<本の紹介>

「ドクターヘリ飛ぶ救命救急室」(2)

航空ファン

「ドクターヘリ」という言葉は、昨年民放で放映された人気TVドラマの舞台設定にもなり、一躍市民権を得て、−般にも広<知られるようになった。本書で取り上げている「ドクターヘリ」は、そのドラマに描かれていたとおり、患者を病院に搬送する任務だけのヘリを指すのではなく、医療施設から医者が同乗して患者のもとに飛び、病院への搬送の間に救急あるいは救命医療処置をとることを目的としたヘリコプターを指す。副題の「飛ぶ救命救急室」という言葉がまさにピッタリだろう。

 遠隔の過疎地とか、適切な医療施設の少ない、交通の便が悪い地区なら必要だと思われがちだが、都市部、たとえば東京のような地にこそ、かえってより必要にさえ思えてくる。患者が119番への通報から救急車で医療施設への搬送までの所要時間が全国平均32分、東京は45.2分と最悪なのである。

 本書では世界各国の「ドクターヘリ」の現状とわが国のそれを分かりやすく解説、その必要性(それも緊急な)が述べられている。もちろんそれにはさまざまな問題が控えており一朝一タとは行かないが、真剣に考えたい課題であることは論を待たない。国民に2兆円をばらまく暇と余裕があるならば、このようなところにこそ給付すべきだろう。それが正しい金の使い方というものだ。(野中、「航空ファン」2009年6月号)

(時事通信出版局、2009年3月10日発行、¥1,600+税

[関連頁]

   ドクターヘリ飛ぶ救命救急室(2009.5.5)
   「ドクターヘリ飛ぶ救命救急室」発刊(2009.4.15)
   飛ぶ救命救急室(2009.3.2)

(西川 渉、2009.5.25)

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