<エアバス>

A380の希望

 

 A380の披露宴には関係者4,500人が参集し、欧州4か国の首脳や、同機を発注しているエアラインなど14社のトップも参加した。

 その中でシラク仏大統領は、A380が「人類と工業界の最高傑作」と絶賛し、その実現は「ヨーロッパ統合の成功であり、このことに刺激されてエネルギー、輸送、通信、医薬など他の分野でも大きな前進が見られることとなろう」。そして「さあ皆さん、欧州の大志のために一緒にやりましょう」と呼びかけた。

 またトニー・ブレア英首相は、A380が「ヨーロッパの協調体制、経済的力強さ、そして技術革新の象徴」と語った。この巨人旅客機は「世界市場においてヨーロッパが闘い、勝利できることの証(あかし)である」と。

 またシュローダー独首相は、関係4カ国が今後もエアバス社を支援してゆくと述べた。「大型旅客機市場におけるボーイングの独占体制は打ち破らなければならず、すでに破られつつある」


A380サミット――左から西、英、仏、独の各首脳

 一方、A380の顧客からは早くも、このままでは小さすぎる、ストレッチ型の開発を希望するという声が聞かれた。

 同機最多の45機を発注しているエミレーツ航空は、A380の座席数を早急に150席ほど増やして欲しいと語った。それが実現するならば、今の発注分の一部をストレッチ型に切り替えたいとしている。

 バージン・アトランティック航空もストレッチ型の開発を求めている。リチャード・ブランソン会長は「エアバス社にとって、今日という日は航空史上記念すべき日をみずからつくり出したことで、重要な意味を持つ。エアラインにとっても、新しい旅行の形を世の中に提供できる手段を与えられることになり、意義深い日となった」と語った。

 その新しい旅行の形とは、A380に「バー、カジノ、ダブルベッドをそなえ、きわめて快適な旅行が楽しめるようになる」というもの。したがってバージン・アトランティック航空のA380はエアバス社のいうような555席としたのでは、これらの快適施設を備えることができず、当面は座席数を減らして運航するが、将来はもっと大きな機体が欲しいという。

 なおバージン・アトランティック航空は6機を発注している。2008年5月〜2010月2月に引渡され、ロンドン・ヒースロウ空港からニューヨーク・ケネディ空港、シドニー、ロサンゼルス、サンフランシスコ、東京への路線に投入する予定だが、その後の仮発注6機はストレッチ型にしたいと考えている。


バージン・アトランティック航空のA380想像図

 カンタス航空は「これだけの大きさと飛行性能があれば、豪州を起点とする長距離航空旅行のかたちは大きく変わるだろう」と語った。同航空は、エアラインの中では最も早く2001年に発注意向を表明、22機の購入契約を結んでいる。

 シンガポール航空は座席数490席で飛ばす予定。A380を最も早く就航させるエアラインで、就航は2006年6月と伝えられる。最初の路線はシンガポールからロンドンとシドニーへ向かう。

 マレーシア航空はA380の出現によって、航空旅行が豪華になり、快適性が増すと見ている。

 こうしてエアバスA380は、さまざまな希望を載せて、大きく飛び立とうとしている。

 
豪州カンタス航空のA380想像図

(西川 渉、2005.1.21)

【関連頁】

   A380の希望(2005.1.21)
   A380の前途(2005.1.20)
   A380の披露(2005.1.19)
   A380間もなくロールアウト(2005.1.15)
   いよいよ姿を現したA380 (2004.6.7) 

 

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