<ロッキードF-35>

JSF無人化構想

 ロッキード・マーチン社はJSFジョイント・ストライク・ファイター戦闘攻撃機の無人化を進めようとしている。「最後の有人戦闘機」という言葉はこれまで何度も聞いたし、この垂直離着陸が可能でしかも超音速性能をもったF-35こそがそれかと思ったが、無人化へ向かってしまった。

 もっとも本来が有人機だから、有人と無人とを交互に使い分けるという構想で、ある任務は有人で飛び、別の任務は無人で飛ぶという。まさに有人機から無人機への橋わたしをする最後の有人戦闘機かもしれない。

 構想はロッキード社が2年前から暖めてきたものだが、これをそのまま米空軍に提案しているわけではない。当面は、可能性を実証するための自主開発として作業を進めるという。したがって空軍の方も、無人化案についてどう考えるか、意見は表明していない。

 しかしアメリカの軍用機に関する構想は将来に向かって、可能な限り無人化へ向うことはまちがいない。それに応じて、ノースロップ・グラマン社はグローバル・ホーク大型無人機を開発し、ボーイングも準備を進めている。

 ロッキード・マーチン社としては、これまでJSFをものにするのに忙しく、無人機までは手が回らなかった。しかし、そのF-35が軌道に乗ってきた今、改めて周囲を見回すと時代は無人機に向かいはじめていたのである。そこからJSFを無人化しようという発想が出てきたにちがいない。

 アメリカの無人機戦略は2001年、911同時多発テロによって触発され、急速に拡大してきた。2001年度予算で無人機の研究開発予算は3.6億ドルだったが、今年は20億ドルを超えた。その結果、小型の攻撃機があるかと思えば、プレデターやグローバル・ホークのようにボーイング737に相当するような大型無人機も生まれてきた。

 F-35無人機はそれらに対抗しようというものである。それが現実になれば、いずれ軍用機はすべて無人機になるかもしれない。というのも、2,000機の調達が予定されているF-35だが、コストが上がり過ぎて政府の手に負えなくなってきた。調達数が適当な機数になったところで、政府はこれをやめて無人機へ向かうかもしれない。そのとき、「いや、F-35だって無人機ですよ」と言えるようにしようというのが、ロッキード・マーチン社の魂胆ではないか――米ワシントン・ポスト紙の見方である。

【関連頁】

 米空軍JSFにライトニングUの愛称(2006.7.10)

(西川 渉、2006.8.18)

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