<ボーイング>

500機を超えた787

 ボーイング787の受注数が500機に達した。500機目の注文を出したのは日本航空で、4月3日これまでの発注数30機に5機を追加発注するという発表がなされた。

 これで787の総受注数は、最近の他の注文も合わせて514機となった。2004年4月26日の初号機受注以来3年足らずで500機を超えたわけで、新しい開発機の受注ペースとしては史上前例のない早さという。これまでは1968年9月にロールアウトした747の受注ペースが速かったが、787はその4倍という。しかもまだ実物は1機もなく、ロールアウトも初飛行もしてなく、就航まで1年以上もある航空機である。

 ボーイング社は787の売れゆきについて、数年前から石油価格が上がってきたことが、燃費の少ない787にエアラインの関心が集まったのではないかと見ている。

 787の今後の開発工程は、5月から1号機の最終組み立てがはじまり、7月8日シアトル近郊のエバレット工場でロールアウト、同時に一般市民にも公開されるという。その後8月末に初飛行し、来年5月に量産1号機が全日空へ引渡される。

 こうした日程を計画通りに進めることができるかどうか。かつて747も737も開発段階ではさまざまなつまづきがあった。むしろ順調に進む方がおかしいくらいだ。ましてや787は日本やイタリアなど、多くの外国メーカーに主要部品の製造を外注しており、すべてが時間通りに正確に進まないと、組み立ては止まってしまう。思わぬ配線問題で2年もの遅れをとったA380の例を持ち出すまでもない。関係者の緊張ぶりはいま最高度に達しているところで、夜もおちおち眠れないのではないだろうか。


787の外注状況(シアトル・タイムズ、2005年9月11日付)

 787を発注しているエアラインは現在43社だが、この中にはアメリカの大手が入っていない。そこで今後アメリカン航空、ユナイテッド航空、さらには英国航空なども発注すると見られるところから、受注数はさらに増えると思われる。したがってボーイング社も787の生産ペースを、これまでの計画からさらに引上げるよう検討中で、2008〜09年は月産7機で、2年間に112機を生産する計画だが、2010年からは月産10機という、これも前例のない機数になるかもしれない。

 なおボーイング787はカーボン複合材を多用して機体重量を引き下げ、乗客1人あたりの燃費は同クラスの旅客機にくらべて2割ほど少ない。したがって運航費も安くなる。また機内は騒音が少なく、空気が清浄で、窓が大きい。手荷物の収納容積も大きく、照明も良くなっている。乗客にとって、この上ない快適な旅行ができるというのがボーイング社の主張。1機あたりの公表価格は1.5億ドル(約170億円)程度である。

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(西川 渉、2007.4.5)

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