毒は単にギョーザや食品を侵すだけではない。日本人の精神構造をも侵すことになる。すでに相当部分が侵されてしまって、だからろくな対策も取れないのだが、ここで的確な手を打たなければ、毒は致死量に至るであろう。中国の毒によって日本精神を死なしてはならない。

 日本の精神的な滅亡を望むのは、われわれを東夷(東方のムジナ)とみなす中国ばかりではない。アメリカも同様であることは先般、連邦議会下院が「従軍慰安婦謝罪決議」をしたことでも明らかだ。アメリカが日本を毒するはずがないなどと甘えていると、とんでもないことになる。

 ニクソン大統領と共に、中国との国交を回復した当時の国務長官ヘンリー・キッシンジャーは、本書によれば「過去30年にわたって中国ロビィストのトップ」であり、クリントン前大統領は「中国の代理人」だそうである。その点では女房のヒラリーだって、大統領になれば何をしでかすか分からない。ほかにも、アメリカ政界の多数の有力者たちが中国を背景に政治を動かしていることを忘れてはなるまい。

 そして日本にも親中派は多い。本書は河野洋平、平山郁夫、御手洗富士夫などの名前を挙げるが、彼らは内側から手引きして中国毒の蔓延をはかりつつある。このままでは、中国の猛毒に侵された日本は半身不随となって、アメリカの「チャイナ・ポイズン」にとどめを刺されることになるであろう。

(小言航兵衛、2008.3.14)

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