<小言航兵衛>
日本の選挙 ![]()
英「エコノミスト」誌が日本の選挙について書いている。といっても、内容は殆どシズカ・カメイとタカフミ・ホリエのことばかりである。
その記事によると、68歳のミスターカメイは頑固な保守的人物で、ジュンイチロー・コイズミを嫌う余り、郵政民営化に反対投票をした。その結果、日本国を支配している自民党(LDP)から蹴り出されてしまった(has been kicked out)。やむを得ず、反対派だけの小さなグループをつくり、「国民新党」(People's New Party)と名づけた。コイズミの仕掛けた解散選挙に出るためである。
これとは逆に、32歳のミスターホリエは、現状打破のために立ち上がったインターネット・ビジネスマンである。
この2人は服装からして対照的である。ミスターカメイはだらっとした上着を着て、いつも不機嫌で陰鬱でむっつりした表情を大きな眼鏡で隠している。一方、硬くてそそり立ったような髪をしたミスターホリエはTシャツを好み、インターネットも可能なケータイ電話をアクセサリーとしている。
2人は政策も異なる。ミスターカメイは元LDBの政策委員長であり、派閥の長であり、総裁選でも2度コイズミに挑戦して敗れ、首相の「構造改革」に繰り返し反対してきた。その主張は、公共工事のカットと市場競争の促進は日本の伝統的な枠組みを破壊し、弱肉強食にしてしまう恐れがあるというもの。
それゆえミスターカメイは郵政民営化に強烈に反対してきた。日本の25,000ヵ所の郵便局は貯蓄銀行や生命保険会社としての二重、三重の役割を持ち、資産は330兆円に上る。これが民営化によってなくなるのは、これまで自分が自由に使ってきた資金源がなくなることになる。それが、真の反対理由ではないのか。
ミスターホリエが官営郵政に反対するのは当然で、彼の事業ライブドアは郵便局ののろまな蝸牛郵便(snail mail)に対して、電子郵便(e-mail)が売り物だからである。郵政事業は、過去営々として日本列島の隅々にまでレンガとモルタルづくりの郵便局をつくってきたが、ライブドアはそんな面倒なことはしない。どこでも簡単に利用できるインターネットさえあればよしとする事業を進めているのだ。
そのライブドアの若きボスが広島地区でミスターカメイに対抗しようというのだから、ミスターコイズミが、表向きの形式は自民党でなくとも、公認候補でなくとも、ミスターホリエの挑戦を歓迎するのは当然であろう。
こうして、LDPと連立相手のニューコーメイトーは、郵政民営化を支持する299人を小選挙区の公認候補として立てる予定である。300の選挙区に対して1人足りないのは、無所属候補ミスターホリエのためであることはいうまでもない。
女の泥試合「今まで政治には関心なかったんだがね」以上が英「エコノミスト」誌の「日本の選挙」に関するさわりの部分である。
それにしてもミスターカメイは長年にわたって立法府の中心にあり、枢要の地位を占めていたはず。それがキックアウトされた途端に政党から立候補するのでなければ、選挙放送はできないの、ポスターは決まったところにしか貼れないの、選挙郵便は出せないのと愚痴ばかりこぼしていたが、いったい誰がそんなルールをつくったのか。
国会議員の既得権を守り、政党外からの立候補を締め出すために、自分たちがつくったのではないのか。自分らの都合に合わせた選挙法をつくっておいて、今になってぐずぐず言っても、それは自業自得というもの。今さら何を言うか。文句を言いたいのは国民の方である。
もうひとつ、選挙運動にインターネットを使ってはならないというルールも、コンピューターに弱い古手議員の身分を保証し、既得権を守るものである。彼らは、ミスターホリエの登場した今、このルールの存在に内心胸をなでおろしているに違いない。
今や、連中は「国民」のため、「日本」のためなどと唱えて、新党の名前にもしているようだが、選挙法の奇妙なルールを見るだけでも分かるとおり、実は自分のために国政をあやつってきたのである。
(小言航兵衛、2005.8.28)
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