先のヘリエキスポ2000でシコルスキー社が発表したところによると、フィンランドのコプターライン社が近くS-76によるヘリコプター定期便の運航をはじめるという。コプターライン社は2機のS-76C+を発注、今年夏からヘルシンキ〜ターリン(エストニア)間の定期路線に投入する予定。
北欧ではかねてからスウェーデンのヘリコプター・サービス社が3機のS-76C+でバルティック海を越え、マルモとヘルシンボルグからコペンハーゲンとの間を結んで1日82便の運航をしている。昨年の旅客輸送実績は85,000人であった。
この両社が飛ぶ地域は下図の赤い円で囲んだところである。
同じようにS-76を使って定期便を運航しているのがカナダのヘリジェット・エアウェイ。バンクーバー〜ビクトリア間で、99年は10万人以上の旅客を輸送した。計器飛行をしているので、天候が悪くても就航率は99%。そのため利用者の信頼が篤く、常に満員の状態でもっと大型機の導入が必要ということになり、このほどS-92の発注に踏み切った。
香港〜マカオ間を飛んでいる亜東航空(東アジア航空)も現有3機のS-76C+だけでは旅客の需要に追いつけず、S-92の発注をを検討中という。1999年10月の乗客数は1か月間で8,000人であった。通常は毎朝9時から夜10時半まで1日26便を運航して、月間飛行時間は1機平均140時間に達する。
イタリアのアリデュアニア航空はフォッジャからトレミチ諸島への路線にS-76を飛ばしている。運航範囲は下図の通りである。
以上のようなS-76ヘリコプター路線を整理すると次表の通り、世界の5か所でおこなわれていることになる。このうちイタリアを除く4か所が国際線である。
会社名(国籍) 運航区間 S-76機数 コプターライン(フィンランド)
ヘルシンキ〜ターリン(エストニア)
S-76C+×2機
ヘリコプター・サービス(スェーデン)
マルモおよびヘルシンボルグ〜コペンハーゲン
S-76C+×3機
アルデュアニア(イタリア)
フォッジア〜トレミチ諸島
S-76×1機
東アジア航空(マカオ)
マカオ〜香港
S-76C+×3機
ヘリジェット・エアウェイズ(カナダ)
バンクーバー〜ビクトリア〜シアトル
S-76×5機
シコルスキー社は21世紀に向かってS-76の新しい洗練計画を検討しているらしい。主ローター・ブレードにS-92の開発から得られた新しい技術を採り入れ、尾部ローターの騒音を引き下げる。また防氷装置を取りつけ、コクピットにはビジネス・ジェット級の最新の電子機器を装備する。にもかかわらず直接運航費はS-76C+よりも安くなるはずで、これをS-76Dと呼ぶ人もいる。S-76は1979年の引渡し開始以来20年間に511機が製造された。
(ヘリエキスポ2000の会場に展示されたS-76)一方、S-92ヘリバス(19席)は1998年12月23日に初飛行し、原型5機で開発試験が進んでいる。2001年中に型式証明を取る予定。
(S-92の模型――残念ながら実機は展示されなかった)
(西川渉、2000.2.2)
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