<ボーイング787>

カタール怒る

 ボーイング787の開発の遅れについて、カタール航空のトップがカンカンに怒っている。自分がもしボーイングの社長なら、何人もの役員をクビにしたであろうと語った。

 ボーイングの役員連中はてんでんばらばらで、それをまとめて方針を決定するようなリーダーシップのある人材がいない。本来ならば、こんな問題はとっくの昔に解決できたはず。いつまでもぐずぐずしていたために、事態はますます悪化したではないか、と。

 カタール航空は現在、確定30機、仮30機、合わせて60機の787を発注しているが、すでにパリ航空ショーの時点で取り消しを検討中と公言してきた。近くボーイング社と交渉する予定だが、その結果が注目される。

 カタール航空の787は本来、2010年なかばから引渡しが始まるはずだった。それが2年遅れの2012年という見こみになって、カタールとしては2011年中に1機でも欲しいという希望を出していた。具体的にカタール向け1番機は量産50号機くらいの機体だが、それより早い順位でキャンセルが出たときは、それをカタールに回してもらいたいというのである。

 しかし、次の交渉でボーイング社がカタールに対し、早くても2012年という回答しか出せなければ、60機の発注は全てキャンセルになるかもしれない。というのは、787とは別に大量発注しているエアバスA350の引渡しも始まるからで、同じような機材を同時に受け取るのは不合理というもの。

 本来は787が先行し、それを追って数年遅れでA350を投入するというのがカタールの戦略だった。そのためA350を100機も発注しているわけだが、先行機が先行しないとすれば、存在意義がなくなる。キャンセルは当然のことであろう。

 そこでカタールはパリ航空ショーの直前、ボーイング社に対し契約破棄の通告をしようとした。しかしショーの時点で、787は明日にでも飛ぶということになり、契約破棄は免れた。しかもボーイングはショーの時点で787の問題を知っていながら、計画は予定通りとして、われわれを騙した。今や、787の注文を続ける意味はなくなったというのが、カタールの言い分である。

 カタール航空はA350を2013年から受領する予定だが、まさかエアバスまでも遅れることはあるまいというのがカタールの見方。787の遅延問題は、だんだん血なまぐさいことになってきた。

【関連頁】

   ボーイング787飛行日程定まらず(2009.7.27)
   ボーイング787年内の飛行は無理か(2009.7.23)
   ボーイング787走行試験開始(2009.7.20)

(西川 渉、2009.7.28)

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