<リージョナルジェット>

三つ巴の開発計画

 経済産業省が要求していた来年度予算のうち、「環境適応型高性能小型航空機」の研究開発費91億円が20日の財務省案で認められたそうである。なんだかゴツゴツした名前の舌を噛みそうな航空機で、もっとスマートな言葉は考えられないのかと思うが、役人連中にはそんなしゃれっ気はないのだろう。これでは本当に空を飛ぶのかどうか、それさえ怪しくなってくる。

 いずれにせよ政府が多額の予算を配分したのだから、三菱の重役陣が如何に尻込みしようとも、後には引けなくなった。来年3月には形だけの「ゴー」の結論を出すのであろう。あとは税金が無駄にならぬよう願うばかりである。

 折から翌21日、中国では競争相手のリージョナルジェットARJ21が上海でロールアウトした。90人乗りの同機は「翔鳳」(Flying Phoenix)と名づけられたとか。翔も鳳も月並みの感は免れないが、日本の言い方ほどひどくはない。余談ながら、中国の新語で負けたと思ったのは、コンピューターの「電脳」と有人宇宙船の「神舟」である。

 翔鳳の方は、2008年3月に初飛行、09年に型式証明を取得して、同年秋から実用化の予定という。すでに171機の注文を受けているが、国内需要はおよそ900機を見こむ。加えて世界市場での販売にも力を入れるとしている。


「翔鳳」の披露式典

 中国の計画に先だって、ロシアでも今年9月26日、アムール川に近いコムソモルスクでスホーイ・スーパージェット100がロールアウトした。6年半前にスホーイ、イリューシン、ボーイングの3社が共同で「ロシア・リージョナルジェット」の研究調査を始めてから、初めて姿を見せたそうである。

 この Sukhoi Superjet 100 という呼称も、英語や日本語では平凡のように思えるが、ロシア語では「スホーイ・スーピェルジェット・ストー」という発音で、ちゃんと頭韻がそろえてある。

 スーパージェット100は98人乗りで、ロールアウトの時点では10月にも初飛行すると伝えられたが、最近12月に訂正された。もっとも、まだ飛んだというニュースは聞いていない。来年11月にはアエロフロートの定期路線に就航するともいうが、果たしてどうだろうか。量産計画は2008年に9機、2009年に30機、2010年に60機、2011年に70機とも発表していたが。

 この開発と生産には西側メーカーも10社ほど協力しており、エンジンはフランスのSNECMAとロシアの共同開発になるSaM146を搭載する。またイタリア・アレニアもスホーイとの間でヴェニスに合弁会社を設立、西側諸国への販売と部品補給を担当する。その結果、6月のパリ航空ショーではイタリアのイタリ航空から10機の注文を受けた。

 ロシア国内でもアエロフロートからの30機を初め、総計60機以上の注文が出ている。

 なお将来に向かっては、標準型98席の胴体を短縮して75席とする案や、引き延ばして115〜120席とする考えも出ている。


スーパージェット100

 いうまでもなく、ロシアや中国の前に、現在カナダやブラジルのリージョナルジェットが世界市場を抑えており、日本もぐずぐずしてはいられない。

【関連頁】

   三度び三菱リージョナルジェット(2007.12.12)

(西川 渉、2007.12.23)

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