直りました、一応

 

 かつてパソコンは「ソフトなければ唯の箱」といわれたが、今や「ネットしなけりゃ唯の箱」というらしい。まさにその通りで、この2週間ほどインターネットも通信もできなくなって、鬱々たる日々を過ごしてきたところである。

 新しいインターネット・エクスプローラ4.0にはじまった一連の騒動は、もちろんわが書斎の中だけの騒ぎかもしれぬが、本頁でも4回にわたって書いてきた。そして、ついに買ったばかりのIBMアプティバまでダウンしてしまったのである。

 それは、エクスプローラ4.0をインストールしたまま、ISDNにつないだときである。またしてもPC9821と同じ現象におちいり、プロバイダーまでの接続はできるのだが、その先が進まず、画面が表示されない。同時にメールも不通になってしまった。とすればIE4.0は、ほかのソフトも駄目にするけれども、どうやらISDNとの折り合いが悪いのではないかなどと素人なりの推理をしてみたが、むろん本当の原因が分かろうはずはない。

 ともかく、そんな推理は何の役にもたたず、慌ててIE4.0を取り外した。しかし最早もとに戻らず、高価な2台のパソコンはそろってダウンしてしまった。無論ワープロとしては使えるけれども、外部とのネットワークが絶たれてしまっては出口のない牢獄に閉じこめられたような気分で、これでは憂鬱にならぬはずがない。むろん重度の「テクノ依存症」にかかっていることは自分でも認めざるを得ない。

 数日間いろいろ考えて、とうとう大きくて重たい無能な箱をかかえてタクシーに乗りこみ、会社へ持っていった。そして関係先の環境科学コーポレーション、小山義治氏に症状を説明して診てもらったところ、マウスを動かしながら様子を見ていたと思ったら、多分あれではないかとつぶやきながら、ダイヤルアップ・ネットワークとかプロトコールとかモデムとか接続とかTCP/IPといったものを外したり、入れ直したりして、ものの15分くらいでインターネットの画面を呼び出してくれたのである。

 私としては嬉しいやら悲しいやらで、むろん感謝のほかはないけれども、自分自身が情けなくなるような思いも禁ずることができなかった。トラブルの犯人はエクスプローラ4.0にあることは間違いないが、その悪いところを自分では見破ることができず、したがって修復もできない。これでは矢張りコンピューターをいじる資格がないような気分に襲われたのだ。

 とはいうものの、実際は小山氏のコンピューター技術が高いのであって、多くのパソコン利用者はそこまで行っていないはず。その証拠に「日経ネットナビ」1月号なども「トラブル相次ぐIE4.0」といった記事をのせているほどで、客観的に見ても不具合があるのだろう。

 それにメール・ソフトも、まだ正常に働かない。受信メールを取りこもうとすると、いつまでも「取り込み中」が続いて、結局は何にも出てこない。もう1台は「このソフトは故障しているので修復します」といいながら、いつまでもゴトゴトやっているだけでいっこうに修復された気配がない。それでいて、ときどきつながったりするし、友人の1人からはメールを送ったけれども拒否されて戻ってきたなどといわれた。したがって、まだ病気は本復ではないが、取りあえずインターネットだけはつながるようになったのである。

 問題が起こってから1か月以上、故障が本格化してから2週間余り、本頁の改訂がしばらくできなかったのも、そうした事情からであった。いま気を取り直して本頁の書き換えをはじめたところである。

 インターネットの連絡網を借りて、小山さんに深く感謝を申し上げると共に、エクスプローラ4.0に対しては深く恨みを申し入れたい。こんなIE4.0は、航空機ならば直ちに飛行停止になるところだが、パソコン・ソフトではこちらで避けるほかはない。当分は改修されたことが明確になるまで新たなインストールはせず、昔ながらの3.02で行くことにしようと思う。

(西川渉、97.12.12)

【これまでの経過】

@ エクスプローラー4で機械が壊れた(97.11.6)

A 犯人はやっぱりエクスプローラー4(97.11.16)

B 欠陥品を売ってもいいのか(97.11.22)

C コンピューターを疑う(97.11.24)

  

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