<エアバス対ボーイング>

パリの残響

 

 

 エアバスA350の受注機数について、整理しておきたい。というのは報道によって多少の差異があるからで、エアバス社のニュース資料ですら、パリ航空ショーの期間中に獲得した受注数が125機と読める。おそらく、これはショー以前の受注分と合わせて総数125機といいたいのであろう。また、総数は128機としている報道もあって混乱気味である。

 しかし発注者別に見てゆくと、私の理解では次表のとおり、ショー期間中の受注数は95機、受注総数125機で、そのほかに仮受注13機となる。

A350受注数

       

発注者

発注機数

備   考

ショー期間中

カタール航空

60

――

GEキャピタル

10

――

キングフィッシャー

5

――

TAM(ブラジル)

8

他に仮発注7機

ALAFC

12

他に仮発注6機

ショー以前

エアヨーロッパ

10

――

USエアウェイズ

20

――

合    計

125

――

 ちなみに、ボーイング787はショー期間中の受注がなかったが、最近までの受注総数は、アビエーション・ウィーク誌によると、21社から266機だそうである。競争相手A350の2倍以上の注文を集めたことになる。ほかに現在、ボーイング社は787について約420機相当の受注交渉を進めているとも書いてあった。

 こうしてエアバス社は、パリ航空ショーの期間だけでA350のみならず、他の機種も合わせて280機の注文をかき集めた。しかし、そのために生産体勢が間に合わなくなったという見方もある。そのせいかどうか、同社はショーの終わったところで、製品価格の値上げを発表した。

 たとえばA380は、むろん装備内容によって異なるが、これまで2億7,200万ドル(約295億円)から2億9,250万ドル(約315億円)とされてきた。それが今後、2億8,200万ドル(約305億円)〜3億200万ドル(約325億円)になるという。

 同様にA350やA320についても、下表のような値上げが予定されている。

エアバス機リスト・プライスの値上げ

    

値上げ前(百万ドル)

値上げ後(百万ドル)

A380

272.6〜292.5

282〜302

A350-800

153.5

158.6

A350-900

170.0

176.0〜182.6

A320

60.8〜64.3

62.0〜66.5

A318

52.7

54.4

  なお、こうしたリスト・プライス、もしくはカタログ・プライスはメーカーとエアラインとの交渉の出発点にすぎないという見方がある。エアラインの方は発注機数に応じて、公表価格からのディスカウントを要求する。それに対して、どのように応じるかがメーカー側の戦略である。

 とりわけ大量注文を取るにあたっては、エアバスもボーイングもリスト・プライスに対して相当の割引き価格で契約しているという噂が絶えない。両社の論争の中でも「向こうは大幅ディスカウントをしている」といった発言も聞かれた。

 たとえば50〜100機の大量注文に対しては、40%以上のディスカウントがあるとか。しかも、この中には予備部品や訓練費まで含まれるという人もある。

 本当のところは、しかし、よく分からない。

(西川 渉、2005.6.24)

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