<ボーイング>

787の初飛行は来春か

 

 ボーイング787の初飛行については、ニューヨーク・タイムズも来年3月になるだろうと伝えている。また、この遅延によってボーイング社の株価は2.7%ほど下がった。しかし、エアバスA380の引渡し開始の遅れによる影響ほど大きくはないともいう。

 今回の問題の原因は、機体の大半を外部で製造していることにある。下請けメーカーの中には、製品の品質が満足すべき水準に達していなかったところがあり、そのためエバレット工場で受け取ったのち改めて手直しをしなければならなかった。これに手間ひまがかったとボーイング社は説明する。

 もうひとつ、胴体や翼を接合する金属ファスナーが世界中で不足しているという問題。そうした問題をかかえながら、ロールアウトの儀式だけは、表面をとりつくろいつつ賑やかに挙行した。そのため逆に、後になってから仮留め部分を外したり、脚を取り外すなど、組立て作業のやり直しが必要になり、却って手順が複雑になってしまった。いっそ1号機はこのまま廃棄処分にして、先ずは2号機を組み上げた方がスッキリと早く仕上がるのではないかという意見すら出るほどである。それやこれやで、作業はどんどん遅れてゆく。

 量産段階になると、機体各部を広く世界中に分散して製造しているため、今後は膨大な数の下請けメーカーから各製品がタイミングよくシアトルの工場に集まってこなければならない。遅すぎるのは勿論、早すぎてもいけないのだが、その複雑長大な供給ラインがうまく動いてゆくのか。決して容易ではないというのが大方の見方である。

 にもかかわらずボーイングは、2009年末には半年の遅れを取り戻して当初の計画にほぼ追いつくとしている。果たしてそんなにうまくゆくのかどうか、疑問は決してないわけではない。もとより新しい航空機の開発には、さまざまな問題が出るであろう。エアバスとボーイングと、ライバル・メーカーの両方で同じような問題が起ったことからしても、航空機の複雑微妙な開発作業にあたっては、こうした問題は避けられないのかもしれない。

 ボーイング社は787の試験飛行開始から9ヵ月で型式証明を取ることにしている。これは従来最も早かった777よりも2ヵ月短いが、それでも全日空への初号機は引渡しが2008年11〜12月になる予定という。

【関連頁】

 787の引渡し日程遅れる(2007.9.13)

 迷走するボーイング787(2007.9.8)

 苦闘するボーイング787(2007.8.31)

(西川 渉、2007.10.15)

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