<エアバス対ボーイング>
パリの余照 今週の米「ビジネス・ウィーク」誌がパリ航空ショーを振り返って、ショーの間に沢山の注文を取ったからといって、勝負が決まったわけではないと書いている。
同誌によれば、ショー期間中の受注数は、エアバスが279機、ボーイングが148機だった。本頁で前に書いた数字と異なるので、再び三たび混乱しそうだが、ともかくもエアバス機の方がボーイングの2倍に近い。しかもA350の受注数が100機を超え、競争相手の787が期間中1機の注文もなかったことから、「A350が多くの顧客に受け入れられたことは確かだ。成功は間違いない」と、エアバスは胸を張る。
対するボーイングは、787の受注数がすでに246機に達しており、まさに絶好のタイミングで開発され、就航するのだと反撃している。これこそは21世紀にふさわしい初めての旅客機である、と。
それに、今年初めからの受注総数はエアバス413機、ボーイング592機で、ボーイングの方が多い。年末の勝負もボーイングの勝ちで終わるのではないか、というのがビジネス・ウィークの見方である。
いずれにせよ、旅客機に対する需要は大きく増えつつある。しかし、需要の内容はこれまでと異なり、世界の大手エアライン14社からの発注は1機もなかった。最も多かったのはインドの新興エアラインからで、合わせて150機と、全体の3分の1に達した。中東からの注文は94機、全体の約21%である。そしてリース会社からの注文も目立った。合わせて90機、20%になる。
とすれば今後しばらく、航空工業界はアジアと中東の動きに左右されることとなろう。アジアの景気がぐらつけば航空機メーカーもふらつくことになり、受注数が増えたからといって、決して安泰というわけではない。
とりわけ今回のショーではインドの発注ぶりが目立つ。しかしキングフィッシャーは運航を始めたばかりだし、インディゴーはまだ1便も飛ばしたことがない。
中東のカタール航空もA350を60機、777を20機一挙に発注したとはいえ、今日現在は40機の航空機を飛ばしているに過ぎない。そんな体制でこれから大量の新鋭機をどのようにして運用してゆくのか。
その意味では、エアバスもボーイングも表向きの強気とは別に、内心は累卵の上に立つような危なっかしさを感じていないはずはなかろう。余談ながら、筆者は昔、チャイナとアラブとインドとは商売をしない方がいいと云われたことがある。金がないくせにずる賢いところがあるからだそうだが、これら3カ国に対するメーカー各社の熱心な売り込みぶりを見ていると、最近は逆になったらしい。
A380も問題がないわけではない。パリ航空ショーでは連日のデモ飛行で、はなやかな主役を演じて見せたが、重量と飛行性能が設計通りに、うまくゆかないとか。ボーイングがいうように太り過ぎて筋力がないということかもしれない。そのシェイプアップのために引渡し開始の時期も半年延期され、2007年にずれこみつつある。
それに最近までの受注数は159機だが、エアバスの主張通り今後20年間に700〜1,000機という需要が出るだろうか。
アメリカのビジネス誌だから、ややボーイング寄りの記事ではあるが、ひとつの見方を示したものといえよう。
(西川 渉、2005.7.1)
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