NBAA2000

ファルコン・ファミリー

 

 仏ダッソー社は10月10日、NBAA大会で新しいファルコン2000EX双発ジェット・ビジネス機の開発計画を発表した。同機は乗客6人をのせ、マッハ0.8の巡航速度で7,000kmの航続性能をもち、大西洋横断も可能。ファルコン・ファミリーの5番目の機種として2003年春までに完成する。

 エンジンはPW308Cターボファン(推力3,400kg)が2基。現用ファルコン2000についているCFE738エンジンにくらべて、推力が18%増となった。また高々度性能がいいので、高度12,500mまでまっすぐ上昇し、巡航飛行に入ることができる。

 航続性能はファルコン2000の25%増しで、1,500km近く伸びる。というのも、機体の前後に容量1,720kgの燃料タンクを増設したため。これで予備燃料を残して11時間以上の飛行が可能となり、たとえば乗客6人をのせて向かい風に抗し、パリからニューヨークまで飛ぶことができる。

 最大離陸重量はファルコン2000よりも2,220kg増。離陸滑走路長は1,685m、着陸は800m。

 初飛行は2000年末。2002年秋までに型式証明を取って、2003年初めから引渡しに入る予定。こうしたファルコン2000EXは多くの関心を集め、目下何機かの商談中。対抗機種はボンバーディア・チャレンジャー604やガルフストリームW-SPだが、航続距離はGW-Pより400kmほど短い。

 ダッソー社では現在ファルコン2000、50EX、900C、900EXの製造が進んでいる。これらファルコン・ファミリー4機種の受注数は今年に入って68機の注文を受けた。年末までには80〜100機に達する見こみ。これまでの年間受注記録は最高99機であった。これで、この4年間の受注数は300機以上になると見られる。

 こうした注文増に伴い、ダッソー社は従来の月産5機をこのほど8機に増やした。もとより今の好調ぶりがいつまで続くか楽観はできない。かといって引渡しまでの期間が長いと顧客が逃げて行く。したがって受注状況に合わせた生産体勢を柔軟につくってゆかねばならず、そのあたりの調節がむずかしいところである。

 ダッソーもセスナも好調な売れゆきに却って気持ちを引き締めているところが見られる。浮かれ過ぎて日本の二の舞をしでかさないようにということだろうか。機体価格は50EXが1,830万ドル、900EXが3,100万ドル。2000EXが2,400万ドル。

 なおダッソー社は先のファーンボロ・ショーでエムブラエル社が発表したレガシー・ビジネスジェットについて内装などの助言をしている。同機はERJ-135リージョナル・ジェット(37席)を基本とするビジネス機だが、将来に向かってはERJ-145(50席)を基本とするビジネス機の開発も検討されている。

 もうひとつ、ダッソー社は超音速戦闘機をつくっており、ビジネス機と超音速機の両方に経験と実績をもつ唯一のメーカーである。したがって、超音速ビジネス機の開発に関しては、どのメーカーよりも近い距離にあるが、なにしろ長時間の超音速を維持できるエンジンがない。先ずはエンジンの実現を待つというのが、ダッソー社の姿勢である。

(西川 渉、2000.11.1)

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