<アメリカ軍用ヘリコプター>

ARH-70AとVH-71

 米陸軍は、ARH-70A武装偵察へリコプターの開発について、これまで通りベル社の作業を継続することにしたもよう。

 ARH-70Aは開発日程が遅れてコストが1.5倍以上に上昇したうえ、原型機4号機が初飛行で事故を起こすなどのトラブルが続いたため、去る3月陸軍はベル社に対し作業を中断して事態の改善策を出すよう求めていた。その改善策が5月18日、米陸軍内部で審議され、ベル社の続行が再確認されたもの。ただし日程の遅れを取り戻すために最大限の努力をして、コストを引き下げるよう求めている。

 これでARH-70Aは、従来2008年9月から量産機の引渡し開始の予定だったが、これを2009年12月まで遅らせることで合意された。量産数は512機の予定。

 なお、2月に起こった原型機4号機の事故は、燃料タンクの中に取り残されたプラスティックのパイプ・キャップ――外れたのか置き忘れたのか分からぬが、それが燃料の通路をふさいだのが原因という。

 こうしてARH問題が落ち着いたと思ったら、今度はアメリカ大統領機となるEH-101の改修開発費が、当初予算を34%上回る恐れが出てきた。

 この問題は米議会の調査機関GAOの調査によって明らかになったもの。改修作業はロッキード・マーチン社を主務担当者として2005年1月に17億5,000万ドルで契約が調印された。初号機はVH-71の呼称で2009年10月までに完成、2015年までに15機が製造される計画だが、今の見込みではそんなに早く作業が進まず、経費も24億ドルへ増える恐れがあるという。

 そのうえ機体重量も増えてきた。去る3月GAOが監査をした結果では、同機は設計重量30,350ポンド(13,760kg)を1,200ポンド(540kg)上回りつつある。そうなると、本来の飛行性能も出なくなる。

 なお、大統領専用機の調達数は当初の15機から20機に増えるもよう。

【関連頁】

    ベルARHの前途不安(2005.5.14)

    米大統領機は欧州生まれのUS101(2005.5)

    米CSAR-Xの入札やり直し(2007.5.18)

(西川 渉、2007.6.1)

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