<ボーイング>

いよいよ多忙

 

 ボーイング社は787旅客機の2番目のストレッチ型を具体化するもよう。787-10と呼ぶ3種類目の787で、2016年を目標にに引渡しを開始するという。同機に対するエアラインからの要望が強いためらしい。

 787-10について、ボーイング社はかねてから研究を進めてきた。大きさは777ファミリーの最も小さいクラスと同程度で、一方では777自体の主翼を改良して性能を強化する構想もあり、787-10がまっすぐ実現に向かうかどうかは分からない。

 787ファミリーは今年末頃から引渡しに入る予定の787-8が標準230席、それをやや引きのばした787-9が270席で2013年に就航する。それをさらに延ばすのが787-10で、胴体をさらに引き延ばして約300席とし、貨物搭載量も増える。そのた分だけ燃料搭載量が減って航続距離が短くなり、12,700kmとなる。これは、2013年に登場すると見られる新しいエアバスA350-900よりも2,250kmほど短い。その代わり、運航費はA350よりも12%ほど安い。すなわち航続性能を犠牲にして、経済性を高めるというのがボーイング社の主張である。

 だが、果たして本当にそうなるかどうか、現実には不確定な要素も多い。たとえば、そんなに燃料効率が良くて出力の大きい理想的なエンジンが実現できるのか。また787の今のギクシャクした外注生産システムが果たして円滑に機能し、計画通りに量産してゆけるのかといった課題である。


787ファミリー・プラン

 ボーイング社によれば、787-10は777-200ERと同じ大きさだが、航続距離が長く、15,000kmを飛ぶ。一方、もっと大きな777-300ER(365席)は最もよく売れている大型機で、確固たる地歩を占めており、2015年までは不動の地位にある。そして2015年、A350が就航するようになっても、777の方は主翼を改良して対抗する。さらに、それを補ってボーイング陣を強化するのが787-10というのだ。しかも787-10の方が787-9よりも先の開発になるかもしれない。

 かくてボーイング社の今後の開発順序は、まず787-10、次いで737/757の後継機、それから777新主翼機ということになるらしい。そして、これら全機は2020年までに全機完成するというのである。

 だが、こうした大きな計画を、わずかな間に進行し完成させることができるのか、それに要する莫大な資金はどこから調達するのか。ボーイングの計画に疑問をもつむきも少なくない。

 その前に、ボーイング社は今年中に787と747-8を完成させ、型式証明を取らなくてはならない。 その747-8は3月13日までの2日間で、飛行確認試験を終了した。これは実際の飛行状態を再現して、装備システムのすべてについて作動確認をするもので、初飛行のための最終的なテストとなる。これにより、原型1号機は3月中に初飛行する見こみ。

 なお、747-8インターコンチネンタルは標準座席数が467席で、747-400よりも50席ほど多い。


初飛行を前にして最終確認に臨む747-8


747-8のコクピットにテスト・パイロットとFAA検査官が乗りこんで、
地上での最終的な確認試験。

【関連頁】

    ボーイング747の進化(2011.2.28/加筆2011.3.3)
    旅客機3題――ボーイング対エアバス(2011.2.23)

(西川 渉、2011.3.15)

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