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1999年も残すところ１週間。矢のように過ぎ去った１年間を振り返って、ロータークラフトの世界で何があったか。新機種の初飛行や型式証明の取得、量産機の引渡し開始などヘリコプターの開発と製造に関する出来事を整理しておきたい。 |
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２月19日：ＭＤヘリコプター発足
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２月19日：ＭＤヘリコプター発足 ボーイング社とオランダＲＤＭホールディング社との間で調印されたＭＤ500、ＭＤ600Ｎ、ＭＤエクスプロラーの製造ラインを売り渡す契約が米連邦通商委員会の承認を受けた。
これによりＲＭＤホールディング社はＭＤヘリコプターを発足させ、アリゾナ州メサの旧ボーイング工場で引き続き、ＭＤヘリコプターの生産に当たることになった。この中には、尾部ローターのあるＭＤ500ＥやＭＤ530Ｆも含まれる。またボーイング社は今後もノーター技術の権利を保有しつつ、ＭＤヘリコプター社に特許権の使用を認めるという契約。
この譲渡の翌日、ＭＤヘリコプター社は早くもベルギー陸軍から２機のＭＤエクスプロラーを受注したと発表した。その後も同社は積極的な販売活動を展開、各機の値下げを発表すると共に、99年中に50機、来年は７５機、2001年は100機という販売目標を掲げていた。99年の目標が達成できたかどうか、発表はまだない。
なおＭＤエクスプロラーは、朝日航洋がこの秋から救急専用機を導入したが、救急機としては世界５か国で17機が使われている。17機の飛行時間は11月１日現在、総計18,000時間に達する。最も飛行時間の多い機体はネバダ州リノで飛んでいる救急機で、1995年以来3,200時間になった。
５月14日：Ｖ-22引渡し開始 ５月14日、ベル社とボーイング社が共同開発をしてきたティルトローター機、MＶ-22Aオスプレイの量産１号機が米海兵隊に引渡された。史上初の実用ティルトローター機の誕生である。
Ｖ-22の初飛行は10年前の1989年３月19日だったが、その後の開発の詳細については本頁「ティルトローター新時代」をご参照いただきたい。
なお、そこにも書いたが、米側のティルトローターに刺激されたか、欧州でも少しずつティルトローター開発の動きが出てきた。ユーロコプター、ＣＡＳＡ、フィアットなど欧州９か国33社から成るグループが新しい欧州製ティルトローター「ユーロティルト」（19席）を研究することになり、欧州委員会に航空技術研究費を申請している。同機はかつてのユーロファー構想の延長線上にあり、先ずは実物大の地上試験機をつくる予定。その制作と試験のために8,150万ドル（約9,000億円）ほどかかるが、半分は民間企業の方で負担し、残りを欧州委員会から出して貰いたいとしている。
５月31日：ＮＨ90原型４号機が初飛行 欧州の次期輸送用ヘリコプターをめざすＮＨ90は、ユーロコプター、アグスタ、フォッカーの各社が共同開発中。４号機はドイツのユーロコプター社が製作、初飛行させたもの。
次期戦術輸送機としてグラス・コクピット、フライ・バイ・ワイヤ、自動操縦装置など最新の装備を持つ。エンジンはチュルボメカＲＴＭ322-01/9が２基だが、将来は代替エンジンとしてＧＥアルファロメオＴ700/Ｔ６Ｅも考えている。総重量10,000ｋｇ。最大190ｋｔの速度性能を持つ。
なお原型１号機は1996年12月18日、２号機は97年３月19日、３号機は98年11月27日に初飛行し、４号機の初飛行時点までに１〜３号機で420時間以上の試験飛行をしてきた。
量産機の引渡しは2003年からはじまる定。仏、独、伊、蘭の４か国だけで642機の調達が計画されている。
６月12日：ＢＫ117Ｃ２（ＥＣ145）が初飛行 本来は現用ＢＫ117Ｃ１のストレッチ型として開発され、現用機がコクピットの２席を含めて総数11席だったのに対し、新しいＢＫ117Ｃ２は13席になる。これが来る１月24日の「ヘリエキスポ2000」でＥＣ145として公表されるもよう。しかし機体の外観は高度の機密保持の下にあって、まだ１枚の写真もないために不明である。
このときまでに、初飛行から半年で型式証明を取り、完成機として公開したいというのがユーロコプター社の計画。ユーロコプターと川崎重工の共同開発で、ユーロコプターはローター系統とダイナミック系統を製造、川崎は胴体を組み立てる。このうちローター系統、ダイナミック系統、エンジンはＢＫ117Ｃ１と同じで、アリエル１Ｅ２ターボシャフト（738shp）が２基。
大きな違いは２点で、ひとつはキャビン容積が大きくなったこと、もう一つはコクピットに新世代のアビオニクスが装備されたこと。最大離陸重量は3,500ｋｇで、ＢＫ117Ｃ１の150ｋｇ増。胴体が長くなって、乗客２人の追加搭乗が可能。また航続距離はＢＫ117の500ｋｍが700ｋｍに延びる。
すでにフランス政府からシビル・ガード向けに32機の注文を受けており、現用アルーエト�靴紡紊錣辰董∩楮�救難や輸送に当たる。価格は490万ドル。なおＢＫ117は、これまでに450機以上が売れているが、今後はＥＣ145として2005年まで生産が続く予定。
６月13日：ＡＢ139の計画詳細を公表 アグスタ社はパリ航空ショーの初日、新しく開発中のＡＢ139のモックアップを公開すると共に、計画の詳細を発表した。総重量6,000ｋｇの中型双発タービン・ヘリコプターで、詳細については本頁「巴里サロンの話題」をご参照いただきたい。写真も「ヘリテック９９を見る」にのせてある。
なおＡＢ139の開発にはベル社が４割の資金を出して協力している。同機の重量や搭載量は同じベル社のモデル412をやや大きくした程度で、両機の競合関係が問題ではないかと思われる。しかも412は2000年から改良型412プラスの開発に着手する予定だから、ますます接近するはずだが、ベル社では412プラスは現在の412運航会社の買い替え需要が販売目標、ＡＢ139は新しい顧客が狙いと説明している。
なおアグスタ社はＡＢ139の販売見通しについて、向こう20年間に900機と踏んでいる。うち55％は軍用または政府機関、45％は民間企業という市場目標。
初飛行は2000年末、型式証明は2002年末までに取る予定。
６月18日：タイガー攻撃機の調達契約調印 仏独共同でユーロコプター社が開発してきたタイガー攻撃機について、ドイツとフランスの両国政府は６月18日、160機の調達契約に署名した。80機がドイツ、80機がフランス向けの機体である。引渡しは2002年にはじまる。
タイガー開発計画は今から10年前、1989年11月にはじまったもので、原型５機は2,000時間の試験飛行をしてきた。
最終的にはドイツ陸軍が212機、フランス陸軍が215機を調達する計画。
８月17日：カザン・アンサット初飛行 軽双発タービン機。ＢＫ117、ＭＤエクスプロラー、ベル427などに匹敵する。エンジンはＰ＆ＷＣのライセンス生産になるＰＫ206Ｃ（640shp）が２基。主ローターはヒンジレスで、複合材ブレードを備え、胴体にも２割ほど複合材が使われている。機内は乗員１〜２名のほかに乗客８人をのせることができる。また機外吊り下げ重量1,300ｋｇで、機体総重量は3,000ｋｇ。最大速度285��/h、巡航速度250��/hで、520〜800ｋｍの航続性能を持つ。操縦系統にはフライ・バイ・ワイヤが組みこまれているともいう。
カザン工場はこれまでミル・ヘリコプターを生産してきたが、独自の多用途ヘリコプターを開発しようとして、1994年アンサットの設計に乗り出した。このときミル設計局にも共同作業の提案をしたが、ミルの方が拒否したため、カザン単独の開発となった。
胴体モックアップは1995年のパリ航空ショーで展示され、97年のパリには飛行前の原型機が展示された。また1998年のファーンボロ航空ショーでは、やはり飛行前の原型２号機が展示された。しかし技術的な問題があって、なかなか飛行できず、１年ほど遅れて1999年８月17日に飛んだものである。
今後は99年末までに原型２号機が飛び、2000年秋までに型式証明を取るという。
すでにロシア国境警備隊が100機を発注したと伝えられる。機体価格は170万ドルとか。
８月18日：ユーロミル発足 ミル設計局、カザン・ヘリコプター社、ユーロコプター社の３者は、ロシアの法律にもとづく合弁企業、ユーロミル社をモスクワに設立した。Ｍｉ-38大型機の開発を目的とするもので、出資比率は３分の１ずつ。
同機はプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社のＰＷＣ127エンジン２基を装備する総重量15トンの双発機。
ミルは全般設計、装備品の試験、および飛行試験を担当、カザンは胴体とブレードの製造、ならびに最終組立を担当、ユーロコプター社はコクピット、アビオニクス、その他の機器類の設計と取りつけを担当する。
市場目標は捜索救難、軍用輸送、民間旅客輸送など。
８月25日：ＣＨ-47ＳＤ初飛行 「スーパーＤ」と愛称される改良型のチヌーク大型ヘリコプター。コクピット・マネジメント・システムやエンジン・コントロール・システムをデジタル化したもの。乗員は３人。主キャビンには兵員37〜55人をのせられる。
９月30日：ＯＨ-１の試験飛行終了 陸上自衛隊向けの武装観測機。1993年に設計がはじまり、96年に初飛行、近年は陸上自衛隊明野駐屯地で防衛庁技術研究本部と飛行開発実験隊で４機の試作機による実用試験が行われていたが、99年９月末に終了、間もなく実用機として認定される予定。
観測機といっても、外観は細長い胴体の前方に前後２席のコクピットがあり、胴体左右には短固定翼が張り出し、その下面に空対空ミサイルをつけているから戦闘攻撃機としても使えるかもしれない。
主ローターは４枚ブレード。ハブは独自のベアリングレス機構で、操縦反応にすぐれた特性を示し、ホバリング状態からの宙返りも可能。尾部はダクテッドファン。降着装置は尾輪式の３車輪だが、引込み脚ではない。
エンジンは三菱ＸＴＳ１-10（884shp）が２基。飛行速度は最大290��/h。将来の変身を期待しよう。
10月１日：三菱ＭＨ2000引渡し開始 三菱重工業が開発を進めてきたＭＨ2000が実用段階に達し、10月１日エクセル航空へ引渡された。同機は1996年７月29日に初飛行、97年６月26日に輸送ＴＢ級の型式証明を取得したが、その後も２年間にわたって飛行試験をつづけ、今年９月24日にＴＡ級の運航が認められたもの。この間、エンジンをＭＧ５-110（876shp）に換装して出力を上げ、最大離陸重量を4,300ｋｇから4,500ｋｇに増やすと共に、超過禁止速度（Ｖne）を120ｋｔから150ｋｔに上げている。
筆者も先日このヘリコプターに試乗させてもらった。キャビンはゆったりと余裕があり、窓の視界も広くて、機内騒音が小さい。パイロットの機内放送もよく聞こえる。またローター回転数を90％に落として「静粛モード」にすれば機外騒音も小さくなる。このときのＶneは100ｋｔだそうだが、振動と騒音がなくなって快適性が増す。都内上空をゆっくりと遊覧飛行するには最適であろう。
アメリカではグランド・キャニオンやニューヨーク上空など、騒音のために遊覧飛行が制限されている。しかしＭＨ2000ならば、そうした問題を起こさなくてすむはずで、ＦＡＡの型式証明を取って輸出されることを期待したい。むろん騒音の小さいことは遊覧ばかりでなく、あらゆる業種に要求されることである。
機体価格は４億円と報じられている。シコルスキーＳ-76にくらべると半分程度だが、これも有利な条件であろう。
なおエクセル航空では、ＭＨ2000の受領から３か月間で200時間近い遊覧飛行をしているとのことで、大変な人気である。駅前から乗ったタクシーの運転手も「今度、新型が入ったらしいね」と言いながらヘリポートまで送ってくれた。
（浦安ヘリポートで乗せて貰ったＭＨ2000ヘリコプター）
11月19日：ベル427型式証明取得 新しい軽双発タービン機。エンジンはＰＷ207Ｄ（529ｋＷ）が２基。
機体は複合材が多用され、機内はコクピットが２席のほかに、客席は３人ずつ向かい合ってすわる。救急用にストレッチャー２人分の搭載も可能。巡航速度250��/hで700ｋｍ以上の航続性能をもつ。
ベル427の計画が発表されたのは1996年２月22日ダラスで開催されたヘリエキスポでのことだった。同年８月に実物大のフル・モックアップが完成、９月のファーンボロ航空ショーで公開された。
そして1997年初めに原型機の製作がはじまり、12月11日に初飛行した。98年には原型２号機も飛びはじめ、６月には量産１番機、９月には２番機も飛んだが、量産型は重量の増加に対応するためエンジンがＰＷ206ＤからＰＷ207Ｄに変わっていた。その頃、設計の基本となった407単発機で尾部ローターがテールブームを叩くという事故があったため、427も設計変更を余儀なくされた。さらに方向舵ペダルの改造も必要になったりして、型式証明の取得は当初目標の98年12月から１年近く遅れてしまった。
最近までの受注数は約80機。機体価格は1997年11月に199万ドルと発表されたが、現在では基本価格220万ドル。ＩＦＲ装備をすれば267〜280万ドルになるらしい。2000年初めから量産機の引渡しに入って、2013年までに740機という販売目標が掲げられている。
（去る９月下旬、ミュンヘン空港の一角にある
ババリア州警察の格納庫で見た真新しいＥＣ135）
12月２日：ＥＣ135に計器飛行承認 ドイツ航空局はＥＣ135にシングル・パイロットＩＦＲを承認した。ＦＡＡの承認も2000年春までに取れる見こみ。ＥＣ135はビジネス機、救急機、警察機として数多く使われているが、計器飛行が可能になることで活動範囲はさらに広がる。
なおＥＣ135は６月16日、パリ航空ショーの会場で量産100号機が引渡された。受領したのはドイツのババリア州警察で、同警察は９機を発注している。
ＥＣ135は1996年,初飛行から１年半で型式証明を取得、このクラスのヘリコプターとしては最も静かで、最も革新的なヘリコプターとして表彰もされている。99年なかばまでの受注数は160機以上。
ＯＨ-１に使用承認 防衛庁が開発してきたＯＨ-１観測ヘリコプターは１２月21日、防衛庁長官から部隊使用承認を受けた。実用機は2000年１月末から引渡しがはじまる。
（西川渉、99.12.31加筆、99.12.24）
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