航空の現代 → 電脳篇 → ホームページ作法(98.6.7)

ホームページ作法

 

 本頁のようなホームページを開設しているものにとって、最大の気がかりは果たして人様に読んで貰っているのかどうかという問題である。せっかく苦心して作文と編集と画面制作と発信作業をしたのに、誰も読んでくれないのでは意味がないし、落胆の余り身投げでもしたくなる。 

 というのはいささか大袈裟かもしれぬが、そこをはっきりさせるのが「貴方は何番目の訪問者です」といったアクセス・カウンターであろう。ただし、本頁を開設した当時、サーバーのMESHNET(現BIGLOBE)はアクセス・カウンターをつけるサービスをしていなかった。事務局に問い合わせをしたところ、将来はやるつもりという回答だったから、今頃はできているかもしれない。けれども、本当にカウンターをつけた結果、いつまでも数字が増えなければ大変だと思うと、いまさらつけるのも恐ろしい。 

 そうした心の揺れを振り払って、いかにすれば沢山の人に読んで貰えるか。それを教えてくれるのが『アクセスを増やすホームページ革命術』(アクセス向上委員会・橋本大也著)という本である。この本を読んだのはもはや10か月ほど前のことだが、それより前、本頁を開設して間もなく、私はパソコン雑誌でアクセス向上委員会の紹介記事を読み、電子メールによるニュースレターを申しこんだ。 

 以来1年以上にわたって毎月1〜2回、同委員会から無料のレターが送りこまれてくるのである。その内容は単に読んでいるだけでも面白く、しかもホームページ作りの参考になるのだから、まことに有り難く、書いている人の天分には恐れ入るほかはない。ニュースレターの末尾には早稲田大学政治経済学部在籍とあったから、おそらく早稲田の学生さんなのだろうが、ひょっとして先生かなと思ったこともある。それほど老成した内容なのだが、先生が「在籍」と書くはずはない。数日前に受け取った5月29日付レターには「社会人2か月目に入りました」とあったので、やっぱり学生さんだったのだろう。

 

やってはいけない10の間違い

  ところで、この最新のレターに「誰にも紹介したくないサイト」として、アメリカのヤコブ・ニールセン博士のホームページから、次のような「やってはいけない10の間違い」が引用され、紹介されていた。

 1 フレームを使う
 2 新しいテクノロジーの濫用
 3 スクロールテキスト、マーキー、動きつづけるアニメーション
 4 ややこしいURL
 5 迷子のページ
 6 巻き物のような天地の長いページ
 7 ナビゲーションの欠如
 8 標準的ではないカラーのリンク
 9 期限切れの情報
 10 長すぎるダウンロード時間(博士は15秒をリミットに設定!)

 私はすぐさまニールセン博士のホームページに飛んだ。そして、まさしく橋本氏のいう通り、余り人には知って貰いたくないような素晴らしい論文が沢山掲載されているのを見つけてワクワクするような気分になったものである。

 

 

ニールセン博士の助言

 その高揚した気分の中で、アクセス向上委員会には叱られるかもしれぬが、もう少し詳しく、私の経験に照らしながらニールセン博士の助言を見てゆくことにしたい。

 

1.フレームの使用

 フレームを使うと、読者の画面が小間切れになるし、保存や印刷をしようとすると違う画面が出てきたりすると博士は言う。全くその通りで、小間切れの画面は小さいブラウン管の上ではますます見にくいし、プリントしようとすると表題だけが出てきて、本文が出なかったりする。

 私のよく訪ねるベル・ヘリコプター社のホームページも、昔はあっさりしたものだったが、途中からフレーム方式になり、すっかり見にくくなった。印刷しても社名が出るだけで本文がなく、あわててやり直しをしなければならない。その場合、まず目的のフレームをクリックしておいて、それからプリント操作に入らなければならないらしいが、そうした積もりでも違う画面が印刷されたりする。ややこしくて嫌だなと思っていたら、最近はベル社も考えたらしく、トップページに先ず大きな矢印をつけ「フレームあり」と「フレームなし」のどちらかを選択させるようになった。

 そこまでやってでも、ホームページのデザイナーというのは凝ったフレーム画面をつくりたがるものらしい。しかし正直にいって、ベル社の画面はボーイング社などにくらべると余りアカ抜けがせず、フレームがあろうとなかろうと、いずれにしても野暮ったい感じがするのは免れない。先日社長に逢ったとき、それを言うのを忘れていた。

 

2.先端技術の濫用

 ニールセン博士は「最新の技術を自慢げに使って、人を惹きつけようとするのはよくない。大多数の読者は役に立つ内容(コンテント)と旺盛なサービス精神に惹かれるものである」と書いている。「まだ試作段階の技術を使って、訪問してきた読者のシステムがクラッシュしたらどうなるか。大多数の人は二度と戻ってこないであろう」

  私も、人様のシステムまで壊したことはないはずだが、自分の機械が動かなくなって困ったことは何度か経験した。人のためはもとより、自分のためにも使用実績を重ねて、バグが出つくしたシステムだけを使うように心がけたいと思う。

 

3.スクロールテキスト、マーキー、動きつづけるアニメーション

 まず延々とスクロールをしなければならないような長文のテキストは良くないと博士はいう。私の頁には400字詰め原稿用紙で50枚を超えるような長文もいくつか含まれている。読者の方には申しわけないと思うが、元来が雑誌社から頼まれた長編記事で、それをそのまま掲載してあるのでお許しを願いたい。

  次にマーキーをやめなさいという。本頁ではトップページの冒頭にその仕掛けがある。これがインターネット・エクスプローラで見ている人には動いて見えるが、ネットスケープで見ている人には動かぬばかりか、黄色い文字がよく見えなかったりしているはずで、私もかねがねやめようかと思っていたところである。

 さらに、ニールセン博士は動くものがよほどお嫌いらしく、動きつづけるアニメーションもやめろとおっしゃる。「ひっきりなしに動くイメージは、人の周辺視界に負担をかける。何もニューヨークのタイムズスクェアと競り合うことはなかろう。読者も気持を平和で静かな状態に置き、貴方のテキストを読むことに集中させるべきだ」と。本頁でも、ところどころに動く仕掛けがしてある。面白いものだからついやりたくなるのだが、作文の方をじっくり読んで貰いたい頁からは取り除かねばなるまい。

 

4.ややこしいURL

 機械だけがわかっていればいいような記号を人間にもわからせようとしたり、それをアドレス欄に打ちこませるのは、確かに困ったことである。スペリングの間違いを生じるばかりではない。奇妙な記号が使われていて、キーボードのどこを叩けばそんな記号が出てくるのか分からないようなものがある。

 実は本頁のURL……/~aviationの「~」(上波)記号がそれで、友人の1人からは「何故あんな変な記号を使うのか」といって叱られた。けれどもあれは私が考えたのではなく、この BIGLOBE のサーバーを借りてホームページを開設する場合のきまりなのである。先ず上波記号をつけ、その後に自分の選んだ言葉をつけてトップページのURLにするようにというのだが、何故そんなややこしいことをするのか、それは知らない。

 その友人は、私のURLを教えてから実際につながるまで半年を要したほどだが、実はニールセン博士自身も「どうすれば ~ がタイプできるのか、ほとんどの人は知らない」と書いている。この人がどんなパソコンを使っているかは知らぬが、私のIBM機はキーボードの〜記号のあるキーを押しても何にも出てこない。シフト・キーを押しながら上の方の−キーを押すと何故か上波になるのである。それも私は何かの拍子に偶然見つけたのであった。

 BIGLOBEも、ホームページのURLルールについては、もう少し便利で合理的な方法を考えて貰いたい。

 なお、ここまでお読みいただいた方には無駄な話になるが、最近は各種の検索エンジンがますます良くなってきた。適当なエンジンに「航空の現代」というキーワードを入れて貰えば、それで大抵は本頁が見つかるはずである。もしくは「ヘリコプター」+「救急」といったキーワードの組み合わせでもいいかもしれない。この仕組みをもっと体系的なシステムに組み上げてゆけば、普通の言葉でURLができるのではないだろうか。

 

5.迷子の頁

  複雑な構造をもったホームページがある。階層が何段階も深くて、リンクがあちこちにつながっているため、クリックを続けて頁をたどってゆく間に迷子になってしまう。こういうのは特にアダルト頁に多くて、18歳よりも上か下かなどと訊かれてドキドキしながら突き進んで行き、どこでどう間違ったのか何の収穫も得られず、冷や汗をかきながら電話代と接続料金だけが無駄になったという経験も少なくない。

 橋本大也氏も『アクセスを増やすホームページ革命術』の中で、階層は3段階くらいまでが適当と書いておられる。本頁は、1か所だけ3段階の階層があるが、あとは全てトップページから直接飛んで行けるような2段階の構造になっている。その方が作るのも楽だからだが、最近は記事が増えて、トップページが長くなり過ぎた。アクセスした途端に何から何までぎっしりと目次が並んでいるのも、初めての読者にはうんざりであろう。全体の構造を3段階にして、トップページを短くしようかと考えているところである。

 

6.巻物のような長い頁

 第3項の禁則と重複するような気もするが、ニールセン博士は「画面が表示されたのち、それ以上にスクロールする人は10%しかいない。したがって重要事項とナビゲーション案内は真っ先に書くべきだ」としている。これが1996年5月の執筆だが、97年12月になって「最近の調査では、当初よりもスクロールする人が増えてきた。スクロールは少ない方が望ましいが、もはや絶対的禁則ではない」とつけ加えている。

  (というわけで本文も長々と書いていると顰蹙(ひんしゅく)を買う恐れがある。ここで10項目のうち2つを飛ばすことにする)

 

9.期限切れの情報

 たとえば2年前の学会の案内などがそのまま残っているのは、宴会のあとの座敷が翌朝になっても片づけてないような感じで何となくうら寂しい。早く片づけて、その学会で発表された論文などを掲載すべきではないだろうか。

 

10.長すぎるダウンロード時間

 画面表示に時間がかかるのは、とりわけ私のように家庭の電話回線を使ってインターネットに接続しているものには経済的負担が増える。トップページの目次がイメージになっていて、これがなかなか出てこないときは、次の頁へ飛ぶこともできず、いつまでも待っていなければならない。つくる方は「どうだ、綺麗だろ」と言いたいのだろうが、読者には費用と時間の無駄が生じる。目次としてのリンクはテキストでやって貰いたい。

 画像の表示も、挿し絵ならば実害はないように見えるが、印刷しようとすると全てがそろうまで待たなければならない。ただし最近、私は画像が出ないうちでも、ブラウザーの「停止」または「中止」ボタンを押せば、印刷可能になることを発見して、内心得意になっているところである。

 以上のような理論に照らして、私の本頁には無論さまざまな課題が残っているが、ヤコブ・ニールセン博士のウェブサイトは余計な画像がなく、トップページの簡潔な文章は、ほとんど全ての単語が背後の頁にリンクしていて目次を兼ねた案内になっている。各頁の1行目には階層構造におけるその頁の位置が明示されているし、画面表示は瞬時に行われ、理論通りの出来具合になっている。 

 この頁も実は博士の頁に習ってつくったものである。やや余分な画像を入れたが、画面表示は迅速だったであろうか。 

 なお博士のウェブサイトにはまことに面白いホームページ文章論も展開されているが、ここでは長くなり過ぎる。長い文章は良くないというのがその文章論の趣旨だが、それはまた別のところで見てゆきたい。

 (西川渉、98.6.7)

 目次へ戻る) (表紙へ戻る