<シコルスキー>

X2高速試作機が初飛行

 

 シコルスキー社が開発中のX2ヘリコプターが8月27日、初飛行した。同機は同軸反転式の二重ローターと推進用プロペラをもち、通常のヘリコプターをはるかにしのぐ高速性を発揮するのが特徴。おそらく250ノットくらいの速度が可能で、現用ヘリコプターより100ノットほど速い。

 この日の初飛行は30分にわたっておこなわれ、ホバリング、ホバリング旋回、前進飛行が試みられた。

 X2試作機はT800ターボシャフト・エンジン(1,452 shp)1基を装備する単発機。このエンジンは、かつて計画中止となったコマンチ原型機に装着されていたもので、2つのギアボックスを介してローターとプロペラの両方を駆動する。操縦系統はフライ・バイ・ワイヤ。

 X2は速度が増すとローターの回転速度を落として、ブレードの先端が音速に近づくのを防ぐ。同時にピッチ角を調節して揚力最大、抗力最小の状態をつくり出す。また2つのローターが反転しているので、機体の左右両側の揚力が同じになり、姿勢の傾きを心配する必要がない。

 ブレードはリジッド式で固定されているため、上下ローターの間隔を60センチまで狭くすることができる。この間隔が小さいほど抗力が少なくなり、将来はさらに縮める予定。

 こうしてX2は最大速度260ノットをめざすという。今のヘリコプターの速度記録はウェストランド・リンクスの216.45ノットが最高記録である。

 ヘリコプターは、これまで高速飛行をめざしてティルトローターなどの技術を開発してきた。目下開発中のベル・アグスタBA609ティルトローター機に対して、X2はほとんど同じ高速性能をもつと同時に、構造的にはきわめて簡潔で、もちろんホバリングもオートローテイションもできる。

 シコルスキー社では将来、このX2の原理を使ってS-76(12席)やS-92(19席)と同じ大きさの機体を開発し、石油開発支援などの用途を考えている。さらに、もっと先には20〜40トンの貨物を搭載しながら、250ノットの高速飛行が可能な輸送機。また武装攻撃機もあり得るが、シコルスキー社は10〜12年を目処(めど)に実用化したいという。

【関連頁】

 X2高速機の試作へ(2005.6.9) 

(西川 渉、2008.9.4) 

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