<野次馬之介>

透明キャビン

 

 欧州エアバス社が2050年、すなわち40年ほど先の旅客機について、夢を語っている。

 最大の理想はCO2の排出量が少なく、速度の速い旅客機。また離陸のために必要なパワーは並大抵のものではないから、ものすごい騒音と有害な排気ガスをまき散らす。それでも長い滑走路が必要で、それだけ広い土地を確保しなければならない。にもかかわらず、膨大なエネルギーは離陸のときに一時的に必要とするだけで、あとの飛行には無用の長物でしかない。とすれば、離陸のためのエネルギーは航空機の側にそなえるのではなく、地上の施設にそなえるべきではないか。

 というので、先に本頁でご紹介した「カタパルト離陸」のアイディアが生まれた。大型旅客機をリニアモーターを使ったカタパルトで発進させるもので、これならば航空機に搭載するエンジン出力が小さくてすみ、騒音が軽減され、滑走路は3分の1の長さですむ。とすれば、空港自体が小さくなるから、都市の近くにつくることも可能となる。

 もうひとつ、未来の旅客機は乗客にとって快適で楽しいものでなければならない。機体の前方キャビンの壁を透明にしたらどうだろうか。そうすれば乗客は成層圏を飛行中の素晴らしい景観を十二分に楽しむことができる。

 逆に、余りにあけっぴろげで怖いという人は、後方の昔ながらのキャビンにすわるか、両眼にアイマスクでもかけて外を見ないようにすればいいであろう。

 また、この透明なキャビンから広大無辺の星空を眺めながら、カクテルを飲み、人と語り合うのもよい。おそらくは自分でも驚くような雄大な構想が飛びだしてくるにちがいない。

(野次馬之介、2012.11.17)

 

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