<航空機の開発>
納期と違約金 エアバスA380の引渡しは1年半の遅れとなり、10月末になってようやくシンガポール航空に就航した。ボーイング787も本来は今年8月に初飛行し、来年5月に全日空へ引渡される予定だったが、今なお飛んでいない。引渡しは半年以上遅れて来年末になるという。
そうした遅延が起れば、メーカーは顧客に対して違約金を払わなければならない。先日、その違約金はいくらぐらいかという質問を受けた。もとより第三者の私には分からない。メーカーと顧客との契約書には書いてあるのだろうが、外部にもらされるようなものではあるまい。
ところで今日のニュースに、エアバスやボーイングの話ではないけれども、欧州共同の多用途大型ヘリコプターNH90の納期の遅れに対する違約金の話が出てきた。ユーロコプター社からフィンランドへ納めるはずの20機のNH90が、まだ1機も納まっていない。本来ならば2004年10月から引渡しが始まり、最近まで13機が納まっていなければならないはずというので、このほどユーロコプター社は2,000万ユーロ(約32億円)の違約金を払ったらしい。
もうひとつ別の話題は、4〜5日前のことだが、米陸軍が2013年までの5年間で348機を買うことになっていたベルARHヘリコプターが、このほど250機に削られたという。
同機は当初の価格が1機あたり1,030万ドル(約12億円)だった。研究開発費や物価上昇率などの要素も含んだ価格だが、最近のインフレによって1機1,230万ドルまで増加することになった。そのうえ開発試験に手間取り、2008年で終わるはずが2010年まで2年間延びるという。
つまり、この場合は違約金の支払いではなく、機数の削減という罰則が課せられたことになる。
このように、航空機の開発はなかなか難しく、つい遅れ遅れになってしまう。初めから余裕のある日程を組めばよさそうなものだが、お互いに競争があるし、顧客の都合にも合わせなければならない。
ボーイング787の場合は、全日空が北京オリンピック向けの需要に応えるつもりだったし、ARH武装偵察ヘリコプターの場合はイラク戦争で失ったヘリコプターの補充を急ぐ必要があった。
航空機の納期は一筋縄では守れないようである。
【関連頁】
ARH-70AとVH-71 (2007.6.1)
ベルARHの前途不安(2005.5.14)
(西川 渉、2007.12.20)
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