<ロンドンHEMS>

2機目の導入を計画

 

 ロンドンのヘリコプター救急については、一と月ほど前の本頁に書いたところだが、最近新たな実績その他のニュースが伝えられたので、ここに記録しておきたい。

 それによると、2014年に救護した患者数は1,806人だったという。内訳は下表の通りだが、すべて外傷患者である。今まで気がつかなかったが、ロンドンHEMSの場合、外傷以外の急病はヘリコプターの対象外なのだろうか、よく分からない。

事故内容

構成比

備  考

交通事故

33%

――

転落事故

27%

――

傷害事故

24%

刃物、銃砲など

その他

16%

鉄道事故、溺水など

 さらに、1,806人の中には夜間の高速ドクターカーによる救急も含まれる。ロンドンHEMSは同じ医療スタッフによって、昼間はヘリコプター、夜間もしくは悪天候時には高速自動車による救急出動をする。けれども、公表される数字には両者の区別がないので、困ったことにヘリコプターだけの実績がよく分からない。

 アメリカのヘリコプター救急は夜間出動が3割程度なので、それから類推すると、ロンドンのヘリコプター出動は年間1,200件程度だろうか。


夜間と悪天候のときに出動する高速車

 ロンドンHEMSが最近、最も力を入れているのは2機目のヘリコプター導入計画である。もはや1機では対応できなくなってきたというのだ。今の機体は夜間になると郊外の飛行場に戻って格納庫に入り、整備点検を受ける。いわゆるプログレッシブ・メンテナンスをしているようだが、それでも昨年は整備のために飛べない日が55日となった。

 そこで機体を2機にすれば、整備空白がなくなるし、日の長い夏は遅くまで飛ぶことができる。たしかにロンドンは北緯51°半くらいの位置にあって、日本付近でいえば北海道のはるか北、サハリン(樺太)の北部に相当する緯度だから夏は9時頃まで明るい。日没まで飛べば活動時間はかなり増えて、救護できる患者も年間400人ほど増える見込みという。

 この2機目の機体価格と当面5年間の運航費は、600万ポンド(約10億円)という見積りになるらしい。目下そのための寄付金を募っていて、最近までに約400万ポンドの目途がついたという。そのうち200万ポンドはロンドン・フリーメイソンからの寄付らしい。残り200万ポンドを今年7月までに集め、夏の間に2号機の運航を開始したいというのがロンドンHEMSの希望である。

(西川 渉、2015.3.16)

 


ロイヤル・ロンドン・ホスピタル
上の写真には新旧2つの病院建物とそれぞれのヘリポートが見える
旧い建物を壊さぬうちは同時に2機のヘリコプターが待機できよう

   

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