<V-22オスプレイ>

イラクで初陣か

 米海兵隊は今年秋にも、V-22オスプレイをイラクの戦場へ派遣するもよう。

 この22年間、220億ドル(約2.5兆円)を費やして開発してきた軍用ティルトローター機がようやく実用段階に達したわけである。イラクへの派遣は無論まだ正式決定ではないが、海兵隊は10機の派遣を考えている。また、実際にどのような作戦任務につくかも未定だが、本来の任務は敵地からの味方兵員の救出で、如何なることにも対応できる態勢がととのったと海兵隊はいう。

 ただしオスプレイは先週も、ノースカロライナ州の海兵隊基地で整備士が油圧系統の配管を間違えて火を発したばかり。点検作業中のことで大事には至らなかったものの、昨年12月には矢張りエンジン・ナセルから火災を生じた。原因はベアリングが摩耗して振動を生じ、油液の漏れを生じたためという。それを感知したコンピューターが油圧系統を閉止したが、閉止までに5.5秒を要し、その間に発火したもの。現在、対策としてコンピューターのソフトウェアの書き換えを進めているとか。

 ほかにも去る2月のこと、コンピューター・チップの不具合により、一時、全機飛行停止となったことがある。

 こうしたことから、オスプレイは実戦に参加しても使い物にならない、と批判するむきもある。ワシントンのシンクタンク、国防情報センターも、オスプレイの設計には基本的な欠陥があり、今後とも死亡事故を起こす可能性があると指摘している。このNPO法人については、本頁でも先日「オスプレイは未亡人製造機」というレポートをご紹介した。

 とりわけイラクやアフガニスタンの高温と砂漠の中では、現に派遣中のヘリコプターもエンジンやローターなどの主要部品に不具合を生じ、修理が追いつかない状態である。それにゲリラ攻撃にさらされることは言うまでもない。大きくて目立つV-22は、イラクに行けば一番最初に狙われる恐れがある。

 だが、と海兵隊は反論する。オスプレイはヘリコプターよりも遙かに高い10,000〜12,000フィートの高度を、それも高速で飛行する。また自動操縦系統や油圧系統は三重になっているので、敵弾が当たって1系統や2系統が動かなくなっても飛び続けることができる。また、それ以前に、敵ミサイルの熱センサーを狂わす攪乱手段も持っている。決して簡単にやられるわけではない、と。


ファーンボロで見たオスプレイ(2006年7月)

【関連頁】

  驚異の兵器か未亡人製造機か(2007.2.2)
  V-22量産6年計画(2007.1.26)
  
オスプレイの量産承認(2005.9.30)
  
空軍へCV-22初号機を引渡し(2005.9.22)
  
オスプレイ再確認試験完了(2005.7.19)
 
 オスプレイ工場を見る (2005.5.16)
  ティルトローター機の展望(2004.5.25) 

(西川 渉、2007.4.6)

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