<ボーイング787>

融資も難しくなった

 旅客機の購入代金は、発注時に先ずカタログ価格の1%程度の前渡金を支払う。次に機体の引渡しを受ける1年半から2年ほど前に30%程度を支払う。最後に残りの金額を機体の受領時に支払うというのが普通のやり方である。

 そこでボーイング787旅客機の場合、ここまで開発が遅れ、真の引渡し時期も決まらないとすれば、前渡金の支払いも混乱してくるのは当然のこと。ボーイング社に対し、前渡金の支払いを遅らせるよう求める動きも出てきた。

 787は1機あたりのカタログ価格が1.8億ドル(約180億円)。したがって引渡しの2年前に3割程度を支払うとすれば、金額は約6,000万ドルになる。メーカーは、これを機体の製造に要する部品や装備品の購入に充てる。

 だがエアライン各社は、引渡し日程が決まらないものに、3割もの前渡金を支払うことはできないとして、ボーイングと交渉を続けている。これには銀行融資も絡んでいて、銀行側は当然「いつ飛ぶか、いつ引渡されるか分からない飛行機に前渡金の融資などはできない」という。

「第一、787は全く新しい飛行機なので、市場価値も決まらない。したがって融資も難しい」

 銀行としては融資先が倒産した場合、あとに残った機材を処分する都合がある。その担保価値がどのくらいなのか、わからなければ困るというのであろう。

 特に最近のエアライン業界の不調から、エアラインへの融資を渋る、というよりは拒否する金融機関も出てきた。むしろ、ほとんどの金融機関が応じないらしい。

 その影響は当然、メーカーにも及ぶ。問題は単に787の初飛行が遅れたというだけにはとどまらなくなってきた。

【関連頁】

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(西川 渉、2009.7.31)

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