新ロータークラフト

 

 1月下旬のHAI「ヘリエキスポ2000」での見聞にもとづいて、これから登場する新しいロータークラフトを整理すると次表のようになる。

 この表で、最初の3機種は昨年型式証明を取得したもの、次の8機種が試験飛行中のもの、最後の4機種は計画または構想段階にある。

メーカー(国)

機 種

初飛行

型式証明

座席数

エンジン出力(shp)

ベル(米)

427

1997.12.11

1999.11.11

1+7

710×2

三菱重工

MH2000

1994.9

1999.9

2+6〜12

876×2

アグスタ(伊)

A119コアラ

1995.2

1999.12.30

1+7

1,002

ユーロコプター(独)

EC145

1999.6.12

2001

2+8〜13

738×2

ヒンダスタン(インド)

ALH

1992.8.30

不詳

2+12

1,300×2

カモフ(露)

Ka-226

1999年秋

2000年末

2+6

420×2

カモフ(露)

Ka-60/62

1999.3

不詳

2+16

1,282×2

カザン(露)

アンサット

1999.8.17

2001

2+8

640×2

PZL(ポーランド)

SW-4

1996.10.29

不詳

1+4

450

シコルスキー(米)

S-92

1998.12.23

2001年半ば

2+19〜22

2,430×2

シュワイザー(米)

333

不詳(現用330の出力向上型)

ベル/アグスタ(米・伊)

BA609

2000年末

2002年秋

2+9

1,940×2

ベル/アグスタ(米・伊)

AB139

2000年末

2002

2+15

1,679×2

カモフ(露)

Kaー115

不詳

2000年末(?)

1+5

640×1または2

シコルスキー(米)

S-76D(?)

 

不詳(現用S-76C+の洗練型)

 こうしてみると、ロシア勢もさまざまな計画を進めていることが分かる。しかし経済的混乱と資金不足のせいか、最終的な完成時期が何となく曖昧である。インドのALHもドイツからの技術支援を断ったあとは何をしているのか、開発着手から10年も経過してなおものにならない。ヘリコプターの開発はやさしいようでいて、やはり一筋縄ではいかないのである。

 この表の中の欧米主要メーカーの機種については、本頁「速報ヘリエキスポ2000」でご報告した。ロシア機については、以下のような現状が報じられている。

 まずKa-115は、ロシア版のAS350というところ。ただしローター系統はカモフお得意の同軸反転式で、したがって尾部ローターがない。エンジンはロシアのクリモフがライセンス生産するP&Wカナダ社のPK206D――本来のPW206をロシア製燃料の特性に合わせて改修したものである。

 総重量は、基本形となる単発機が1,860kgだが、これを双発にすると300kg増の2,160kgになる。もっとも、まだモックアップしか公開されてなく、数年前の計画発表から今日まで実物を見たのはモスクワ市長だけという話もある。

 Ka-226は10年前の1990年、ダラスでのヘリエキスポで発表されたプロジェクトだが、これまた仲なか完成しない。ピストン・エンジンのKa-26を基本としてタービン機に再設計したもの。ピストン機は日本にも2〜3機輸入されたから、ご存知の方も多いだろう。前方には2席の小さな与圧コクピットがあるのみ。後方わく組だけの空間部分には農薬散布用の薬剤タンクやキャビンを取りつけるようになっていた。コクピットが軽く与圧されていたのは、農薬の侵入を防ぐためである。

 新しいKa-226は、ひとつがピストン機と同様に後方があいているものと、キャビン部分を初めから取りつけたものの2種類がある。人が乗るキャビンが着脱できるのは、私も何度か乗ったことがあるが、飛行中に外れやしないかと思うとやはり不安で、ちゃんとした胴体になっていれば安心であろう。初飛行は昨年秋で、現在2機が試験飛行中とか。今年末には量産に入るというが本当だろうか。

 Ka-60/-62はカモフ伝統の同軸反転式ローターを初めて取りやめ、ユーロコプター・ドーファンに似せた双発機だが、乗客16人乗りとやや大きく、尾部にはフェネストロンがつく。1999年3月からホバリングを開始した。Ka-60はロシア陸軍向け、Ka-62は民間向け。胴体の6割は複合材でできているらしい。けれども、いつ実用になるのかはっきりしない。

 カザン・アンサットはPK206エンジン2基を装備、ロシア機には珍しいスキッド式の降着装置を持つ。外観はなかなかスマートで、機内は乗客8人乗り。主ローターはヒンジレス。操縦系統はフライ・バイ・ワイヤになっている。にもかかわらず価格は170万ドルと、西側同級機の3分の1程度。昨年夏に初飛行し、3機で試験飛行をしたのち、2001年中に型式証明を取る予定。

 SW-4はポーランド機である。ベル407に匹敵する大きさで、1996年に初飛行した。今頃は型式証明を取っていてもいいはずだが、長い沈黙が続いていて詳細は分からない。

 そしてインドのALHも、名前は「発達型軽ヘリコプター」と立派だが、10年近くかかって未完成のまま。1992年夏の初飛行以来原型3機が飛んでおり、最近は3車輪の民間型も飛んだという。そしてインド陸・海軍は100機以上の調達計画を変更していないともいうが、今後の日程は不明である。

(西川渉、2000.2.6)

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