<パリの空の下>

受注競争と論評合戦

受注競争

 パリ航空ショーの2日目、6月14日の会場でエアバス社はA350について、クェートのリース会社ALAFCOから確定12機、仮6機の注文を獲得したと発表した。これでA350の受注数は、前日に発表されたカタール航空の60機、ならびにそれ以前の受注を合わせて100機を超えることとなった。これでショーの直前、エミレーツ航空が発注しないと公表してひやっとさせられたエアバスだったが、なんとか面目を保つことができたといえよう。

 エアバス社は、A350のほかにも、インドのジェット航空からA330について確定10機、仮10機の注文を受けた。

 一方ボーイング社も、同じジェット航空から777と737について、それぞれ10機ずつの注文を受けた。ジェット航空は来年からインドと米国の間で定期運航を開始する予定。将来は787の購入も検討中という。

 またボーイング社はショーの初日、カタール航空から20機の777を受注した。うち10機は超長距離用の777-200LRである。このときボーイング社は、カタールから787の注文を取るため、引渡しポジションをあけていたことも確かである。それが777に代わったことになる。

 なおカタール航空は現在A330とA340を合わせて40機など、1996年以来エアバス機ばかりを運航している。

 ライアンエアはボーイング737-800を5機発注した。同航空は現在230機の737を運航しており、格安運賃による航空事業を展開している。

 さらにILFCリース会社はボーイング737-700/-800を20機と777を8機発注した。

 これで777の受注総数は700機近くになり、737は新世代機だけで2,600機に達する。

ボーイング、エアバスを語る

 エアバスA380が飛んだとき、ショー会場ではボーイング社のシャレーでも感嘆の声が挙がったらしい。その中で、アラン・ムラリー社長は「なるほどA380は大きい。けれども市場が小さすぎる」と語った。「なんだかずんぐりしていて、空力的な効率は余り良くないんじゃないの。もっと胴体を引き延ばした方がいいね」とも。

 あるいはA380が着陸した後、「ほら、あそこへ行って、滑走路がへこんでないか、調べてきた方がいいんじゃないか」と、冗談をいう人もいた。

 それとは別に、ボーイング社の幹部の一人は「A380の売れゆきは失速した」と評している。その理由について、今後20年間、今の747を上回るような大型機の需要は、エアバス社が1,648機と予測しているのに対し、ボーイング社は900機程度しかないと見る。これはエアラインがハブ・アンド・スポーク・システムを減らして、個々の地点を直接結ぶ直行路線に切り替えてゆくためだ。

 かつてボーイング747-400は最初の4年間に165機の注文を獲得した。けれどもA380は販売開始から4年間で、まだ139機の注文しか取っていない。さらに747-400は最初の6年間で受注数399機に達した。A380がそこまで行くには、今後2年間で260機の注文を獲得しなければならない。「われわれが失速というのは、そういう根拠に基づく」というのである。

 もうひとつ、A350に対するボーイング社の見方は、「A330の後継機としては好いが、それ以上ではない」とする。そこへゆくと、787はA330にくらべて航続距離が長くて価格が安い。エアラインの見方も787に軍配を上げている。「その証拠には、A350の開発が決まった昨年12月以来、787は184機の注文を獲得しているではないか」と。

 ボーイングとエアバスの論争は尽きない。明日はエアバス側の反論を見ることにしよう。

(西川 渉、2005.6.16)

【関連頁】

   エアバスA380とA350(2005.6.15) 
   ボーイング体勢挽回へ(2005.6.14) 
   切り結ぶ両雄(2005.6.10) 
   エアバスA350に初の注文(2004.12.23) 
   エアバスA350の開発決定(2004.12.14) 

(表紙へ戻る)