日本の自衛隊は、どんな航空機をどのくらい持っているか。そのことは機密だったのかどうかは知らぬが、従来あまり明確な公表はされなかったのではないか。しかし、このほど『防衛白書』の中で、機種と機数が明らかにされたという報道があった。
その公表事項の中から、とりあえず機数を論評抜きでここにメモしておきたい。半年前の平成11年3月末現在の数字である。
自衛隊(機数) |
形式(機数) |
機種 |
機数 |
陸上(498) |
固定翼(16) |
LR-1/LR-2 |
16 |
回転翼(482) |
AH-1S |
87 | |
OH-6J/D |
189 | ||
UH-1H/J |
153 | ||
V-107A |
5 | ||
CH-47J/JA |
42 | ||
UH-60JA |
6 | ||
海上(208) |
固定翼(100) |
P-3C |
100 |
回転翼(108) |
HSS-2B |
36 | |
SH-60J |
62 | ||
MH-53E |
10 | ||
航空(460) |
固定翼(444) |
F-15J/DJ |
199 |
F-4EJ |
107 | ||
F-1 |
52 | ||
RF-4E/EJ |
26 | ||
C-1 |
27 | ||
C-130H |
16 | ||
E-2C |
13 | ||
E-767 |
4 | ||
回転翼(16) |
CH-47J |
16 | |
合計 |
1,166 |
上表のうちF-4EJの107機の中には、87機の「F-4EJ改」が含まれる。
機数の総計は、1,166機。うち固定翼機は560機で、全体の48%。回転翼機は606機で、52%を占める。いうまでもなく、陸上自衛隊はほとんど回転翼機、航空自衛隊はほとんど固定翼機で、海上自衛隊は両者半々といったところ。
いずれにせよ、こんな国家機密をインターネットに掲載するなど、非国民か売国奴だというので「防諜法」でつかまりはせぬか。(西川渉、99.9.9)
【追記】
上のような論評抜きのメモをつくった翌日、以前にも同じようなことを書いたのを思い出して、本頁を探してみた。すると1年前の英「フライト・インターナショナル」誌から私が数え出した数字を表にしたものが見つかった。
ところが驚いたことに、この表と上の表では数字が全く違うのである。フライト誌の方は、日本の自衛隊機は固定翼機が1,041機、ヘリコプターが676機、合わせて1,717機という。上の表のほぼ1.5倍である。
何故こんなに違うのか。もちろん『防衛白書』の方が正しいと思いたいところだが、実はどちらかに誤植があるのかもしれない。誤植がなくて、英側の集計が正しいとすれば、日本側は本当はもっと沢山の航空機をもっているのだが、まさしく国家機密で隠しているのではないか。
逆に日本側の数字が正しいとすれば、英側は日本の自衛隊を過大評価していることになる。このことは抑止力という見地からすれば好ましい。本当は弱いけれども、表向きは強く見せておくことは、わが身を護るうえで大事なこと。
いつぞやも東南アジア某国の首脳が「日本のように最新鋭機をたくさん持っている国は攻撃するわけにはいかない」と言ったという話を聞いた。そう思わせておいた方が日本としても安泰であろう。何もわざわざ少ない数字を公表することはなかったのだ。(99.9.11)
【追々記】
上のように書いたところ、お2人の方からご注意をいただいた。この表には固定翼も回転翼も練習機が含まれていないというのである。なるほどその通りで、慌ててもとの報道を読み返してみると「自衛隊の航空機」ではなくて「自衛隊の主要航空機」と書いてあった。主要でないものは省略したらしい。
とすれば、この表は不完全だったわけで、不完全な情報を掲載していると、またしても「インターネットは信用できない」とか「便所の落書き」(石原都知事)などといわれかねない。いずれこの頁はボツにしなければならないと考えている。(99.5.15)
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