救急車だけが頼りの「救急の日」

 

 

 9月9日は「救急の日」である。そこで自治省は救急車の出動状況に関する統計数字を発表した。

 それによると、昨年度は全国の救急車の出動が337万回であった。また119番の電話通報を受けてから救急車が現場に到着するまでの所要時間は平均6分、患者が病院へ搬入されるまでの時間は24分24秒だった。これには前年より24秒長くかかったというこまかい注釈がついている。

  救急の日に関する話題が救急車だけというのはまことに情けない。このことから見ても、日本政府が救急といえば救急車という昔ながらの考え方をいまだに捨てきれていないことが分かる。それどころか、救急車さえ走らせておけば我がことなれりという安気な太平楽が感じられる。

 もはや救急車だけに頼る救急体制は時代遅れであり、世界の先進国が2段階どころか3段階も先を行っていることは本頁でも再三にわたって掲載しているところだが、この遅れがなくなるまで私は何度でも繰り返すつもりである。

 最近、日本の救急は世界の最先端をゆくという御仁がいた。何をもってそういうのかは分からぬが、確かに現場の救急隊員、救急救命士、救急専門医のご苦労は大変なものである。

 しかし個人的な努力には限界がある。緊急事態に陥いった重症者の救命率を上げるには制度を改める必要がある。政府の救急担当部局がサボっている間に、国民は助かるべき命を無駄に失くしているのだ。

(西川渉、97.9.7)

 

 

【付:救急に関する本頁内の論考】

飛び立てない救急ヘリコプター(97.9.5)
災害拠点病院ヘリポート(97.8.24)
3段階遅れの救急システム(97.8.17)
2段階遅れの救急システム(97.8.14)
ヘリコプター救急システム検討の結果を読む(97.2.9)

 

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