自衛隊の航空機

――その2―― 

 先般来、自衛隊の航空機数にこだわり、数が合わないので気持が悪い。このままでは資料として不正確なのでボツにしたいと書いたところ、そこまでやることはないでしょうというので、このほど石川島播磨重工の上田邦彦氏から要旨次のようなメールをいただいた。

この一覧表を見て、まず最初に気がついたのは、練習機(空自のT−1から−4、海自のT−5、OH−6他)が入っていないことです。もう少しよく見ると、捜索機(MU−2)、救難機(空自、海自のUH−60)などの後方支援機(YS−11他)も勘定に入っていない」

 そのあたりに機数の違いがあるのだろうとのことで、私もいささか納得した。さらに上田氏からは、航空自衛隊がホームページで保有機数を公開していると教えられた。ここにも「主要航空機」と書いてあるが、練習機、後方支援機も含まれ、航空自衛隊で運用している政府専用機のボーイング747も入っている。

 ただし平成9年度の機数でやや古い。もはや平成10年度が終わって半年にもなるのだから、もう少しどうにかならないのだろうか。せっかくのインターネットの機能が生かされていない。 

 ちなみに陸上自衛隊と海上自衛隊のホームページでは、保有機数は掲載されていないらしい。しかし、海上自衛隊の小冊子「JMSDF」(1999年3月版)には、平成11年3月31日現在の海上自衛隊の航空機数が次のように掲載されているとのことである。

 

海上自衛隊の航空機数

機  材

作戦・支援

任  務

機  種

機  数

固定翼機
(184機)

 

実用機(116機)

哨戒機

P-3C

86機

救難機

US-1A

7機

輸送機

YS-11M-A

4機

多用機

EP-3

5機

UC-90

1機

U-36A

5機

UP-3C/-3D

3機

連絡機

LC-90

5機

練習機(68機)

T-5

36機

TC-90

26機

YS-11T-A

6機

回転翼機
(134機)

実用機(125機)

哨戒機

HSS-2B

34機

DH-60L

59機

掃海・輸送機

MH-53E

10機

救難機

S-61A

4機

UH-60J

14機

多用機

S-61A

3機

OH-6D

1機

練習機(9機)

OH-6D/DA

9機

  

 総数では318機になり、英『フライト』誌のいう341機(うちヘリコプターは142機)に近づく。

 

 次に、元『WING』紙編集長の大橋人誌氏からも要旨次のようなメールをいただいた。

「ざっとみたところ、防衛白書はいわゆる作戦用航空機のみを掲載しており、練習機や捜索救難機は掲載していないようです。航空自衛隊のみでも、T-2、T-3、T-4、T-400などの練習機を350機ほど保有していると思います。捜索救難機はMU-2とその後継機のU-125、V-107とその後継機のUH-60を約70機保有していると思います。作戦機と支援機を合計すると、英『フライト』誌の数字になるだろうと思います」

 さらに「一言つけ加えると、防衛庁は以前から作戦機と支援機という大きな分類をしているので、防衛白書に作戦機のみを掲載したのは、特に何かの意図があったわけではなく、日頃の習慣なのだろうと思います。

 こういう分け方をして、作戦機のみを発表し始めた当時は、戦力を少な目に見せて、予算もあまり取っていないような魂胆があったのかもしれませんが、今では単に前例を踏襲しているのに過ぎないんじゃないでしょうか。何しろ空中給油機を導入しようかというご時世ですから。以上あくまでも、私の推測でしかありませんが」

 これで私も納得がいったような気がする。

 ところで数日前、防衛庁は平成12年度予算策定に当たり、同年度中に3自衛隊が取得および調達する航空機数を次のように示したという報道があった。

 

自衛隊の平成12年度取得・調達予定機数

自衛隊

機  種

取得機数

調達機数

改善機数

陸上

対戦車ヘリコプターAH-1S

1機

――

――

観測ヘリコプターOH-1

2機

4機

――

多用途ヘリコプターUH-60JA

5機

3機

――

多用途ヘリコプターUH-1J

4機

7機

――

輸送ヘリコプターCH-47JA

1機

2機

――

連絡偵察機LR-2

――

2機

――

海上

哨戒ヘリコプターSH-60J

7機

7機

――

救難ヘリコプターUH-60J

2機

――

――

計器飛行練習機TC-90

3機

3機

――

初級操縦練習ヘリコプターOH-6DA

――

1機

――

航空

支援戦闘機F-2

19機

9機

――

救難捜索機U-125A

3機

2機

――

救難ヘリコプターUH-60J

2機

2機

――

中等練習機T-4

9機

9機

――

輸送ヘリコプターCH-47J

――

2機

――

新初頭練習機

――

2機

――

輸送機・救難機等基本操縦練習機T-400

――

2機

――

早期警戒機E-2C

――

――

2機

 

 この表にいう取得とか調達とか改善などの用語が具体的にどんなことを意味するのか、私は正確なことは知らない。しかし恐らくは、「取得」は平成12年度中に受領する機数、「調達」は平成12年度予算で発注する機数ではないかと思う。それを実際に受け取るのは、同年度の機材もあろうし、翌年度以降になるものもあろう。

 また「改善」とは、航空機そのものの改修によって、例えばエンジンを強化したり、ローターを改良するなどして、飛行能力の向上をはかるか、電子機器などの換装によって作戦能力の向上をはかるといったことを意味しているのであろう。

 ともかくも平成12年度、自衛隊は総計58機の航空機を取得し、57機を調達し、2機を改善することになる。

(西川渉、99.9.19)

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