<ファーンボロ2008>

受注競争の結果(2)

 

 ファーンボロ航空ショーの会場で「これは航空ショーか、競争ジョーか」という冗談が聞かれたらしい。ボーイングとエアバスの受注競争が大きく目立ったからである。

 それに合わせて、英Flight International誌は先週、インターネット上で「ファーンボロでは、エアバスとボーイングのどちらが勝つか」というアンケートを取った。その結果、1,918人が回答を寄せ、67%がエアバスの勝ちを予測したという。まさしく2対1という得点差である。

 実際の受注競争はそこまでの差はなかったが、大方の予想通りエアバスの方が多く、247機であった。ボーイングは197機だったという。エアバスの受注の中には10機のA380と98機のA350が含まれ、受注総額は405億ドル(約4.4兆円)。

 一方、ボーイングの受注数には35機の787が含まれるが、金額は250億ドル(約2.7兆円)程度。

 もっとも、これらの金額はいわゆるカタログ・プライスで、実際の金額は分からない。ボーイング社も「顧客は、これだけのお金は払ってくれない。けれども本当の契約額をいうわけにはいかない」と語っている。

 このように大量の旅客機を注文したのは、先の本頁にも書いたが、ほとんどが中東産油国のエアラインである。中でもエチアド航空はエアバス55機、ボーイング45機、合わせて100機の確定注文を出したうえに、エアバス55機、ボーイング50機の仮注文を出している。全てを合わせると205機になる。オイルマネーにものを言わせて、一挙に事業拡大を進めるのであろう。

 ファーンボロ以前の同航空を含む中東3大エアラインの保有機と発注機は、次表の通りである。3社合わせて現用機は200機余、発注数は400機余だが、エチアドがさらに200機余りを加えることになった。

       

現用機

発注機

合 計

エミレーツ航空(ドバイ)

110

194

304

エチアド航空(アブダビ)

38

72

110

カタール航空(カタール)

60

140

200

合  計

208

406

614
[資料]Flight International, 22-28 July 2008

【関連頁】

   ファーンボロ受注競争の結果(2008.7.22)
   ファーンボロの受注競争つづく(2008.7.19)
   ファーンボロで激しい受注競争(2008.7.17)

 以下、余談です。上表のドバイとアブダビは同じアラブ首長国連邦に所属する7つの首長国のうちの2つ。首都はアブダビ。またカタールの首都はドーハ。

 筆者も昔、日本のアブダビ石油やカタール石油がこれらの地域で石油開発に乗り出した頃、朝日ヘリコプターの尾崎稲穂社長のお供をして、無論わが社のヘリコプターを使って貰いたくて、とらやの羊羹を手みやげに、アブダビとカタールへ行ったことがある。

 砂漠の中にポツン、ポツンと建物があり、タクシーは道があるのかないのか、目的の建物に向かって砂の上をまっすぐ走った。運転手は頭に白い布をかぶり、首から足もとのくるぶしのところまである白衣を着ていた。そんなものを着ていて暑くないのかと訊くと、この方が裾がひらひらして涼しいと答えた。現地駐在の日本人の中にも、これを愛用している人がいた。日本の浴衣みたいなものか。よく見るとワイシャツの裾を長く延ばしたようなつくりであった。

 アブダビからはヘリコプターに乗せて貰い、アラビア湾の中の石油採掘プラットフォームまで、暑くねっとりした無風の海を飛んだ。英ブリストウ・ヘリコプター社のベル206単発機であった。

 (西川 渉、2008.7.29)

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