<小言航兵衛>

目覚めよニッポン 

 

 一と月ほど前の本頁に掲載した「抵抗勢力リスト」は、小泉改革を妨げる勢力が奈辺にあるかを分かり易く整理したものと評判が良かった。無論これは原著者、屋山太郎に負うものだが、1冊の本を簡単な表にするという手法は、その本を読んだ人にとっても、まだ読まない人にとっても、何かの問題について全体を一望し、頭の整理をする上で有効かもしれない。

 そんな自賛をしながら、ここでは『現代用語の基礎理解』(渡部昇一・谷沢永一共著、ビジネス社、2002年6月10日刊)を整理してみたいと思う。

 この本は今の日本が当面している苦難と難題について、キーワード36点を上げ、それを解説しながら、共著者2人の論評を加えたものである。例によって鋭い批判と酷評が展開されているが、ここでは切り口を変えて本書に出てくる人物や政府機関を取り上げ、両著者の評価に航兵衛なりの感想も加えて整理してみよう。

小泉純一郎

 

「このまま突っ走ると思う」(渡部)。「余計なことはいわない……ぐっと口を閉ざして……改革を断行しようという気持ちが強い」(谷沢)。本当にそうなら言うことはないのだが、とにかく頑張って貰いたい。多少の支持率が下がっても、心ある国民は応援している。

中曽根康弘

 

「最近あの人はバカにしゃしゃり出ようとしています。『いい加減にしろ』といいたい。……『大勲位をもらって東郷元帥と同じ位になったのは申し訳ない』と謝ってからでないと、あの人の言動は不愉快」。時どきフジテレビが引張り出してご高説をうけたまわる番組をつくるが、ちっとも面白くないね。

郵便局員

 

「本局は威張れるだけ威張って」わざとゆっくり仕事をし、客を待たせることを楽しんでいる。もちろん客などという意識はないから、奥の方で両足を机の上にのせて新聞を読んでいる男は決して表には出てこない。「本局は一刻も早くつぶして勤務員を放り出してほしい」。やっぱり民営化しなけりゃ駄目だ。

田中真紀子

 

「これは一語、『バカ』」「とにかく田中真紀子はものをいっているときの顔の動きそのものが不愉快」である。世間智にたけた女が歳を取ると、だんだんずうずうしくなって、自己主張はするが、人の言うことは聞かなくなる。それでいて、いざというときに逃げ込むところ、即ち女の武器は心得ているから手に負えない。自民党の狼狽ぶりがよくそのことを示している。

橋本龍太郎

 

「中国の女性工作員と寝て、彼女の夫の関係する病院に金をつけていたらしい……しかも、それで失脚しない……日本人はどうかしている」。誰かが女形みたいだと言ったけれど、これまた真紀子と同様、恫喝に加えて、妙に甘えるような素振りを見せるから気持ちが悪い。

官僚群

 

 日本の官僚はなぜあのように威張るのか。明治維新の官僚の頂点にいた大久保利通は、性格が残忍で冷酷だった。その大久保が内務省をつくり、大蔵大臣を勤めた。つまり「日本の官僚群を最初につくった人間のキャラクターがどうしても影響している……威張り倒すもとをつくったのが大久保だ」。いつぞや、ある役所でご教示を願いたいというので、いろいろ準備をととのえて出かけていったところ、数名の官僚達が取り調べでもするかのような恰好で上座にすわったから、余程そのまま帰ってこようかと思った。

大蔵省

 

 10年前に世界のトップテンの大半を占めていた日本の銀行がいずれも凋落して40位以下になったのは何故か。「一つや二つの銀行がおかしくなったのなら、そこの頭取がバカだったということ」だが、一斉におかしくなったのは「全部を取り仕切っていた大蔵省がバカだった」からだ。それでいて誰も責任を取らず、依然として威張っているのはどういうことだ。

大使

 

 日本の大使は「例外なく赴任した国のご機嫌を取る……大使なしの外務省にしたらいい」。海外の日本人の面倒を見るのは「領事館だけで十分……もし大使が必要になったら、日本から仕事のできる人を差し向ければいい」。ここでも外務省不要論が出ている。それにしても7月4日に発表された瀋陽事件の関係者――大使や領事の処分は、日本の大恥を世界にさらした割には軽すぎる。

堺屋太一

 

 閣僚になってから化けの皮がはがれた。団塊の世代に関する屁理屈を言い立てるが、あれは単に戦後、子どもがたくさん生まれただけの自然現象にすぎず、何か特別な意味があるわけではない。谷沢は「堺屋さんの文章を読むのはしんどい」というが、航兵衛も彼の入閣後の文章は読んだことがない。それまでは、ほとんど全てを読んでいたが、景気動向の現状を午前3時とか夜明け前という誤魔化しに不審を抱いたからである。評論家ならそれでもいいが、閣僚ともなれば、もっと違うことを考え、具体的な手を打つべきだ。

森山真弓

 

 法務大臣みずから、なぜ夫婦別姓の制度を進めるのか。これは同棲を制度化するだけのもので、結婚できなかった連中が結婚生活者を妬む余り「自分たちの程度にまで落としたいという」悪意がもとになっている。実現すれば人間も犬畜生も同じことになって、家庭は崩壊するであろう。結婚はお互いに我慢するところがいいのである。

経済企画庁

 

「経済白書というあってもなくてもいい作文集を1冊つくる……経企庁の仕事はそれだけ」しかない。そんな役所が不要であることは、上記堺屋太一によって証明された。

国立国語研究所

 

「日本の国の恥は日本語の本格的な字引がないこと」。本来それをやらなければならないのが国立国語研究所で、まことに立派な組織だが、この五十年余り『分類語彙表』という360頁の辞書1冊をつくっただけで、あとは何もしていない。この辞書は以前、航兵衛も手もとにおいて重宝したが、今はもっと大きくて便利な辞書を使っている。

日本国憲法

 

 今の憲法は欠陥だらけ。改正するのもいいが、廃止してイギリスのように憲法なしでいくことも考えられる。「終戦以後、現行憲法が国益に寄与したことがあったか……憲法がなかったら国家の運営に支障をきたしたか」。むしろ左翼にばかり利用されて、それで駄目な弱い日本になってしまった。

加藤周一

 

 「備えあれば憂いなし」というが、この人は「備えあるよりはない方が憂いが少ない」と仰有る。朝日新聞の連載「夕陽妄語」に書いていることだが、日没の秋(とき)を迎えてなお妄語を吐きながら「同氏は今夜もきっと、カギもかけずにお休みになるのであろう」

シナの政治家

 

 シナの政治家は「誰ひとり国民から選ばれていません。我ら共産党が支配するのだと……馬賊のなれの果てが北京にたどり着いて、居直っているのが実態」。といって何も馬賊とケンカする必要はない。ただ、そういうつもりで警戒していればよいのである。つい先日も民主党の鳩山が警戒せぬまま出かけていって、馬賊の頭目にODAという上納金を要求されていたっけ。

鳩山由紀夫

 

 いったい何しに中国まで出かけて行ったのか。6月26日の江沢民との会談で、瀋陽事件については「冷静に解決できる」と言われたそうだが、これは治外法権を侵犯された日本側のセリフではないのか。おまけに小泉首相の靖国参拝について「昨年は誤った行動を反省したので中国人民は許した。二度とこういうことはないと思っていた」と指摘されたという。靖国参拝に中国の許しが必要だったとは初めて聞いたが、それに対して鳩山は何と答えたのか。単なるご用聞きが、日本を代表して恥をかきに行ったようなもので、よくまアおめおめと戻ってこれたもんだ。真紀子と一緒に中国へ亡命でもしたらどうか。

コリアン

 

 過去2000年間、彼らが無意識のうちに考えてきたことは「シナの皇帝が一番偉くて、その次がコリアの王で、日本の王は野蛮……つまり、コリアとは世界で一番遠い国であると思ってつきあえばいい……ワールドカップなどいらんことです」。とはいえ、おっちょこちょいの浅薄日本人はこの1か月間すっかり乗せられてしまった。

北朝鮮

 

 この国だけは、どこから見ても普通の国と違う。この民族の「卑屈さは古今東西に類を見ないほど汚(けが)らわしくイヤラシイ……恥も外聞もない……地球上で最も卑しく醜く無能で無用で存在理由がない。こういう国と我が国は交際する必要がありません」.。すっかり言われてしまったが、私の友人も東大物理を出たあと、北朝鮮に行ってしまった。今頃どこでどうしているのか、かねて逢いたいと思っているのだが。

ロシア

 

「北方4島を返そうというような気持ちは絶対にありません……百年後もないでしょう……ロシア人も野蛮人で、近代化していない」「ロシア人を人類だと思っては間違いなんです。あれはたまたま動物がかなり進化して、人間に近くなった存在だと思って、その上で必要な範囲で付き合うことにしたほうがいい」。その野蛮な動物をきわめてうまく飼い慣らし、利用したのがムネオであった。

北方4島支援委員会

 

 三井物産は支援委員会の入札業務を妨害したとして担当者が逮捕されたようだが、本当は妨害ではなくて助けたのではないのか。支援委員会自体が正常であれば妨害といえるかもしれぬが、もともとムネオや外務省の私的機関として不正の限りをつくしていたわけで、それを妨害したのであれば、物産は褒められるべきである。

国際連合

 

 国連憲章には連合国の敵であった諸国に対する「敵国条項」があり、未だに「日本もドイツも被告扱いで、それが執行猶予にされているだけ……前科者を見張る気分で国連はつくられている……そのくせ日本は会費だけは高く払っている……そういうところへ頭を下げ膝を屈して入れてちょうだいと言いにゆく必要はない」。外務省は、その程度の判断もできないし、気骨もないのである。

[注]冒頭の奇妙な絵は山野さんに送って貰っただまし絵。一見頭蓋骨のように見えるが、よく見ると鏡の中の自分をうっとり眺めている貴婦人に変わる。絵の表題は「虚栄」だが、「魔鬼子」とすべきだったかもしれない。

[参考サイト]
  悪態語の研究2002.6.4)
  抵抗勢力リスト2002.5.31/加筆2002.6.1)
  瀋陽事件(4)――再々外務省不要論2002.5.23)

(小言航兵衛、2002.7.5)

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