新 説
左利きは早死にする 3月26日夜のNHK教育テレビで桜美林大学のブルース・バートン先生が左利きは事故に遭う確率が高く、寿命も短いという話をしておられた。
先生によると、左利きの人は社会的に不便が多く、ハサミでも缶切りでもビンのふたでも、みんな右利き用につくられていて、左手では使えないものが多い。そのため無理に右手を使うので、どうしても不器用にならざるを得ない。もし左利き用の道具があれば、もっとうまく使えるはずというような話であった。
私も同じようなことはときどき経験するので、分かり切ったことと思って聞いていると、「したがって事故死の確率は右利きの6倍であり、寿命は10年短い」という話に及んだ。
私はちょっと驚いて、「本当かな?」と思っていると、最後に「このことを初めて聞いた左利きの人はショックを受けるでしょうが、どうぞご了承ください」という断りの言葉があった。
ということは、やはり本当なのだろうか。少なくともご本人は確信がおありのようだが、そんな統計は見たこともなく、伝説も聞いたことはない。
別にショックを受けたわけではないが、興味深い新説なので、ここに記録しておこうと思う。
話は変わるが、先日、自分の作文をどこに掲載したか忘れてしまい、キーワード「航空の現代」を検索エンジンに入れたところ、左利きの話を集めたサイトが出てきた。
その中に「航空の現代 (航空関係者、西川渉さんのページ)1936年生まれ、60歳を過ぎて自らの左利き矯正に疑問を持たれたかた」という有難い紹介があった。なんだか60歳まではボヤッと生きてきたみたいで苦笑しながら見て行くと、こちらのサイトの左利きに関する3か所の頁が次のような解説つきでリンクされていた。
- 左利き矯正法←最初はこのように利き手矯正を勧めていたかたなのですが.
- 助数詞と左利きの矯正←矯正するといろいろな混乱が起きることに気がついて、
- 医師と左きき←最後にはこのように「問題ありかも…」というようなトーンに変わっています。
拙文をひと様に解説していただいたのは初めてだが、「なるほど、こんなふうに読めるのか」と大いに参考になった。もっとも「気がついて」などという言い回しからすると、からかわれているのかもしれないし、「なんだ、早死にするのも知らなかったのか」と今度は莫迦にされる恐れもあるが、ここはひとまずお礼を申し上げておきたい。
左利きの問題は脳の働きに直接つながるとは昔からの定説だが、寿命にも関係するという新説を聞いて、いよいよ興味が増してくる。自分が左利きに生まれて良かったとも思えてくるのである。
(西川渉、2002.3.27)
(冒頭の左手図は、モナリザのふっくらした右手を反転したものです。
このように手を組むとき、利き手が上にくるという私の新説は当たっているかどうか。
皆さん、意識せずにやってみて下さい)