<小言航兵衛>

中国文明と民主党政治

 中国は、古代文明発祥の地のひとつとして、昔から政治や技術に関してもヨーロッパよりはるかに先進的な状態にあった。にもかかわらず、なぜ近代文明に遅れを取ったのか。

 この問題について、『銃・病原菌・鉄(上下巻)』(ジャレド・ダイアモンド、倉骨彰訳、草思社、2000年刊)は、面白い例を出して説く。大航海時代のコロンブスである。

 コロンブスはイタリア生まれでありながら、フランスやポルトガルなど3人の王侯に仕え、探検船団の派遣を願い出る。しかし、いずれも断られ、最後に4人目のスペイン国王に認められて、ようやく船出をすることができた。このとき、もしもヨーロッパ全土が、最初の3人の君主のうちの誰か1人によって統一支配されていたならば、ヨーロッパ人によるアメリカ大陸の「発見」や植民地化はなかったかもしれない。

 言い換えれば、コロンブスの成功は「ヨーロッパが政治的に統一されていなかったおかげである」

 いっぽう中国は秦の始皇帝の時代(紀元前250年頃)から統一国家を形成すると共に、鋳鉄、磁針、火薬、製紙、印刷などの技術を生み出し、造船や航海の技術にもすぐれていた。そしてコロンブスよりも早く、1405年から1433年にかけて、大型船でアフリカ大陸東海岸にまで達していた。

 それがヨーロッパやアメリカ大陸に行かなかったのは、宮廷内の権力闘争、もしくは政治的争いによって船団派遣を取りやめ、外洋航海を禁じ、造船所をつぶしてしまったからである。

 いま民主党の政治を見ていると、中国の挫折の後をそのまま辿っているかに見える。ひとりの独裁者を頭(かしら)に頂いて、形ばかりの宰相と大臣がいならび、鶴の一声によって政策が決まる――ならまだしも、その時どきの独裁者ひとりの思いつきによって国の制度が変転してゆく。

 すなわち米軍基地、郵政、高速道路料金など、机上の思いつきだけで、あたかも出来上がったかのような錯覚をして実行に移そうとし、相手の反論を受けるとたちまち後退し変更する。

 汚沢は顔をゆがめて醜い笑いを浮かべながら「国民の総意を丁寧に申し上げただけ」などというが、むろん国民の総意ではなくて選挙のための口実であることは見えすいている。さらに、丁寧にいえばそれでいいというものでもなかろう。

 丁寧といえば、首相のバカ丁寧な敬語も気持ちが悪い。汚沢に対して「申し上げる」などというが、どっちが偉いのか。党の幹事長は私的な立場であり、わが国の宰相は天皇から任命された公的な地位である。2人だけのときは、どんな敬語を使おうと知ったことではないが、テレビ・インタビューなどの公(おおやけ)の場で使うべき言葉ではあるまい。

 また「……の思いをやらせていただきます」などというが、女学生のように女々しく頼りない。これは「かくかくの考えです」とか「しかじかを実行します」と、きっぱり言い切るべきである。アメリカ人ならば「お前さん、タマはついてるのか」というであろう。

 現に、沖縄基地の移転問題に関するアメリカ政府の反応もそんなところで、先日の鳩山に対する大統領のあしらいにも見られる通りである。

 今の民主党は汚沢独裁体制を敷き、陳情の窓口を独裁者の一点に絞って、それが選挙の票に結びつくか否かで道路工事をやめたり復活したり、料金を下げたり上げたり、きわめて安易な判断もしくは思いつきで事業や制度を変えてゆく。これは、あたかも権力争いに明け暮れた中国の政治であり、争いの結果によって外洋航海や技術開発を禁じた中国のやり方である。

 中国は知らず、日本ならば真に国のため、国民のためになるような政治がおこなわれていれば、気持ちの悪い猫なで声を出さなくとも、有権者の支持は得られるはずである。

 民主党の幹部たちが今のような選挙目当ての言動をしている限り、却って彼らに投票するものは減るであろう。口先では国民のためとか国民の総意といいながら、真からそう思っていないことは、テレビに映った一瞬の表情からも分かる。

 どうぞ頼むから、国のため、国民のための政治をして貰いたい。そうではなくて選挙のため、わが党のため、労働組合のため、日教組のため、宗教団体のため、在日韓人のため、果てはわが身のための政治をしていては、民主党に対する日本国民の賛同者は誰もいなくなるであろう。


国会議員を半減し、法人税を引き下げると公約すれば、
有権者の支持率は再び上がるはず。

【関連頁】

   <小言航兵衛>乗っ取られる日本(2010.4.6)

(小言航兵衛、2010.4.26)

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