<エアバス対ボーイング>

どうするA350

 

 エアバスA350に対する風当たりがますます強くなってきた。すでに開発中の同機だが、今の計画をあきらめて、新たに設計をやり直すべきだという意見である。

 これについては、すでに本頁に書いたように、世界最大の航空機リース会社ILFCが去る3月29日、今のA350の開発を中断して、主翼や胴体の設計をやり直し、もっと大きくて高速の旅客機をめざすべきだという意見を公表した。これに続いて新しい機材の導入に積極的なシンガポール航空も、同じような主張をはじめた。双発のA350が4発のA340よりも運航効率が良くないとすれば、新たに開発する意味がないというものである。

 しかし今、エアバス社が最も集中しているのはA380超巨人機である。これを何としてでも今年中に定期路線に就航させなければならない。さらにA380貨物機の開発も進めており、一方では軍用輸送機A400Mの製造も始まった。

 そのうえエアバス社の株式20%を保有していた英BAEシステムズ社が、株を手放したいと言い出した。内憂外患である。

 A350の開発は現在、A330-200を基本としておこなわれている。その開発費は43億ユーロ(約6,150億円)と想定されているが、全く新たに開発するとなれば2倍の費用がかかる。それに、顧客に提案できるような設計が固まるまでには1年を要する。

 エアバス社としては今ここで、新しい航空機の開発など、やってはいられないのである。そのため当初は強気で頑張っていた。しかし最近は「われわれは顧客の声を充分に聞く」として柔軟な態度も見せるようになった。

 A350の行く手が不明なまま、シンガポール航空は来る5月9日の役員会でA350か787-9か、どちらかの機種選定を決めるという。さらにA340-500の代わりに777-200LRを発注するらしい。またA380を追加するか747-8に転進するか、その点も同じ役員会で決めるもよう。

 A350の確定受注数は現在100機。競争相手のボーイング787の298機に対して3分の1である。両機とも座席数は250〜300席。それより大きな777(301〜479席)は昨年154機という注文を獲得したが、それと同クラスのA340(295〜380席)は15機の注文しか取れなかった。

 航空ファンとしては「どうするA350、がんばれA350」と言いたいところだが。 

(西川 渉、2006.4.12)

【関連頁】

   A350の設計見直しか(2006.3.31)
   ボーイングの鼻息(2006.3.30)
   787ストレッチ型の開発決断(2006.3.29)
   ストレッチ型787の開発へ(2006.1.11) 

 

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