<ボーイング>

2007年引渡し数と707初飛行50周年

 

 ボーイング社は2007年中に、441機の民間ジェット輸送機を製造し、顧客に引渡した。昨年の実績は398機だったから、1割増にあたる。

 機種別の内訳は下表のとおりである。

      

2007年引渡し数

2006年引渡し数

717

0

5

737

330

302

747

16

14

767

12

12

777

83

65

合  計

441

398


2006年10月ボーイング社を見学したときの737組み立て光景

<参照:ボーイング旅客機の組み立て(2006.12.18)
ボーイングを訪ねて(2006.12.13)>

 ほかにボーイング社は軍用機も製造しており」、詳細は以下のとおりである。

 ところで、2007年12月20日はボーイング707の初飛行から丁度50年であった。この初飛行には、ちょっとしたハプニングがあった。というのは、この冬の日、シアトル周辺には冷たい雨が降っており、707初号機が12時30分レントン空港から離陸するとたちまち雲に包まれてしまい、7分後にやむなくボーイング・フィールドに着陸するはめとなった。

 それから長く天候チェックが続き、同日遅くかなりの時間をおいて再び離陸、無事に71分の飛行を終わった。この歴史的な日は、ボーイング社のウィリアム・アレン社長を初めとする幹部たちの思い切った決断から5年後に実現したものである。

 その甲斐あって、モデル367-80、いわゆる「ダッシュ・エイティ」は航空輸送の世界に大きな変革をもたらした。この原型機から実用型の707が誕生したが、最初の707-120は、367-80にくらべてキャビンが大きくなり、いくつかの改良がなされていた。パンアメリカン航空は1955年10月、それを20機発注してジェット時代の先駆けとなった。

 その後の707-320は航続距離が伸びて、1959年5月シアトルからローマまで8,660kmを11時間6分で飛行した。

 民間型707は1978年、878機をもって製造を終わった。が、軍用型の生産はその後も続き、1994年までに合わせて1,010機がつくられた。707民間機は現在なお、貨物機や社用ビジネス機としておよそ130機が飛びつづけている。

 このような707に始まったボーイング・ジェット輸送機の流れは50年を経て今に続き、最近までに17,000機以上の注文を受けている。


2005年1月ワシントン・ダレス空港に新設された
スミソニアン航空宇宙博物館別館で見たボーイング707原型機

<参照:スミソニアン主要展示機(2005.3.11)> 

 367-80の初飛行からしばらくして、チーフ・テスト・パイロットのテックス・ジョンストンは、試験飛行中にこの大型輸送機で完全なバレルロール(横転飛行)をやってのけた。まだ開発試験の途中で、機体強度も飛行性能も最終的な確認がとれていないときのことで、空中分解でも墜落でも、何が起っても不思議はない。これを知ったアレン社長はすぐにテックスを呼んで、社長室の大きなデスクの向こう側から「君は家族はあるのか」と問いかけた。「君は今日、横転飛行をしたそうだが?」

「はい、やりました」とテックスは静かに答えた。それに対して社長は「もう二度とやるな……よし、行ってよい……奥さんによろしく……」とだけ云った。

 このときテックスは会社を震撼させた横転飛行によって、危うくクビになりかけていたのである。しかし空軍は707の力強い飛行ぶりに強い印象を受け、KC-135空中給油機として大量発注に踏み切ったのだった。

【ボーイング関連頁】

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(西川 渉、2008.1.10)

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