<エアバス対ボーイング>
パリの余燼 ![]()
パリの空の下で、エアバス対ボーイングの受注合戦は、3日前の本頁で総括したはずだったが、その後のニュースを見ていると、まだ受注数に漏れがあったらしい。結果としてボーイング社の146機は変わらないが、エアバス社の261機は280機になったというのである。
19機の増加内容は、ドイツのジャーマンウィングスが6月17日A319を18機発注し、さらに12機を仮発注した。またサウジアラビアのナショナル・エアがA340-600を1機発注したというもの。
これで、パリ航空ショーの1週間にエアバスとボーイングの両社が受注した機数は、合わせて426機。機種別の内訳は下表のようになる。
パリ航空ショー期間中の大型旅客機受注数 [注]A320ファミリーの中にはA319、A318が含まれる。
エアバス ボーイング A320
162 737
118 A330
17 777
28 A340
1 787
0 A350
95 747
0 A380
5 ――
―― 合 計 280 合 計 146 ![]()
また、今年に入ってからの受注数は航空ショーの直前、ボーイング社の方がエアバス機より多かった。そのうち新しい787は128機だったのに対し、A350はわずか10機の注文しかなかった。しかし、ショーが終わった現在A350の受注数も100機を超えるに至り、9月にはいよいよ正式に開発着手に踏み切る予定である。それに対して787はショーの最中、1機の注文も取れなかった。
ほかの機種も含めて、今年に入ってからの受注数は、エアバスが475機、ボーイングは400機になったというのが「シアトル・ポスト」紙の集計である。
ただし、いくつかのニュースを読みくらべてみると、こうした数字は必ずしも一致しない。あるいは計算が合わない。そのうえ全てが確定発注とは限らないので、およその受注数と見ておく方がいいかもしれない。
もうひとつ、これらの受注機種を見ていると、A320と737の多いことに気がつく。計算してみると全体の65%――3分の2である。しかも、その大半がジャーマンウィングスやライアンエアといった低運賃エアラインからの注文で、昨年もエアバス社の受注した機材は、8割近くが低運賃航空からのものだったらしい。
ジャーマンウィングスは現在、A319を15機、A320を5機使用し、ケルン、シュツットガルト、ベルリンの3ヵ所を拠点として欧州圏内39ヵ所へ低運賃の航空事業を展開している。今年の乗客数は約500万人の見こみ。今回の機材発注は将来の事業拡大をめざすもので、2006年にはベルリンだけで200万人の乗客を見こんでいる。また東欧圏にも路線を拡大する計画。
こうして今、低運賃エアラインは急成長を遂げつつある。マーケット・シェアも大きくなってきた。欧州では、向こう10年以内に3〜4割のシェアを占めるようになると見られている。
とりわけドイツでは低運賃航空の伸びがいちじるしく、昨年のシェアは11%だったが、今年4月には14%になり、来年は20%になるもよう。低運賃エアラインはこうして、いっそうの進展を続けるというのが大方の見方である。
(西川 渉、2005.6.23)
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