<燃料高騰>

苦難のエアライン業界(2)

 いわゆる「第3次石油危機」が猖獗を極め、物価がどんどん上がり始めた。その影響の甚大なること、車のガソリン代もさることながら、航空燃料などは最たるものであろう。

 ところが今朝の新聞には「航空運賃の値上げが続く」一方で、値引き合戦も出てきたという奇妙な現象が報じられた。というのは、旅客の方も先ゆき心配になるから、少しでも安い飛行便を利用するようになる。つまり格安エアラインの方へ向かうので、大手エアラインも安閑としてはいられない。そこで値引き競争が起こるというのである。つまり石油危機の影響が決して一方向に向かうのではなく、相互に矛盾するような混乱状態をもたらすというわけだ。

 このつらさに耐えかねて、多くのエアラインが規模を縮小し、合理化をはかりつつある。このことは先の本頁にも書いたばかりだが、最近ではユナイッテド航空がパイロット950人を近く解雇すると発表した。同社のパイロット総数の15%に当たる。ユナイテッドは先週も管理職1,400〜1,600人の解雇を発表したばかりである。運航機材も現在の460機を年内に360機まで減らす予定。こうした合理化対策が今の石油危機にどこまで耐えられるか。

 ユナイッテド航空の場合、今年第1四半期に5.4億ドルの赤字を出した。このときはまだ1バレル100ドルだったが、いまや130ドルで、赤字幅はいっそう増大すると見られる。

 米エアライン業界では今後、ますます多くのエアラインが倒産に追い込まれるだろうという予測も出ている。欧州も変わりはない。今週の英フライト・インターナショナル誌によれば、エールフランスとKLMのグループは、エアバスA320ファミリーやボーイング737の後継機について、早期開発を要望している。いずれも経済的な単通路型の旅客機だが、メーカー側はA320や737がよく売れているところから、今すぐ新しい機材の開発に踏み切る考えはない。

 しかし、エアラインの側からすれば、燃料高騰の折から、もっと経済的で、環境にも適した航空機が今すぐ必要という考え方になる。1バレル130ドルの石油価格に対応するには、燃料効率が20%ほど改善されなければならない。少なくとも15%の向上は必要で、そのくらいならば今の技術でも可能なはずと主張する。

 エールフランスは現在150機のA320ファミリーを運航しており、KLMは50機の737を持つ。これに代わるものとして120〜200席または150〜240席の旅客機が欲しいという要求。飛行性能などは特に高くする必要はないから、とにかくコストの安い機材が欲しい。

 それに対してボーイング社は、今の単通路機に代わる経済的な旅客機を開発するには、たとえばエンジン、材料、諸システム、空力特性などの新しい技術が必要で、その開発にはやはり時間がかかる。どうしても10年以上は先のことになるという。

 苦難のエアライン業界は混乱の渦の中から、如何にして浮かび上がってくるのか。

【関連頁】

   苦難のエアライン業界(2008.6.13)

(西川 渉、2008.6.26) 

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