ヘリエキスポ2001

新世紀を迎えたヘリコプター世界

 

 

 今年の国際ヘリコプター協会(HAI)の年次大会「ヘリエキスポ2001」は本頁速報のとおり、2月11日から3日間、ロサンゼルス南郊のアナハイムで開催された。3日間の天候は、カリフォルニアらしいカラリとしたときが少なく、冷たい雨が降ったりして、せっかくのヘリコプターショーもいささか熱気をそがれたような格好になった。話題は少なくなかったが、参会者はラスベガスで開かれた昨年よりも2,000人減の12,500人とか。もっとも、これはHAIのせいではなく、子ども向けのディズニーランドと大人向けのカジノの集客力の差だという説もある。

 最終日の表彰晩餐会では、HAIプレジデントのロイ・リサベッジ氏の隣に席を与えられるという光栄に浴した。話の合間に上の図にある今年の大会のロゴマークは、ヘリコプターのローター回転をあらわすと同時に、銀河系宇宙をイメージし、最近流行の「e ビジネス」を意味しているのではないかと訊いてみた。リサベッジ氏の答えは、「いや、これは単にローターの回転を表しているだけで、アメリカ人はそんな複雑なことは考えませんよ」というものだったが、果たして如何。デザイナーはやはり二重、三重の意味をこめたのではないか、私にはどうしてもそう見える。 

 

AB139早くも初飛行

 HAI大会がはじまって、最初に大きな話題となったのはイタリア・アグスタ社とベル社が共同開発中のAB139中型双発タービン・ヘリコプターが早くも初飛行をしたということ。この日早朝からおこなわれたアグスタ社の記者会見では、1週間前の2月3日ミラノ近郊の同社工場でおこなわれた初飛行のもようがビデオで公開され、記者団から拍手が起こった。


(AB139初飛行の瞬間)

 この飛行は、計画では10分間の予定だったが、飛んでみると調子が良く、そのまま45分間にわたって飛びつづけたらしい。この間、横進速度は最大46km/h、前進速度222km/hを記録した。ほかにホバリング、操縦操作およびサブシステムなどのチェックがおこなわれたという。2度目の飛行は2日後の2月5日であった。

 AB139の開発計画は1999年6月、パリ航空ショーでベル/アグスタ・エアロスペース社の名前で公表された。同時に実物大のモックアップが公開されたが、あれからまだ1年半しかたっていない。

 エンジンはプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社のPT6C-67Cターボシャフトが2基。最大離陸重量は6,000kg、有効搭載量2,500kg。最大巡航速度は290km/h、航続距離740km、地面効果外のホバリング高度限界3,600mという飛行性能をもつ。

 5〜8トン級の中型機は過去35年間に15,000機が製造された。AB139はこのクラスの中では新世代の多用途機として柔軟性に富み、キャビン・スペースはきわめて大きく、出力の余裕も最大。そのうえ運航費が安く、抜群の生産性を有する。飛行性能にもすぐれ、搭載量を減らすことなくカテゴリーAの能力を発揮する。客席は12〜15席。ゆったりした大きなキャビンで、リッターに横臥した患者6人と医師または看護士4人をのせて高速飛行をすることもできる。

 この新世代のAB139は民間機と軍用機の両方をねらっている。軍用機としては戦場の最前線で兵員および物資の輸送、捜索救難、火器制圧、患者搬送、空中指揮など、あらゆる任務を遂行することができる。また敵のレーダーや赤外線探知に強く、騒音の低いことと相まって、柔軟な運用が可能。

 主ローターは5枚ブレード、尾部ローターは4枚ブレード。両者で高速・低騒音の飛行性能を発揮する。降着装置は前輪式の半引込み脚。これも高速飛行性能に貢献する。選択装備の中には防氷装置も含まれ、既知の氷結気象状態の中でも計器飛行が可能。

 今後は2002年末までに原型3機で1,500〜1,800時間の試験飛行をして型式証明を取る予定。ほかに1機が地上試験に使われる。組立ラインはアグスタ社と平行してベル社にも設けられる。注文は、すでに欧州、米国、豪州、アフリカ、アジアなどから11機を受けている。この中にはアラビア湾地域の販売権をもつホーカーパシフィック社からの4機が含まれる。この発注はヘリエキスポ会場で調印されたが、契約金額は4機で2,600万ドルと見られる。ちなみにホーカーパシフィック社はBA609民間型ティルトローター機も11機を発注している。

 

 

アグスタウェストランド社の誕生

 アグスタ社は、ヘリエキスポの初日につづいて、2日目には英ウェストランド社との合併手続きが正式に完了したことを発表した。新会社は「アグスタウェストランド」社と呼び、昨年の2社を合わせた実績からすれば、売上高が21億ドルで、ユーロコプター社をしのぐ世界最大級のヘリコプター・メーカーが誕生したことになる。また昨年の受注ヘリコプター数は314機、生産数61機、受注残高80億ドルであった。

 こうした二つのニュースに限らず、アグスタ社の勢いはとどまるところを知らない。同社が生産してきたA109パワーは昨年秋100号機を出荷したが、年末にはまだ70機の注文が残っていた。2001年は15機を生産する計画で、内訳は5機が社用ビジネス機、3機が救急専用機、1機が港湾の水先案内人の輸送に使われ、6機はアメリカ沿岸警備隊に納められる。

 沿岸警備隊は、このA109パワーをMH-68Aマコと名づけて昨年2機を採用した。同機はFADECエンジン・コントロール装置をそなえ、統合アビオニクス装置を有し、ヘッドアップ・ディスプレイ、GPS、ムービングマップ、赤外線レーダー、サーチライト、緊急用フロート、救難用ホイストなどを装備している。またスナイパーライフルやマシンガンも搭載する。沿岸警備隊からのこれまでの受注数は8機。

 A119コアラ単発機の売れ行きも好調で、昨年引渡された1機は救急専用機であった。コアラの今後の生産計画は、2001年が15機、2002年が20機、2003年以降は25機まで増える予定という。

 さらに新しいアグスタウェストランド社の中心となるEH-101は、最近までの受注数がちょうど100機になった。近く米空軍および海軍から120機の注文が出るものと期待されている。

 

EC130B4軽単発機の登場

 アグスタウェストランド社の挑戦を受けるユーロコプター社のブースではEC130B4軽単発ヘリコプターがヴェールを脱いだ。これまで極秘のうちに開発してきた新機種で、広く普及している小型単発ヘリコプター、AS350エキュレイユの発展型である。

 EC130B4は、AS350による過去20年以上の実績にもとづく信頼性、安全性、操縦性、経済性に加えて、他の同クラスの機種よりも騒音が5デシベル以上少ないという。今回は屋内展示だけで、実際の音を聴くことはできなかったが、尾部ローターを低騒音のフェネストロンに改めると共に、エンジンには2チャンネルのFADECコントロール装置を取りつけ、ローター回転速度を変更できるようにしている。これで巡航時の騒音は84.3デシベルとなり、ICAOの騒音基準を7デシベル下回るばかりか、向こう10年ほどの間に想定される基準はすべて下回る見込みという。


(初公開されたEC130B4と山野さん)

 

 EC130B4のもうひとつの特徴はキャビン・スペースの大きいことで、エキュレイユの23%増しになる。その結果、ゆったりした標準座席配置でパイロット1人のほかに乗客6人の同乗が可能となったが、詰めれば7人をのせることもできる。つまり小型単発機といいながら、最大8人乗りの機体なのである。また座席を外せば、機内に3.7立方メートルの貨物搭載が可能であり、機外吊り下げ重量は1,160kgに達する。救急機としてはストレッチャー2人分と医師や看護士2人の搭乗が可能。

 こうした大きな変化にもかかわらず、構造的にはAS350B3との共通性も多い。たとえばメインフレーム、メカニカル・アセンブリー、主ローター、エンジン・コア、操縦系統、多機能ディスプレイ(VEMD)などである。そのため、これまでAS350B3を運航してきたものにとっては、特に整備面では違和感のない手慣れた作業が可能という。そればかりか、主ローターのスターフレックスや標準部品などはAS350と共通だから、経済的でもある。

 また風防やドアはEC120Bコリブリのものを採用、広い視界を持つに至った。フェネストロンは騒音の静かなEC135と共通である。

 エンジンはチュルボメカ・アリエル2B1。離陸出力848shp、最大連続730shpで、同級機の中では最大の出力を持つ。飛行中の故障停止もきわめて少なく、構造的には全体が5つのモジュールに分かれて整備作業がしやすい。オーバホール間隔(TBO)は3,000時間に達する。

 こうしたEC130B4は、すでに昨年12月米FAAと欧州JAAの型式証明を取得、この春のうちに4機が引渡される。大会に展示された機体は、その場でブルーハワイアン・ヘリコプター社に引渡された。ハワイの遊覧飛行に使われる予定。同機はまたAS350/355ファミリーの3,000号機にも当たるという。これら3,000機のこれまでの飛行時間は総計1,100万時間に上る。

 なおユーロコプター社の昨年1年間の受注数は表1のとおりであった。

 

ストレッチ型S-92も飛行開始

 シコルスキー社からは、S-92ストレッチ型の初飛行が発表された。HAI大会の3日前、2月8日にフロリダ州ウェストパーム・ビーチで飛んだものである。

 同機は胴体右側のドア開口部を幅1.27mまで広げるため胴体を0.40m引延ばし、尾部ローターのパイロンを低くして機体重量の増加を相殺、水平安定板を左側から右側に移したもの。まだ試験飛行の段階で、こうした改造がおこなわれたのは、顧客の要望に応えてキャビン・スペースとドアの開口部を広げ、捜索救難機としての実用性を高めるため。これで救難用のリッターを機内に引き込むこともできるようになった。

 また旅客輸送機としては乗客19人をのせて740kmの航続性能を有し、22人の兵員輸送も可能。このストレッチ型は飛行試験用の3番機で、1〜2番機は最近までに合わせて600時間の試験飛行をしている。ほかに1機が地上試験に使われ、飛行試験用の4番機が目下組み立て中。これで来年なかばまでに型式証明を取得する予定。

 S-92の開発に平行して、シコルスキー社ではS-76の改良計画も進んでいる。内容はエンジン出力の増強、コクピットの改善、静かな尾部ローターの採用、キャビン快適性の向上など。エンジンは現用アリエル2S1に代えて2S2を取りつけ、出力を6%増やし、飛行性能も向上する。

 コクピットは液晶平面パネルやディジタル・データバスを採用、尾部ローターはブレードの翼型を改めて先端に後退角をつけた。飛行試験の結果は空力的な効率が増すことがはっきりしたため、その分だけ回転数を落として、騒音が下げられるようになったという。

 キャビンの快適性も良くなる。このため振動コントロール装置(AVC)や騒音コントロール装置を取りつけ、騒音抑制機構を組みこみ、低騒音のトランスミッションを採用する。AVCはS-92で開発された新しい技術で、振動センサー、コンピューター、パワー増幅器、シェイカー・アセンブリーから成り、ヘリコプターのダイナミック系統から発する振動を感知して、それを打ち消すような振動を起こす。また低騒音のトランスミッションは軍用コマンチ偵察攻撃機のために開発された技術を応用したものである。

 こうした新しい改良型のS-76は2004年に型式証明を取る予定。なおS-76は最近までに500機以上が製造された。


(シコルスキー社の展示ブース――左がS-92の新しいキャビンモックアップ) 

小型機も続々改良型へ

 現用機の改良はMDヘリコプター社でもおこなわれている。MDエクスプローラーのエンジン出力を増強するもので、今のPW206AおよびPW206Eエンジンに代わって、PW207Eエンジンを装備、今年9月から実用化されるという。PW207Eは離陸出力710shpで現用エンジンの11%増、2.5分間の片発緊急出力は800shpで8.5%増になる。

 エンストローム社も大会2日前の2月9日、改良型の480Bに対して新しい型式証明を認められた。同機は従来の480を基本として、トランスミッション系統を強化、総重量を1,290kgから1,360kgへ増やしたもの。これで480Bの有効搭載量は590kgとなった。

 エンジンはRRアリソン250-C20Wターボシャフト(420shp)が1基。これを480では289shpに減格していたが、480Bでは離陸出力305shpまで上げ、最大連続出力は269shpから277shpになった。また主ローター系統の一部も改良され、重量の増加にもかかわらず、飛行性能はさらに良くなった。

 これで旧来の480は生産が終了、今後は480Bが生産される。競合機はシュワイザー333,ベル206B-3、MD500E、EC120Bなどだが、飛行性能はそれらにまさるとも劣らないというのがエンストローム社の主張。そのうえ基本価格は58万ドルと以前の480と変わらず、ある程度の装備をして636,030ドルで、どの競合機よりも3万ドル前後安いという。

 その競合機と目されるシュワイザー333は昨年9月にFAAの型式証明を取得した新しい小型タービン機である。エンジンはやはり250-C20Wで、これを230shpに減格している。従来の330タービン機に対して、ローター・ブレードの翼型が改められ、ローター直径も大きくなって揚力が増し、ドライブ系統が強化されるなど、有効搭載量は3割増となった。巡航速度も35km/hほど増加し、航続距離は1.5倍以上へ大きく伸びている。

 価格は607,500ドル。同程度の装備をしたベル206Bジェットレンジャーよりも18万ドル余り安く、1時間あたりの直接運航費は133ドルで、ジェットレンジャーの192ドルに対して7割程度ですむというのが、シュワイザー社の主張。これまでに10機以上が警察などに引渡されている。機内は4人乗り。

 なおシュワイザー社は、今年10機の333と40機の330Cまたは300CBピストン機を生産する計画。これで4,700万ドル以上の売上高を見こんでいるが、昨年の3,970万ドル、99年の3,570万ドルから見れば大幅拡大ということになる。また今年はシュワイザー社にとってヘリコプターの生産開始40周年にあたる。

 

世界最多のロビンソン生産数

 小型ピストン機では今回もロビンソン・ヘリコプター社の業績が目立った。同社が2000年中に引渡した機体数は1日1機を超えて390機に達した。うち126機がR22(複座)、264機がR44(4席)となっている。R44は昨年から操縦系統に油圧を組みこみ、操縦操作が軽くなったことから人気が高まった、引渡し数は前年の76%増という。また最近1,000号機が出来上がり、それが今回の会場に展示されていた。 ロビンソン社の売上高も同社初めて1億ドルに達したという。

 こうした好成績を背景に、フランク・ロビンソン社長はこのほど100万ドルの大金をワシントンのスミソニアン航空宇宙博物館に寄付した。寄付の目的は、現在ワシントン郊外のダレス国際空港に建設中の同博物館別館にヘリコプターの展示室を確保するため。

 ワシントン市内のスミソニアン航空宇宙博物館には、かつてヘリコプター専用の展示室「ヴァーティカル・フライト・ルーム(垂直飛行室)」が設けられていた。ところが1995年、広島の原爆投下に使われたB-29エノラゲイを展示することになって取り払われ、1998年にエノラゲイの展示が終わってもヘリコプターの展示は復活しなかった。

 そこで新しい別館にヘリコプター専用の展示室を確保しようというのがロビンソン社長のねらい。別館は床面積71万平方フィート(約2万坪)の巨大な建物で、その中にヘリコプターはもとより、ボーイング747やロッキードSR-71など、総計およそ200機の航空機と100基の宇宙船および衛星がが展示される。開館は2003年12月――ライト兄弟の初飛行から100周年を記念する形でおこなわれると聞いた。 

 さらにロビンソン社長は、オフィスビルなどの屋上に小型ヘリコプター用のヘリパッド設置運動に着手した。ヘリコプターの普及をめざすもので、総重量1,360kg程度の小型機が発着できるようなヘリパッドであれば、大きさはせいぜい6m×6m程度ですみ、建物の強度も余り問題にはならない。個々の建物について、どのような設置方法にすればよいか、ロビンソン社が無償で設計を引き受けるという内容である。

「オフィスビルの屋上に1〜2機、あるいは3〜4機の自家用ヘリコプターが駐機できるようにすれば、われわれの交通はいっそう便利になる。設置のための費用は10万ドル程度。私も別荘の屋上に5m×5mのヘリパッドを設置している」と、ロビンソン社長は語っている。

 

これからのヘリコプター需要

 最後にヘリコプター工業界全体のもようを眺めてみると、昨年新たに引渡しが始まった機種はEC155B、ベル427、シュワイザー333、アグスタA119コアラがある。これらを含む新製機の引渡し数はおそらく890機程度と推定されている。うち約470機がタービン機、420機がピストン機であろう。

 しかし、ピストン機は今後こんなに多くの需要は望めないというのが、米運輸研究委員会の見方である。その予測は表3の通りだが、2001年から2010年までの10年間、民間ヘリコプターの需要は横這いのままと見る。そのうちピストン機は300機弱まで低下するため、2000年の実績が900機に近かったのに対し、これからは800機前後で推移するという。

 では、ほかの見方はどうだろうか。ロールスロイス・アリソン社は、タービン・ヘリコプターのみについて、2010年までの10年間の需要が9,805機と予測している。ただし、この中には軍用機も含まれるため、民間機だけならば5,175機になる。これは上の予測よりもやや多いが、さほどの差異があるわけではない。また年ごとの需要動向は500機前後で、わずかずつ増えて行く傾向を示している。

 わずかながらも需要が伸びるのは、これから石油開発需要が沖合遠くの油田を中心に復活してくること。また、ヘリコプターの騒音に対する反発がいっそう強くなるため、それに応えられるような新しい機材への買い替え需要が生じるためという。

 さらに思いがけない需要の増加要因となったのは2000年夏の北米西部の林野火災である。米連邦政府は、この大火から今後の災害対策として消防ヘリコプターの購入に対する多額の補助金を予算化しようとしている。また救急ヘリコプターも今後、欧米諸国では騒音が少なく経済性の高い新機種への買い替え需要がつづくであろう。

 ハニウェウル社は2001〜2005年の5年間に2,550機の民間タービン・ヘリコプターが売れるだろうと見る。これは1996〜2000年の過去5年の生産実績2,300機に対して丁度10%の増加に当たる。表3では同じ5年間のタービン機の合計が2,432機になるから、それよりも5%ほど多い予測ということができよう。

 ハニウェル社の予測の根拠は現用ヘリコプターの老齢化が進んできたことが一つ。HAIの推定では世界の民間ヘリコプターの平均年齢は18年余で相当に古い。そこから買い替え需要が出てくるというわけである。加えて最新の技術を採り入れた新機種が続々と登場しつつあり、これも買い替え需要を刺激する要因となっている。

 またアジア地域や中南米の景気が回復してきたことも需要の増加を期待させる。ただし地域別にみれば、北米が37.7%という最大の需要を示し、ついで欧州が24.4%を占める。欧州では、もうひとつ、航空法規がきびしくなって、たとえば市街地上空は単発機では飛べないといった規則が導入されつつあり、これも新たな需要を生むと見られている。

 ティール・グループの予測は、2009年までの10年間に軍民合わせて9,206機、745億ドル相当のロータークラフトが売れると見る。このうち4,712機、123億ドルが民間機、4,494機、622億ドルが軍用機となる。このうち98億ドルがV-22ティルトローター機だが、それにBA609を加えると、全体の2割がティルトローター機の需要で占められると見ている。

 かくてヘリコプターの世界は新たな技術を採り入れながら、新しい世紀へと入ったのである。

(西川渉、『航空情報』5月号掲載)

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