<エアバス対ボーイング>

パリの余震

 

 ボーイング社とエアバス社の受注競争は、パリ航空ショーのひのき舞台が幕を閉じたあとも熾烈をきわめている。ショー期間中の受注分を含めて、6月末までの今年上半期の両社の受注数は下表のとおりとなった。 

2005年上半期の受注数

メーカー

機  種

引渡し数

純受注数

受注残

エアバス

A300

6

1

49

A310

0

0

5

A318

3

10

49

A319

73

43

349

A320

58

157

615

A321

7

30

115

A330

27

7

168

A340-300

4

0

5

A340-500/600

11

10

75

A380

0

10

149

合計

189

268

1,579

ボーイング

717

6

-14

12

737

113

321

984

747

7

3

28

757

2

0

0

767

5

0

20

777

22

20

172

787

0

87

143

合計

155

417

1,359

総    計

344

685

2,938

[注]純受注数は上半期の総受注数からキャンセル数を差し引いた数字。
総受注数はエアバスが276機、ボーイングが441機であった。
また、受注数の中には仮注文や予約などは含まれない。
したがってエアバス社の受注数にはA350が1機も入っていない。 

 上表によると、両社を合わせた純受注数は、半年間のキャンセル分を差し引いて確定685機。昨年同期の178機に対して3.8倍という大変な伸びである。また過去10年間の上半期の受注数として最大であるばかりか、2001年から2004年までの各年の年間受注数をも全て、半年で上回るという好調ぶり。

 2005年上半期のうちボーイング社は417機で、ちょうど6割。エアバス社の268機を大きくリードする結果となった。ボーイング社の受注数が多いのは737で、321機と4分の3以上を占める。次いで新しく開発中の787が87機の注文を獲得した。一方で717は今後の製造中止が決まったことから14機のキャンセルが出た。


スカイヨーロッパ航空が4機を発注した737-700

 いっぽうのエアバスも、首位の座をボーイングに奪われたとはいうものの、昨年同期にくらべて2倍以上の注文を取っている。そして年末までには、A350の注文が増えるはずで、ボーイングとの受注差を縮めることは可能と言明している。

 この半年間の引渡し数を見ると、ボーイングよりエアバスの方が多い。特にA320ファミリーが141機で、ボーイングの小型双発機(717、737、757)の121機を上回る。

 また受注残もエアバスの方が多く、全体の54%を占める。

 7月に入ってからも両社の快進撃は衰えず、この21日までにボーイングは確定66機の注文を獲得、エアバスも50機を確保した。

 ボーイングの受注の中には新しい737-900ERについて、インドネシアの低運賃航空ライオン・エアから確定30機、仮30機という受注が含まれる。これまで737-900Xと呼ばれていた計画だが、この受注によって7月18日、正式の開発着手が決定した。

 737-900ERは乗客215人乗り。生産が終了した757-200にも匹敵する客席数で、大きさは現用737-900と変わらない。けれども、主翼と脚を強化して非常口を2ヵ所増やし、後方バルクヘッドを平らにすることにより、客席数を26席増としている。また燃料搭載量を上げて航続5,230km、さらに増加タンクを増やせば5,660kmまで飛ぶことができる。

 こうした客席数の増加によって、737-900ERは1席あたりの運航費がエアバスA321にくらべて7%低いというのがボーイング社の計算。

 これで低運賃エアラインの関心を集めるはずで、ボーイング社は印度のスパイスジェットとも契約交渉を進めている。

 原型機は来年春にも初飛行し、2007年前半に就航の予定。


ライオンエアが発注した737-900ER

(西川 渉、2005.7.26)

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