NHKは郵政省が怖い

 

 

 個人情報保護法案について、新聞やテレビは「メディア規制」という言葉を使って反対論を繰り広げている。各テレビ局の人気キャスターが集まってデモンストレーションをして見せたり、さまざまなケースを想定して、この場合はこうなる、あの場合はああなる、その場合はそうなると学者や作家や評論家を総動員して、この法律が如何に危険なものであるかを強調する。内部告発も違反となり、取材はできなくなり、巨悪は安眠できるようになると解説する。

 しかし何故か、小泉首相の提案する郵便事業への民間参入または民営化については、ほとんど触れようとしない。この法案が成立すると何故いけないのか、なぜ国民の不利益になるのか、なぜ郵便制度が崩れ去るのか。あるいは逆に、民間企業が参入するには全国10万か所にポストを設置せよといった無理難題が盛りこまれているようだが、そのわけも分からない。

 第一いまの郵便配達はだらけているから、東京23区内でも郵便物の到着には2〜3日かかるし、高層ビルの中ではこちらから取りに行かねば配達もしてくれないとは、先日の本頁に書いたばかりである。郵便法案反対の本音は、郵政官僚の権益と特定郵便局長の世襲制度と自民党の票田を守らんがためではないのか。

 

 利用者の立場からすれば、今の宅配便をみるだけでも、民営化をすることが便利かつ安くなることは自明である。ヤマト運輸の小倉昌男元会長は、かつて「年賀状をわが社でやらせてもらえるなら、1枚20円で配達してみせる」と語ったことがあるが、宅急便の現状からみても実現可能であろう。

 その集配も、わざわざポストをつくらなくとも、コンビニやスーパーでできるだろうし、100枚以上まとめて出す場合は、お宅まで取りに行きますといったことも可能かもしれない。次の正月には是非とも実現して貰いたいと思う。そうなれば代議士諸君の通信費だって、秘書の給与をかすめ取らずとも、半分以下になるであろう。まさか諸君は、あれだけ郵便制度に荷担するんだから、宅配便を使っているんじゃあるまいね。


(「どのテレビ局もおんなじだね」)

 テレビや新聞が何故こうした話題を取り上げないのか。よく考えてみると、テレビの放送免許は郵政省の管轄であった。NHKは郵政省の出先か宣伝機関みたいなもので、国民から高い聴取料を取ったあげく、莫大な放送権料と高い費用をかけてアメリカの野球や欧州のサッカーを生放送している。これで国民大衆の関心を肝心なことからそらし、その隙に政治家と官僚がやりたい放題をやる。その出先プロパガンダとしての特殊法人NHKが郵政民営化など取り上げるはずがない。この偽メディアは郵便制度と同様、すぐに民営化すべきである。

 民間放送も同様で、三流芸人たちのおふざけ番組ばかり垂れ流して、大衆の頭を痴呆化する方へ引っ張って行く。郵政省における民間放送の役割は、国民の白痴化であることは言をまたない。これらのテレビ局はそれぞれ新聞社の子会社または関連会社だから、新聞社も郵政省には頭が上がらない。

 つまり今のマスコミはそろって郵政省に楯つくことができず、その意向にさからおうものなら、どんな報復を受けるかも知れない。ひょっとして放送免許の取消しといった事態にまで進む恐れもある。それが怖くて、郵便事業の民営化についてはだんまりを決め込んでいるのであろう。

 彼らは情報保護法についてはメディア規制だとか、国民の知る権利が脅かされるとか、民主主義を損なうものと騒ぎ立てる。それならば郵便事業についても、同じように世論調査をやるとか、参入希望者の意見を聴くとか、学者や有識者による分析と論評を試みるとか、国民の知る権利を満たしてもらいたい。

 民主主義を損なうのは、自己規制をする弱腰メディアそのものである。

(幽青症、2002.4.27)


(熊だって取材する)

 

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