<小言航兵衛>

階級呼称の誤魔化し

 猪瀬直樹の『空気と戦争』(文春新書、2007年7月20日刊)を読んで、ちょっと驚いたのは、今の大学生たちが「少佐と中尉はどちらが偉いか」を知らないということである。それも著者が優秀な学生が集まるはずの東工大で講義をしていて、この質問に手を挙げた学生は数人だったらしい。

 しかし、これが嗤えないのは、航兵衛自身も考えてみると自衛隊の階級呼称をよく知らないということである。「陸士長」というからよっぽど偉いのかと思うと、昔の上等兵のことだそうだ。じゃあ伍長や軍曹はどういうのか、そんなことはインターネットで調べればすぐ出てくるが、問題は将官クラスである。

 昔の陸軍には大将、中将、少将の3階級があった。しかし、自衛隊には陸将と陸将補の2階級しかない。ところが外国向けには「陸将を大将にあたるGeneralと中将のLieutenant Generalに分け、陸将補は少将に相当するMajaor General」というらしい。ちょっとした呼び方の違いで、アメリカ軍などと話し合うときなど、相手の対応が大きく変わるからだそうである。というのは表向きの言いわけで、本音は大将になりたいからに違いない。

 こうした階級呼称が法律のようなもので決まっているのか、自衛隊の中だけで決まっているのか知らないが、大方の国民が知らぬところで、どうも勝手なことをやっているらしい。

 自衛隊は発足の当初から、どこか誤魔化しの感がぬぐえなかった。その点、航兵衛などはまことに気の毒に思っていたが、ようやく庁が省に変わって陽が当るようになった現在、階級呼称もコソコソやるのではなく、堂々と決めるべきであろう。できれば昔の呼称に戻して貰いたい。特に最上位の将官クラスが階級を誤魔化すなんぞ如何にもまずい。

 こんな隠し事をしているから、ヤモリだかイモリだかの次官がゴルフや麻雀にうつつを抜かし、長年にわたって女房ぐるみでワイロを貰っていても、誰も何とも言えなかったのである。

 たぶん今のままでは北朝鮮がミサイルを撃ってきても、中国が尖閣列島を占拠しても、ロシアが南下してきても、自衛隊は日本の防衛力となり得ないのではないか。

 そのあたりをしっかり固めず、腰が抜けたままの状態が続くようならば、防衛省の呼称を防衛庁に戻すのはもちろん、場合によっては防衛省そのものを解散するか解体した方がいいかもしれない。そうすれば共産党も旧社会党も、憲法9条問題を心配せずにすむし、わざわざアラビア湾へ出かけていって、ガソリン・スタンドの真似ごとをしなくてもすむだろう。もっともスタンドならば給油代金を取るけれど、あれはタダだと聞いたが本当だろうか。

 こうした一石二鳥か三鳥を考えると、自衛隊はやはり解隊した方がいい。あとは情けないけれども米軍に守って貰うか、それがいやなら、いつぞやも云ったように北朝鮮軍を傭兵とした雇うべきである。これならばテポドンは飛んでこないし、北朝鮮は経済的に潤い、中国やロシアも日本を攻めにくくなるであろう。

(小言航兵衛、2008.1.15)


アラビア湾の無償給油
国内では石油価格が高騰して
国民が苦しんでいるというのに、何たることか。

【関連頁】

   倫理教育のなれの果て(2007.12.6)

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