<発達型747>

パリの余光

 

 ボーイング社が間もなく発達型747の開発に踏み切るだろうと伝えられる。ひょっとしたら今月中にも、ローンチ・カスタマーと共に発表されるかもしれない。

 新しい747には、多くのエアラインから関心が寄せられており、その中から、先月のパリ航空ショーで、ひそかに発注の確約をしたエアラインがあるともいう。どこの航空会社か不明だが、英国航空やキャセイ・パシフィックなど、A380を発注していないエアラインと見られる。

 旅客機としての747発達型は、機体全長が747-400より3.55m長い。主要構造はほぼ同じだが、新しい金属材料や複合材を使うことで重量を軽減する。また787向けに開発されたエンジンを採用、主翼先端の後退角を777-300ER同様に深くして、巡航性能を高める。 座席数は標準配置で450席。747-400の415席に対して1割近く多く、最大500席くらいまで可能。シートマイル当たりの燃費はA380よりも12%少なく、したがってシートマイル・コストも安い。これで巨人機としては最も高い経済性を持つというのがボーイング社の計算。それによると、A380の1席あたりの重量は、この発達型747より2割ほど高いらしい。

 また騒音が静かで、大気汚染も少ない。速度はマッハ0.86で、他の旅客機より速い。航続距離は14,800kmと、747-400より1,370kmほど長い。これでニューヨーク〜香港間、ダラス〜シドニー間をノンストップで飛ぶことができる。

 この747発達型を貨物機にする場合は、胴体を747-400より5.25m伸ばし、130トンの貨物を積んで8,260kmを飛ぶ。このときの最大離陸重量は422トン。

 こうした発達型747の開発着手について、ボーイング社内ではすでに肚を固めているもよう。というのも開発リスクが比較的小さいためで、エンジンは787向けに開発されたものを流用するので、開発コストが安くすむ。かつて747Xなどの開発を断念した場合とは、条件が異なるのである。

 そのうえエレクトロニクスやアビオニクスも787の技術をそのまま使うことができる。

 7月1日にボーイング社の会長兼CEOに就任したばかりのジェームス・マクナーニ氏も、この発達型747について「顧客に受け入れて貰えるならば、無論そうなると思うが、この並はずれた航空機はわれわれが次に取り組むべきプロジェクトである。社内ではすでに開発着手の準備がととのっている」と語っている。

 こうして発達型747は間もなく本格的な開発がはじまり、2009年には就航をめざすことになるものと見られる。

(西川 渉、2005.7.6)

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