<A380問題>

エアバス大変

 エアバス社と親会社のEADS社では、A380の引渡し日程が半年以上遅れることになって、エアバス社長が就任1年で引責辞任した。さらにEADSのノエル・フォルジャール副会長もインサイダー取引のスキャンダルが生じて辞任に追い込まれる騒ぎとなった。

 もっともフォルジャール氏自身は、自分はA380の遅れには無関係だし、インサイダー取引もやってはいないとして、辞任を拒否した。しかしフランス政府が、それならばエアバスへの長期支援を打ち切ると言い出して、降板のやむなきに至った。

 新しいエアバス社長は、A380の引渡し日程を発注エアラインとの間で調整しなければならないのはもとより、かねて問題となっていたA350の再開発をどうするのか。7月半ばのファーンボロ航空ショーまでには、一応の恰好をつける必要もあって、大変な重荷に圧しつぶされそうな状況である。

 おまけに一昨9日だったか、ロシアのイルクーツクでエアバスA310が墜落して、少なくとも124人が死亡するなど、まさに踏んだり蹴ったりの混乱状態におちいっている。

 事故機はモスクワから飛んできたもので、原因は雨の中、すべりやすい滑走路に着陸した際、油圧ブレーキ系統が故障して路面を踏み外したためという。乗っていたのは乗員も含めて204人だったが、機体からは火を発して、やけどを負った人も多いらしい。プーチン大統領は、9日を哀悼の日にするという宣言をしたというから、大変なことである。

 まったく悪いことは重なるもので、事故原因が機材関連の問題だけに、エアバスにとっては泣き面に蜂である。

 おまけにエアバス機への注文も半減した。今年1〜6月の受注数は117機。前年同期の276機に対して半分以下になってしまった。特に3月からは、A330/A340/A350、ならびにA380も合わせてワイドボディ機は1機も売っていない。売れたのは狭胴型のA320シリーズばかりである。

 A380の引渡し遅延は、エアバスにとって予想以上に深刻な事態を招いてしまった。来週から始まるファーンボロ航空ショーでは、如何なる記者会見をするのだろうか。新しい経営幹部の諸公がどんな表情を見せるのか、私もちょっと覗いてこようかと思う。

(西川 渉、2006.7.11)


満身創痍――やっぱり助けが必要でした

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