<オスプレイ>

V-22の量産承認

 米国防省の調達委員会は9月28日、V-22オスプレイの量産を承認した。最終決定は数日のうちに国防省の書面によって確定する。

 オスプレイは2000年2件の死亡事故を起こして、ほとんど計画中止に追い込まれたが、4年半の改修と試験飛行によって安全性と実用性が再確認され、来年からベル社とボーイング社で本格的な量産がはじまる。最終組み立てはベル社のテキサス州アマリロ工場でおこなわれる。

 国防省の予定している調達計画は2006年度13機、2007年度18機、2008年度31機、2012年には年間最大の48機に達する。最終的には2018年までに海兵隊が360機、空軍が50機、海軍が48機という調達計画である。

 1機あたりの価格は7,200万ドル(約80億円)だが、将来に向かってはもっと下げる努力をするよう求められている。

 V-22は、これまで200億ドル(2.2兆円)近い費用で、20年以上をかけて開発が進んできた。5年前の事故は操縦系統のソフトウェアと油圧系統が原因とされたが、問題は全て解消された。これでV-22は所要の軍事任務に安全かつ有効に、信頼性をもってあたることが可能という。

 オスプレイは過去、ほかにも事故があり、1989年には当時のディック・チェイニー国防長官が開発予算の全額を削除し、計画が中断したこともある。2000年の事故でも海兵隊員23人が死亡したため、社会一般の不信を買って、計画続行は不可能かと思われた。

 しかし海兵隊のオスプレイに対する希望は強く、議会でも有力議員の支援があり、事故原因となった部分の設計をやり直し、その安全性について徹底的な試験飛行をおこなうことで計画再開となった。

 最近は安全性に加えて実用性についても、8機を使って繰り返し試験がおこなわれ、全て良好な結果が得られたという。主たる任務は武装兵員24人の進攻輸送、捜索救難、対潜水艦作戦など。空中給油も可能である。

 なお最近、小さな発火があったり、降着装置が故障したりする不具合が生じたが、これらはオスプレイの信頼性や安全性を損なうものではないとされた。

 こうして到達したV-22ティルトローター機の実用化決定は、航空史の上でも重要なマイル・ストーン、とベル社はいう。ティルトローターの画期的な技術は、今後の戦闘形態に変化をもたらすと共に、いずれ民間機としても利用されることになろう。救急救助、旅客輸送、貨物輸送、石油開発、麻薬監視などの用途が考えられ、ベル/アグスタ社ではすでにBA609の開発も進んでいる。

【関連頁】

  空軍へCV-22初号機を引渡し(2005.9.22)

  オスプレイ再確認試験完了(2005.7.19)

  オスプレイ工場を見る (2005.5.16)

  ティルトローター機の展望(2004.5.25) 

(西川 渉、2005.9.30)

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