<野次馬之介>

放射能は怖くない

 

 日本には昔からラジウム温泉とかラドン温泉というものがあって、病人や年寄りが湯治に行って病気を治したり体力を回復したりしてきた。あれは、わざわざ放射能を浴びるのが目的で、それが体に良いことだったのである。

 さらに、そのような温泉村の住民は、ガンによる死亡率が全国平均の半分以下で、寿命も長い。現に、ガンに効くといって売り出しているラジウム温泉もある。

 言われてみればその通りで、昨年3月の福島原発事故以来、われわれはすっかり放射能ノイローゼにやられてしまい、思考力を失って、わずかな線量でも逃げ出したい気分におちいってしまった。

 それに対して、気を確かにもてというのが『原発興国小論――原発は明るい未来をつくる』(渡部昇一)である。人の意表をついて、われわれのノイローゼを治してくれる。読んでいて、馬之介も目を覚まされ、暗鬱な気分から正気に戻ったような気がした。


WAC、2012年4月刊

 広島や長崎の原爆被爆者、あるいはチェルノブイリ原発事故で原子炉のそばまで行って消火にあたった消防士など、一時に大量の放射能を浴びたときは死につながる。

 ところが適度の放射線はDNAの傷ついた部分を修復する酵素を活性化し、人の健康を増進するというのである。実際、著者の同級生の1人は広島で原爆を受けたが、80歳を過ぎた今も、クラスメートの中では最も元気だとか。

 とにかく放射能は何が何でも人体に良くないのではなくて、程度の問題であり、適度の放射線被曝は無害とか無視できるどころか、「最高に体に良い」というという論文もある。書いたのはアメリカ宇宙飛行士の健康管理にたずさわってきたミズーリ大学のラッキー博士で、宇宙飛行士も宇宙で大量の放射能を浴びて地球に戻ってくるが、その健康データは出発前よりも良くなっているらしい。また女性の宇宙飛行士から奇形が生まれたという話も聞いたことはない。

 では適度の放射能とは、実際にどのくらいか。著者はおそらく毎時20ミリシーベルトと毎時50ミリシーベルトの間にあるのではないかと推定している。フランスのチュビアーナ博士は毎時10ミリシーベルト以下ならば、どんなに細胞が傷ついても完全に修復できるという研究で、2007年にマリーキュリー賞を獲得した。

 しかし、だからといって馬之介が原発再開に賛成しているわけではない。放射能が怖くないのは適度な量にコントロールされているときである。しかるに、電力会社や政府が今のような不安全体制、無責任体制では、コントロールが効かなくなり、再び三度び福島原発事故と同じようなことが起こりかねないからである。そのことはしばらく前の本頁「原発の安全は人的要素の問題」や「原子力村の痴的水準」に書いてある通りで、今のままでは福島以上に恐ろしい結果になるかもしれない。

(野次馬之介、2012.6.8)


サルだって温泉に入れば長生きする 

【関連頁】
   原発の安全は人的要素の問題(2012.5.24)
   <小言航兵衛>原子力村の痴的水準(2012.5.8)

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